6月にはじまったデモがいまだ続いている香港。
ニュースはもちろんのこと、警察や政府の記者会見、デモに関するいろんな角度からの特集番組などデモに関する情報を目にしない日はありません。
マカオというお隣の国に住んでいることもあり、「香港大丈夫?実際どうなの?」と聞かれることもしばしば。今回は香港のデモの経緯や香港に住む知人たちから聞いた話をまとめてみました。
まず、デモの経緯を簡単にまとめるとこんな感じです。
4月3日:香港政府が立法会に「逃亡犯条例」改定案を提出。
6月9日:改定案に反対する市民 約100万人がデモ行進に参加。
6月12日:立法会(議会庁舎)付近のデモ参加者に対し警察と激しい衝突。
6月15日:行政長官が条約改正案の審議の中断、無期限棚上げを発表。
6月16日:完全撤回を求め200万人がデモ行進に参加。デモ参加者より政府へ5大要求を提出。
7月1日:一部のデモ参加者が立法会(議会庁舎)を占拠し、施設の破壊や落書き行為を行う。その後、デモ参加者と警察の衝突が増加。
7月21日:白いTシャツを着た一群が地下鉄構内でデモ参加者や一般市民を無差別に攻撃する事件が発生。
8月11日:警察が地下鉄駅構内でデモ参加者と激しい衝突。
8月12日:香港国際空港で座り込みデモが行われ、13日までに400便以上が欠航。中国政府が香港の隣の深圳に中国軍隊を配備している様子がニュースで流れる。
8月30日: デモ参加者の一部が地下鉄の駅を破壊活動し、9月1日までの3日間で160人ほどの逮捕者がでる。
9月2日:中高生1万人が5大要求を訴え「授業ボイコット」に参加。
9月4日:行政長官が条約改正案の完全撤回を発表。
6月から審議を延期してきた香港政府でしたが、ついに香港の行政長官が中国本土への容疑者の引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案を正式撤回することを表明しました。
政府への5大要求の一つにようやく答えが出たものの、現在も若者を中心に激しいデモ活動は続いています。デモ参加者は香港政府に対して引き続き下記の残り4項目を訴え続けています。
・デモ(抗議活動)に対する「暴動」という言葉の撤回
・逮捕されたデモ参加者の釈放
・警察のデモ参加者への暴力に対する独立調査委員の設置
・普通選挙の実施
現在は残り4つの要求の実現を求めデモ継続中。週末には大規模なデモ行進が行われ、一部のデモ参加者の公共機関の破壊、抗議活動が続いています。
香港に住む友人達に、実際デモの影響があるかを聞いてみました。
・週末のデモ行進に参加している香港人40代女性は、
「若い香港人達の危機感をとても感じる。一部の破壊行動は心が痛むが、それだけ大きな抗議をする必要があると感じる部分もある。一方で年代が上の人達はそれほど抗議の表現をしたがらない雰囲気もある。7月後半からは交通機関にも影響がでているので、どこでデモをやるかの情報収集は必須。移動の時はそこを避けなくちゃいけないから。」
・アメリカ人と結婚している香港人30代女性は、
「将来住むのは香港じゃないかもと覚悟している。生まれ育った街だけど、だんだん魅力を感じなくなっているのも事実。」
・香港企業で働く日本人30代男性は「デモ情報はいつも目にしているけど、正直なところ仕事や生活に影響は全くない。」
さすがのコスモポリタン社会香港。同年代でも三者三様の答えでした。
実際には、観光客の減少から経済へのマイナス影響が表出し始めていますので、デモが長引くにつれ生活への影響は大きくなっていくことでしょう。
一方、私の住むマカオはというと香港の10分の1以下の人口のとても小さな地域。
主産業はカジノと観光。
その消費者の多くが中国人であるという特性から中国への反発は感じられません。
中国からは「従順な地域」の印象でしょう。
マカオも中国とは「逃亡犯条例」を結んでいません。
2015年に「一度条例つくらないとね、、」と議会に上がったようですが、そのまま話が立ち消えになった模様。
今回の香港のデモのような抗議行動はありませんでした。
経済的に恵まれているので、市民レベルでの競争原理や政治思想が薄いのも事実。
8月中旬にマカオでも抗議活動を行おうとした数名がマカオ警察にすぐに拘束されたというニュースもあり、マカオではデモ活動は行われないようです。
中国、香港、マカオ。
今まで「一国二制度」という言葉を気軽に使ってきましたが、ここ最近ほど言葉の重さを感じずにはいられません。
香港のデモがどのように収束していくのかは、まだ誰もわからないという様子ですが、長期化を望む人は少ないはず。香港政府、中国政府がどう動くのかに今後も注目していきたいです。
Written by 周さと子(マカオ)