唐の時代に中国から伝わった祭事、「十五夜」。
日本では月見団子をお供えし、月を見ながらいただく行事ですが、マレーシアでも華人の間で「中秋の秋月」の行事は盛大に行われます。
旧暦の8月15日、今年は9月13日がその日でした。
マレーシアでは、家族でスチームボート(鍋料理)をいただき、月餅をいただきます。そしてランタン(提灯)を持って練り歩きます。
月餅を日頃お世話になった方に贈る習慣もあることから、ショッピングモールでは約1ヶ月前から月餅特設会場が設けられ、試食や買い求める客で混み合います。
学校でも毎年この時期はミッドオータムフェスティバル(中秋節祭り)のイベントが開催され、月餅を手作りしたり、ランタンを持って練り歩いたりします。
さて、月餅は好きですか?
「甘すぎる、重たすぎる、あんまり好きじゃない」という方も多いのではないでしょうか。
実際、私もそう思っていました。
それが、2年前、ラッフルズホテルのスノースキンという種類の月餅を食べたら、概念が変わりました!
雪見だいふくのお餅の部分のようなふんわり柔らかな生地で包まれた、蓮の実から作られた餡は、甘さを極力抑えた上品なお味。そこに、香り高いシャンパントリュフチョコレートがまるごと1個入っています。
まるで、すごく上質な上生菓子のフュージョン版かと思うような、至福の味だったのです。
こういうスノースキン(雪の肌、なんて素敵な呼び方!)の月餅は、本場中国にもないらしく、香港ではじめて売り出されてから流行り、マレーシアとシンガポールではすでに定番になっています。
冷凍で売られていて、解凍していただきます。
アボカドの生地にマンゴーと柚子風味の餡のものや、コニャック入りチョコレート味だったり、チーズクリームとブルーベリーの組み合わせなど、お店がそれぞれ趣向を凝らした絶妙な組み合わせの月餅が並びます。
シンガポールでは、最高級の美味しい月餅がたくさん売っているとのことで、毎年その売り場をチェックしている月餅フリークの友人に連れて行ってもらいました。
すると、ラッフルズやリージェント、コンラッドなどありとあらゆるホテル、ティーサロンのTWG、パティシエのジャニスウォンブランドまで月餅を作って売っています。
スターバックスも売り出しているし、チョコレートブランドは、月餅の形のチョコレートを売り、ハーゲンダッツでは、月餅の形のアイスにチョコレートコーティングして「アイス月餅」として販売。
もう、売れるから形が月餅であれば中身はなんでもアリ。
5センチ大の小ぶりの月餅でも、1個¥800-1000するのが普通で、それを8個入りなどの箱売りするのですが、通常はみなさん贈り物として何箱も買うので、企業にとっては稼ぎ時です。
そして月餅フリークの友人と食べ比べパーティーをしました。
ラッフルズのシャンパントリュフスノースキン月餅はやはり1番大好き。
ダブルツリーヒルトンホテルの蓮の実餡の焼き月餅は、定番の味で上品な甘さ。このおまんじゅうのようにものは、塩漬けした卵黄が丸ごと入ったパイで、台湾式の月餅だそう。月に見立てた塩漬け卵黄入りは、高級感もあり、地元の人に人気があります。
ジョホールのパティスリーが作る焼き月餅は、富と繁栄の象徴である豚の形。
少しずつ色々な味がいただけて嬉しい。
月餅をいただきながら、美しい月を見ることができました。
Written by 土屋芳子(マレーシア)