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多様性の国アメリカのお葬式。一番印象に残ったお別れの会とは?

2021年5月4日
スペイツ由美 (アメリカ)

教会と葬儀会館

先月のコラムには「結婚式やブライダルシャワー」について書きました。今月は「お葬式」について、私が体験したことを書きたいと思います。

いつも申し上げますように、アメリカという国は50州の一つ一つが国のような感覚です。

その上、他人種・多文化が共存している国ですから、私が書くことがアメリカの全てではありません。一人の日本人女性が国際結婚をして体験した話としてお読みください。

今私が住んでいるミシガン州の小さな街の中にも、Funeral Hall(葬式会館)がいくつもあります。また教会に至っては小さな教会から、建築数百年前という古いものまで様々な教会が軒を連ねています。

この教会の数を見るだけでも、アメリカの大きな宗教ベースの想像ができると思います。街の中をドライヴしてこの教会の建物様式を見るだけでも、結構楽しいツアーになります。

私がこの街に住むようになってから、主人の友人や親戚が亡くなった時に行ったほとんどは、まずは教会で祈りが捧げられるというパターンでした。

土葬の場合は教会でのセレモニーに棺桶に入った亡骸が置かれてお別れをするケースもありましたが、中にはすでに故人は荼毘に付された後に「お別れの会」という形で、故人の思い出について親戚や友人たちが集まり、飲食をともにするというケースもありました。

このような場合は、Funeral Hall(葬式会館)などが会場となります。教会でのセレモニーは教会の流派によって全く違うもので、これも大変に興味深いものです。

 

華やかな花々に飾られて

葬式会館で経験した中で一番印象が強かったのは、2012年に経験した、この街で母親のように慕っていた女性の「お別れの会」でした。

彼女は長く看護士の仕事に従事した後に、退職後はホスピスなどで死を穏やかに待つ人々への訪問ボランティアをされていました。

彼女は人生で多くの死と向き合ってきたのでしょう。65歳を超えたあたりから、真剣にご自分のお葬式の段取りを全て計画していたそうです。

それは、万が一の時に自分が望む緊急ケアからお葬式、遺産についてまで詳細にプランし、記録したものでした。

この話を彼女の旦那さんから聞いた時、「さすがアメリカ人、死に方までも自分でプランして選ぶとは!」と驚いたものです。

そのプランに沿った、教会でのセレモニーとは別の日に設定された「お別れの会」の会場は、まるで結婚式か何かのお祝いのような華やかな色の美しい花々に飾られていました。

華やかで明るい会場には、人々が立食で簡単に食べられるフィンガーフードが美しく飾られ、会場の中心にはワインバーがセッティングされていました。パーティのような、賑やかなお葬式だったのです。

彼女は敬虔なカトリック信者でもありましたが、この時私は、まさに仏教との大きな死生観の違いを目の当たりにしたのです。

結婚式同様、もちろんお葬式にもお香典のような現金のやりとりはありません。しかし会館の出口の近くには、封筒とペンが置かれていて、近くには小さなバスケットが用意されていました。

彼女の希望で、「子ども病院への寄付に協力してくれる人は、チェック(個人の小切手)を封筒に入れてバスケットに入れてください」とのことでした。

18歳で看護学校へ行き、生涯看護士としての職務を貫いた女性の最後のお別れの会でしたが、看護士というお仕事が彼女にとっての天職・ライフワークであったことが伺われました。

彼女は乗馬が趣味で家に数頭の馬を飼っていました。72歳で他界されましたが、生前亡くなる前まで乗馬を楽しんでおられました。

私も何度か馬に乗ってみないか?とお誘いを受けたのですが、娘たちだけをお願いして、自分が挑戦しなかったことを後から悔やみました。

実は昨年から乗馬を始めようと予定していたのですが、コロナの影響でロックダウンになってしまったミシガン。今年は彼女のことを思い出しながら、ぜひ乗馬に挑戦してみようと思います。

Written by スペイツ由美(アメリカ)

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