2019年の2月5日は、旧暦のお正月にあたる春節。ここマレーシアでも、「Chinese New Year(チャイニーズニューイヤー)」として盛大にお祝いをします。華人(中華系)の割合は全体の約23.4パーセントですが、感覚としては、人口の60%以上を占めるマレー系のお正月「ハリラヤ」と同じくらい盛大な国をあげてのイベントです。
チャイニーズニューイヤーの祝日は実際は2日間ですが、学校は5日から1週間ほど休みになるところがほとんどで、多くの華人は里帰りします。普段賑わっている中華系レストランも、この期間は閉まってしまいます。
事前の準備は、クリスマスが終わった頃からはじまります。街はチャイニーズニューイヤーを祝う、赤色や黄色や金色のデコレーションに彩られ、おめでたい四文字熟語のような文字があちこちに掲げられます。
レストランや学校やあらゆるところから、富の象徴であるみかんが配られ、華人の友人たちはお正月に食べるクッキーやパイナップルタルトをここぞと大量に手作りし、親戚や友人に配ったり、知人に売ったりします。スーパーではお正月準備のための大売り出しが始まり、24缶入りのジュースのケースを5箱も6箱もまとめ買いする人も。普段でも週末混み合う大手スーパーですが、この時期はレジの長い列がさらに長くなります。
また、お正月には赤い服を着るので、新しく新調する人のために洋服売り場も赤で染まります。ショッピングモールやお店では、ドラゴンダンスやライオンダンスの出し物が催され、おめでたい雰囲気に。
マレーシアとシンガポールならではのお正月料理といえば、イーサン(魚生)です。生の魚、サーモンなどの刺身の他に、千切りにした人参や大根などの野菜、カリカリに揚げた麺やワンタンの皮、緑色の海草などの縁起のいい食材をを盛り付け、甘いタレをかけた料理です。
大勢で菜箸で高く持ち上げながら一斉に混ぜ、それをみんなでいただきます。高くもちあげれば上げるほど幸せが訪れると言われていて、1年の願い事をしながら混ぜるのが良いそうです。かなり豪快に混ぜるのでテーブルまで散らかってしまうのですが、それがいいのだそう。会社の集まりでも、親戚や友人同士でも、学校のお祝いイベントでも必ず行って食べるものです。
いよいよ、お正月当日の夜12時になると、あちこちでうるさいくらいの花火が上がり、すさまじい数の爆竹が奏でられます。これは深夜3時ごろまで続き、美しいはずの花火でも、「もう十分、終わりにしてほしい」と思ってしまうほどエンドレスに続きます。見渡す限り360℃全ての場所で花火が見える状態になります。
そしてお正月期間中は、親戚中が集まり、「アンパオ」というお年玉と同じようなものが配られるので、子供は大喜び。日本のお年玉よりぐっと金額は少ないのですが、その分渡す方も気軽でたくさん準備しています。子供たちだけでなく、コンドミニアムのガードマンやお掃除に来てくれるクリーナーさん達にもあげたりもします。
正月料理としては、「Steam boat(スチームボート)」という鍋料理が一般的。親戚中が集まるとすごい人数なので、薄切りの豚肉が街から消えるほどです。
とにかく赤で彩られる華やかなチャイニーズニューイヤー。日本の元旦にすでに新年を迎えているのですが、旧正月でまた1年が素晴らしい年になるようにと厳かな気持ちになります。
Written by 土屋芳子