この本の著者、東田直樹さんのことを知ったのはNHKの特別番組でした。
そのときの私の受けた衝撃といったら、目から鱗がおちるとはまさにこのこと。
彼の存在は世界の認識を変える!という画期的な発見をしたようで、大興奮のままに家族や友人に、番組を見る事ができるリンクを送りまくったのでした。
何が衝撃的だったかというと、、
著者の東田直樹さんは重度の自閉症で話すことはできないけれど、書くことによって自分の考えを伝えることができるのです!
つまりそれは、自閉症者の気持ちや考えを第三者が知ることができるということ。
すなわち、自閉症者への不理解やレッテルを払拭することができるということなんです。
彼はキーボードタイピングというコミュニケーション方法によって、自分がどのように考えているかを人に伝えることができます。
さらには、自身の自閉症の症状を観察、分析して、わかりやすい言葉で説明してくれます。
急に飛び跳ねたり、奇声を発したりする理由や、なぜ同じ失敗を繰り返してしまうのかも説明してくれています。
この本の中では、例えばこんな風にご自身のことを書いています。
じっとしてる時も、常に僕の体は何かに揺り動かされているような感じがしています。
動かないでいることがつらいのです。
何もしないとイライラするだけでなく、誰かに急かされているような気分になります。
僕の魂は、肉体に閉じ込められているのではないかと思うときがあります。
僕が動き回っている時、魂に許可はもらっていません、魂もあきれていることでしょう。
だから時々、僕の体から飛び出すのです。魂は高く高く昇っていき、空の散歩を楽しみます。
久しぶりの天上はのどかで広々しているように感じるに違いありません。
ふと下界に目を向けると、ひとり騒がしい人間がいます。
困ったやつだとよくみると、僕だと気付き、慌ててもどってくるのです。
この本は、本人によるエッセイとインタビューで構成されています。
彼の聡明さ、あふれる好奇心と感情の豊かさを目の当たりにします。抱える苦悩と、それを乗り越えてきた思考にも触れることができます。
そんな彼の言葉は、漫然と日々を過ごす私の心をぐっと掴んで揺さぶります。
人は無意識のうちについ、ステレオタイプのイメージで人や物事を判断してしまいがちです。
また「当たり前」「常識」といったルールで思考や行動を制限してしまいがちです。
そのことに痛いほど気付かされます。
そして自然と一体となることができる彼を心底うらやましく思います。
もちろん同じ障害でも個人によって行動様式も性格も思考も異なるでしょう。
しかし東田さんの言葉は、障害を持つ方を理解したいと願う人達にとって、貴重で大きな手掛かりになるものです。
そしてその理解はゆっくりと、でも確実に世界に広まっていくことでしょう。
自閉症者への理解を広め、かつ視野を広げる事のできる、世界中の人にお薦めしたい本です!
Written by 周さと子(マカオ)