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15歳から、社長になれる。ぼくらの時代の起業入門 家入一真著

2019年2月11日

著者の家入一真氏は、自身を「シリアル・アントレプレナー(連続起業家)」と名乗る。

ただの起業家ではなく、連続して次々に生業を起こす起業家である。その名の通り、IT関連を中心にさまざまな業種のベンチャー企業に参画している。誰でもネットショップが持てる「BASE」というと知っている人も多いだろう。また、近年ではスタートアップの投資家としての活動にも力を入れている。

現在日本では「若年層の2人に1人は非正規雇用」という事実がある中で、頑張ればどうにかなるとか、会社を選ばなければ正社員になれる、正社員になったら一生安泰などという考え方はすでに現実的ではない。

これは海外に住んでいる人にも当てはまる。海外では一つの会社に一生いるという状況は稀であり、チャンスがあればより条件のよい仕事を得たいと思っている人が多い。また、ポジションがなくなることもあれば、レイオフになってしまうこともある。

ライフイベントに合わせて就業の形を変えることもある。私の住んでいるオランダでは、パートタイムで働いてもフルタイムで働いても待遇が同等でなければならないという法律があり、他のEU諸国と比べても男女ともにパートタイマーの比率が高い。オランダは起業の体制も整っており、2007年には100万社弱だった企業数は、2017年には160万社近くまで増加している。

日本人の「起業ビザ(個人事業主ビザ)」が取得しやすいとオランダ移住ブームが起こったことをご存知の方もいらっしゃるだろう。それは現在もなお続いており、可能性を求めてオランダに移住してくる人が後を絶たない。

私にとっても起業したことは大きな転機であった。元々は帯同で来ていたが、起業して自分のビザを取得したことにより、何か呪縛から開放されたように感じた。自分のやりたいことをやらせてもらえる場所をもらったことで一つ一つ自己実現をすることができている。

 

日本では、会社登記に必要な印鑑登録ができる15歳から会社を作ることができる。トライしてみるなら、早い方がいい。早ければ早いほど、たとえ失敗してもやり直すチャンスが多くあるからだ。

家入氏が最初に起業したのは22歳の時。彼が起業した元々の理由は、「会社では働けなかったから」だと正直に告白している。中学2年生の頃からひきこもりを経験し、高校には入ったものの結局中退したという彼は、いわゆる「王道」からは外れ、就職せずに起業家の道を歩むこととなる。

たとえ学校や会社へ行けなかったとしても、働く方法があり、それが「起業すること」であると彼は言う。起業することは世間のイメージほど難しいことではなく、その方法を中学生でも分かるように簡単丁寧に説明してくれているのがこの本だ。

 

この本は序章・第1章・第2章から成り立っており、序章は「家入氏の経験を踏まえた起業に対するメッセージ」、第1章は「起業の流れ・方法」、第2章は十代で実際に起業した子たちとのインタビューとなっている。

十代で起業した若者たちの生の声が聴けるのもとても面白い。スピード感あふれる行動力ややりたいことを後悔しないようやりたいという情熱には思わず応援したくなってしまう。

この本は2013年の出版なので、彼らはすでに成人してそれぞれの道を歩んでいる。そのまま起業家として成功している子もいれば違う道を歩いている子もいるだろう。でも、何が正しくて何が正しくないかなどということはないのだと痛感する。ただ、彼らが彼ららしく生きることを可能にしたのが「起業」だったのだと思う。

巻末には「ここから先はオトナの人に読んでもらってね」のページがあり、「心配でしょうがない保護者の方へ」と「この本をどう扱っていいのかわからない先生へ」向けて書いた部分がある。一人のオトナとして読んでみると、自分の子どもや生徒が起業したいと言いだした時にどうしてあげればよいか、考えるきっかけとなるだろう。

「15歳から社長になれる」というタイトルに惹かれて手を取ったこの本、最初は子どものために読んでおこうかという気持ちだったのが、すでに成人で起業している私にとっても為になる本であった。子どもが「起業したいと言い出すかもしれない」人、自分自身が起業に興味のある人、すでに起業している人にも読んでみてもらいたいと思う。

Written by 藤村ローズ(オランダ)

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