冬が長いカナダでは、誰もが首を長くして春の到来を待っています。
二月上旬の今ごろにもなれば、「Hello」の変わりに「もう雪(冬)はいらないよね」があいさつ代わりになるくらいです。
そんな思いからか、カナダでは春の到来を知らせてくれるグラウンドホッグデーのお祝いが各地で行われます。
そもそもグラウンドホッグが何かも分からなかった私です。カナダに来てこんなイベントがあるのを初めて知りました。
グランドホッグデーは、アメリカとカナダにおいて、毎年2月2日に開催される、ジリスの一種グランドホッグ(ウッドチャックとも呼ばれる)を使った春の訪れを予想する天気占いのイベントです。
冬眠を終え、穴から出たグラウンドホッグが自分の影を見れば、冬ごもりに引き返すという言い伝えから、2月2日が晴天ならば、あと6週間冬が続くと言われています。
しかし、グラウンドホッグの影が見られない曇天ならば、グラウンドホッグは冬ごもりには戻らず、冬はもう終わりに近づいていて、春が近いということになります。
2月2日のこの日は、各地で行われるグランドホッグデーのイベントがニュースでも放送されます。
春を待ち望む人々の期待が募るグランドホッグデー。その起源は中世ヨーロッパからの聖獨節の祝日(キャンドルマス)に遡ると言われています。
もともとは、2月2日に種まきが始まる前に農民たちがたいまつを持って、農地をぐるぐる回って浄化するしきたりの日、来る年の繁栄を象徴して、余分に残った小麦粉でクレープを作り、祝うことから始まりました。
5世紀になり、カトリック教会がグレゴリアンカレンダーに従い、生後40日のイエス・キリストが神殿に初めて訪れた日を2月2日と定め、キャンドルマスの祝日としました。
実は、2月2日は、ちょうど冬至と春分の日の中間点にあたる日でもあるのです。
面白いことに、古いことわざにキャンドルマスと冬の長さや天候状況を結びつけるものが結構あります。
例えば、スコットランドでは、
“If Candlemas Day is bright and clear, There’ll be twa [two] winters in the year.”
(キャンドルマスの日が晴天なら、その年は冬が二回やってくる。)
また、イギリスでも、昔から伝わるこんな歌があります。
“If Candlemas be fair and bright, Come, Winter, have another flight. If Candlemas brings clouds and rain, Go Winter, and come not again.”
(キャンドルマスの日が晴天なら、冬よ、もう一回やってこい。キャンドルマスの日が悪天候なら、冬よ去っていけ。もう来るな。)
ヨーロッパでは、動物たちが冬眠から目覚める時期と春の到来が関連していると信じられていて、マーモット(marmot)、そしてハリネズミ(hedgehog)が天気占いに使われていたようです。
開拓時代、ヨーロッパ(特にドイツ)からの開拓者が北米大陸にそのしきたりを持ち込んだことで、1887年、アメリカのペンシルベニア州で初のグラウンドホッグデーのお祝いが開催されました。
カナダでも、グランドホッグデーは、春を待ち望むワクワクするイベントとして全国各地で開催され、春の到来を知らせてくれるグラウンドホッグたちを見ようと色んなところから人々が集まります。
その中でも一番有名なのは、オンタリオ州のWiartonという街で、1956年以来天気占いで活躍しているアルビノ種のグラウンドホッグWillieです。
カナダの冬はヨーロッパより長く、2月2日の時点では、グラウンドホッグの穴は、まだ雪に埋もれている状態ですので、もちろん野生ではなく、大切に飼われているグランドホッグたち。
冬が長く、苛酷なカナダでは、3月中旬になっても、自然に冬眠から目を覚ます可能性が低いため、主役のグランドホッグ達は、天気占いのため、2月2日に冬眠から起こされることが多いようです。
グランドホッグデーのお祝いは、キャンドルマスととても似ていて、パレード、カーリングトーナメント、ダンス、ホットケーキブレックファーストといったイベントで楽しまれています。
気になるのは、グランドホッグたちの天気占いの当たる確率ですが、グランドホッグデー主催者とカナダの予報局が報告する確率にかなり大きな違いがあるようです。
どちらにしても、春への期待で満ち溢れるグラウンドホッグデーは、冬が長いカナダに住む人々の楽しみなイベントの一つであるのは確実です。
今年のWillieは自分の影を見なかったようで、早い春の到来が期待されるとのことです。
私もWiarton Willieの予報が当たっていることを心から願っています。
Written by 林いくえ(カナダ)