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初ウルルで感動体験。レッドセンターにそびえるウルルの真の姿を学んだ旅

2022年4月8日
野林薫 (オーストラリア)

動き出したオーストラリアのツーリズム

約2年間の国境封鎖を経て、今年2月22日に国境を再開したオーストラリア。私の町でも、大きなバックパックを背負った人達や、キャリーバッグやスーツケースを転がしながら歩く人達を頻繁に目にするようになってきた。

6つの州と2つの準州で構成されているオーストラリア。国境を封鎖していた間は、これらの州のボーダも閉鎖や再開を繰り返し、国内での「州をまたいでの移動」もままならなかった。

そんな落ち着かない2年間を経て、ようやくたどり着いたオーストラリアの国境再開。

「海外旅行者を受け入れ始めたら、もうさすがに州のロックダウンはしないだろう」と、私は再度エアーズ・ロックへの旅を決めたのだった。

エアーズ・ロック空港に降り立った瞬間、極度に乾燥した凄まじい熱気の歓迎を受け圧倒された。

そして、ホテルへと向かうバスの中から見える赤土の大地に、「あぁ、遂にレッドセンターに来たんだ!」という喜びがふつふつと湧き上がってきた。

 

満を持してのウルル初体験

私が住むニューサウスウェルズ州とは全く異なる空気と風景。一日の最高気温はほぼ連日38度。湿度がかなり低く、手の甲に当たる日光に鋭い痛みを感じた。

ホテルのそばの赤土の大地を歩いていると、容赦なく顔にたかってくるハエたち。ハエは水分を求めて、唇、目、鼻の穴めがけて飛んでくる。鼻の中にハエが飛び込んできたのは5回くらいだろうか。

ウルルがある中央オーストラリアが「レッドセンター」と呼ばれる由縁である、赤土の大地をゆっくりと踏みしめながら、自然の偉大さを存分に味わった。

ウルル(エアーズロック)は、ウルル・カタジュタ国立公園に聳え立つ一枚岩。ユネスコ世界自然遺産と世界文化遺産の両方に登録されている、世界でも数が少ない「複合遺産」である。

が、このウルルが世界遺産として認定されるよりも遥か遠い昔からこの場所に住み、ウルルを神聖な場所として崇め続けている人達がいる。

ウルルの裾野のレッドセンターの大地で自然の営みと共に、何万年もの間その文化を継承し続けている、オーストラリア先住民族であるアボリジニ民族のAnangu Peopleだ。

 

アボリジニに伝わる「ドリームタイムストーリー」

ウルルの周りを歩いて、その後サンセットを鑑賞するツアーに参加した私は、そこでAnangu Peopleとウルルの密接な関係を知ることとなった。

アボリジニ民族の血を引く現地ガイドの方々が説明してくれる話は説得力があり、アボリジニ文化についてあまり知識がない私でも、かなり想像力を掻き立てられた。

「ドリームタイムストーリー」と呼ばれる、自然やウルルをモチーフにしたおとぎ話を語って子孫達に道徳を教える彼ら。

文字を持たない文化であるがゆえ、ウルルにいくつかある洞窟の岩壁に絵を書いて、子供たちにアボリジニ民族として生きる術やマナーを教える。

このウルルはAnangu Peopleにとって「彼らが集い、民族を存続させていく家」のようなものだと現地ガイドが説明してくれた。

そしてこの家でAnangu Peopleは何千年もの間ずっと子孫達に、「ウルルに登ってはいけない。ウルルに登ることはいけないこと」と教え続けている。そしてその教えはAnangu Peopleの間でずっと守られ続けている。

 

ウルルはただの観光地じゃない

そんな、ウルルを自分たちの守り神として崇めているAnangu Peopleの横で、列をなしてウルルに登頂する観光客達を、彼らは一体どんな思いで見ていたのだろうか。

そんな観光客の中には心無い人達も多くいたそうだ。頂上でゴミを捨てたり、トイレの設備がないからと我慢できずにそこで用を足して岩を降りる人達も多くいたそうだ。

ウルルには小さな滝があるのだが、そんな観光客の心無い行動が、登頂禁止から3年経った今でも、その水を汚染しているという。

現地ガイドの話に聞き入りながら、Anangu Peopleの思いを想像すると本当に心が痛んだ。と同時に、そんなAnangu Peopleの願いが届き、ようやく登頂が禁止されたことに心から喜びと安堵を感じた。

1980年代に、ウルルの所有権がオーストラリア政府から原住民のもとへ変換され、現在ではウルルの研究、調査も禁止されているそうだ。

80年以上もの時を経て、ようやく落ち着きを取り戻したウルル。これからウルルのパワーはますます偉大になっていくのであろう。

ウルルとは、この世に存在する宇宙、自然、そしてその中で生かされている私達人間について学ぶ場所。

今回の旅で感じたのは、その場所に実際に身を置いて、現地の人の話を聞いて、その場所の空気を感じる、それが「私の魂が喜ぶ旅」だということ。そして、オーストラリアをもっともっと深く知りたくなった旅だった。

Written by 野林薫(オーストラリア)

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