みなさんの中で、「やりたいこと」を一つに絞れず、困っている人はいないだろうか?
私はそういうタイプだった。ビジネスと芸術というまったく違う分野に興味があり、どちらかを選ばなくてはいけないという「常識」の中で、半ば無理やり選択し、苦しんでいた時期がかなりあった。
「自分が本当にやりたいことができていない」という違和感と、すべてが中途半端な気がして「これでいいのだろうか?」という焦燥の中で、時間は残酷にも過ぎてゆく。
海外生活が長くなり、幸か不幸か、いわゆる「一般的日本人」としての職業選択は難しくなったし、逆に言うと、できていなくても世間の目が気になるということはあまりなくなった。
世界には色んな人がいる。実際、色んな人との出会いがあった。
日本にいた頃にはがむしゃらに働くことが仕事だと思っていたが、必ずしもそうではないということを見たり聞いたりするうちに、次第に自分でも体現するようになっていったのである。
やりたいことやできることを少しずつ続けていたらいつの間にか落ち着いたのが、現在の私のスタイル。この本のタイトルにもなっている「マルチ・ポテンシャライト」だ。
この本に出会うまで、「マルチ・ポテンシャライト」という言葉すら知らなかったが、読んでみると目から鱗。求めていた本だった。
本書の中ではマルチ・ポテンシャライトを、以下の4つのワークモデルに分類する。
①グループハグ・アプローチ:ある一つの多面的な仕事に就き、その中でいくつもの分野を行き来する。
②スラッシュ・アプローチ:パートタイムの仕事やビジネスを掛け持ちし、精力的にその間を飛び回る。
③アインシュタイン・アプローチ:安定した「ほどよい仕事」をしながら、情熱を注げる取り組みを他に持つ。
④フェニックス・アプローチ:数ヶ月、数年ごとに業界を移り、興味を一つずつ掘り下げていく。
この中で自分に合いそうだと感じるものがあった方、あなたはマルチ・ポテンシャライトかもしれない。本書の中にセルフチェック表がついているのでぜひ試してみてほしい。
そして、それぞれのタイプについての戦略が書いてあるので参考にするといいだろう。全てが当てはまらなくてもきっと役に立つことがあると思う。ただでさえ、くねくねしているマルチ・ポテンシャライトの生き方だが、それに対するモヤモヤが少し晴れるかもしれない。
やりたいことを一つだけ選んで、残りをすべて捨ててしまうなんてもったいないと思わないだろうか?あなたはなりたいもの「すべて」になれる可能性を持っているということをこの本は教えてくれる。
Written by 藤村ローズ(オランダ)