「子どものために」親はそう願い、行動します。しかし何が「子どものため」なのかという認識は人それぞれです。
例えば「子どものために離婚する」人もいれば、「子どものために離婚しない」という人もいて、「子どものためになんでも用意してあげる」人もいれば、「子どものために自分でやらせる」人もいます。
同じ「子どものために」という言葉でもその裏にある想いは人それぞれですよね。
私は「子どものために」親ができる唯一のことは、
1)子どもと真摯に向き合うこと
2)子どものこころの安全基地になること(信頼できる安全な場所であること)
3)つまり、子どもの話をきちんと聴くこと(傾聴すること)
だと思っています。話を聴いてもらえた、想いを受け止めてもらった、という経験がある子どもの自己肯定感は育ちます。
自己肯定感が育つと、子どもはのびのびと様々なことに興味を持ち、自発的に物事にチャレンジしていくでしょう。
チャレンジすることで成長し、時に壁にぶつかったり、悲しい気持ちになった時には「こころの安全基地(親)」の元に戻って、想いを語り、話を聞いてもらうことで、気持ちを消化してまた前に進んでいく。
これが自己肯定感(自尊感情)、そして自己効力感(自己信頼)とレジリエンス(柔軟性、しなやかさ、対応能力)が育つサイクルです。
自分でやってみて「できた」、という記憶と失敗したときに「守ってもらえた(受け止めてもらえた)」という記憶は、子どもが自分の力で豊かな人生を切りひらいていくための大切な支えとなることでしょう。
子育て中の皆さんに、特に海外で子育てしている皆さんに是非読んでいただきたい最高のノンフィクション小説があります。
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」という作品です。
「かあちゃん」(作者のブレイディみかこさん)は英国在住で、中学生になる息子「ぼく」と白人男性の「配偶者」の三人暮らし。
日本人の「かあちゃん」は元々パンク音楽好きがこうじて英国へ移住。「配偶者」は金融街でホワイトカラーの仕事をしていたのに、一転してトラック運転手に。
という背景の作品で、社会について、ジェンダー、人種、社会経済的地位などをはじめとした多様性の問題について、「ぼく」が経験する学校でのことなどを「かあちゃん」と「ぼく」が対話しながら考える小説です。
「ぼく」は常にきちんと真正面から向き合ってくれる「かあちゃん」と対話をし続けているので、偏見がなく物怖じしません。そんな彼はどんなバックグランドで育ってきた同級生とも仲良くなる「男にモテる男」タイプ。
作品中から伝わってくる「ぼく」の自己肯定感・自己効力感・自己信頼感の高さは「かあちゃん」が「ぼく」を否定することなく、彼の悩みや疑問に真摯に向き合い、一緒に考えているからに違いありません。
自己肯定感を育てるためには守ってもらった記憶をつくることがとても大切ですが、「かあちゃん」はまさに「ぼく」を守っています。
守るってどういうことだろう、どうやったら子どもはすくすく育つんだろう、どう子どもと関わっていこう、そんな風に感じている親御さんは是非ご一読ください。
特にバイレイシャル・バイカルチャー(ハーフ・ミックス)のお子さんがいらっしゃる方。
「ぼく」が「ぼくは白人でもありアジア人でもある」ことに想いを馳せるシーンや、「日本にいる時は”ガイジン”で、英国でも”マイノリティ”だから、ぼくは居場所がないんだなあ、どこにも属してないんだなぁ」とアイデンティティについて考えるシーン。
これらはいつかお子さんがきっと向き合うことになるトピックです。本書を読むことが立ち止まって考えてみるきっかけになったらいいな、と思います。
ポリティカル・コレクトネスについても多く記述があります。人種問題、ジェンダーの問題、社会経済地位、貧困問題をはじめとした社会学について考えたい方にも本当におすすめしたい素晴らしい作品です。
海外で子育てをしていると、多様性について(例えば人種やセクシャリティのことについて)どうやって教えようかと悩むことも多くなるでしょう。
そんなときは質問に答えねばと無理に「教えよう」とせずに、「しっかり子どもの疑問と向き合う」こと、「話を聴くこと」を意識するだけでいい。
子どもは私たちが思っている以上に自分で色々なことを考えて、自分なりに理解しているはずです。子どもが親に求めていることって突き詰めれば「話をしっかり聴いてもらうこと」だけなのだと私は思います。
最後にちょっと告知です。
親子関係で悲しい記憶がある方、その記憶が現在の結婚生活や恋愛にも歪みが出てしまっている方、夫婦間・親子間の悲しい気持ちを減らすコーチングのメールマガジンにご登録いただくと、セルフコーチングテキストの冒頭30ページのPDFを無料プレゼントしています。ご登録・詳細はこちらから。
Written by 佐古祐子(アメリカ)