美食の国イタリア。
パスタ、ピザ、生ハム、バーニャカウダ、アクアパッツァ、ティラミス、ジェラート。あげればキリがないほど種類が豊富で、素材を活かした味は世界のどこに行っても広く受け入れられています。
日本でもイタリアンレストランがない町はない、というまでに一般的に受け入れられていますね。
前回、北イタリアの代表的な料理をご紹介しましたが、南北に長いイタリアはその土地ごとの特性を生かした郷土料理が時代を超えて受け継がれています。
アルプスが迫る北の地方では肉の煮込み料理が多く、海に囲まれた南の地方では魚介類の料理が多くみられます。
料理と同じように、ワインもその土地の特性を生かして作り続けられてきました。
太陽燦燦のイタリアで作られるワインは、陽気で素直な飲み心地、お料理と合わせて楽しむのに難しい言葉はいらない、という印象を受けます。
イタリアでこのワインを飲むまでは、心から美味しい、と思えるワインに出会ったことがありませんでした。
今回は、蘊蓄を語るより、素直に「美味しい」と言える、そんなワインをご紹介します。
その名はランブルスコ(Lambrusco)、赤の発泡ワインです。
ワインについてほとんど知識はありませんでしたが、日本にいる時から少しは飲んでいました。好きな物はスパークリングワイン、発泡ワインです。ただ、発泡ワインは白だけだと思っていました。
フランスの発泡白ワインで有名なのはシャンパーニュ地方で作られるシャンパン。イタリアではロンバルディア州のフランチャコルタ、ヴェネト州のプロセッコ。いずれも白の発泡ワインです。日本でもファンが多いですね。
元々白ワインよりも赤ワインが好きだったのですが、発泡ワインは好きだったので、赤の発泡ワイン、誰か作ってくれないかな、、、、ずっと思っていました。
そうしたら1年半前、イタリアに来てすぐに友人宅で勧められたワインをを飲んでみて感激!無いと思っていた赤の発泡ワインに巡り合ったのです。
それからというもの、スーパーマーケットで買うのはいつも赤の発泡ワイン=ランブルスコです。
ランブルスコの産地は、イタリアの長靴の付け根に位置するエミリア・ロマーニャ州のレッジョ・エミリアとモデナ、ロンバルディア州の南東部、ヴェローナから車で約1時間のマントヴァでも作られています。
ポー川流域のこの地域は、寒暖の差が大きく、秋から冬にかけてあたり一帯に立ち込める深い霧が美食の元と呼ばれています。このワインは、ランブルスコ種というぶどうから作られます。
歴史は古く紀元前、古代ローマ時代に遡ると言われています。ランブルスコは、気取ったワインではありません。カフェオレボールのような陶器のボールで飲むのが一般的でした。
その昔は、ワイングラスを買う余裕がない人たちのワインだった、とも言われていますが現在は世界中に輸出され、日本でもずいぶん知られるようになってきました。
1970~80年代にかけてアメリカで人気を博したランブルスコは、イタリアンコークと呼ばれ、ジュース代わりに飲まれていたようです。
実際に生産されるランブルスコの90%以上は甘口となっていて、海外に輸出されるのも甘口が多いようですが、イタリア国内では、辛口の方が好まれます。辛口は国内で消費してしまう、ということでしょうか、、、
他のワインと同じように辛口、甘口がありますが、日本には甘口が多く入ってきているようです。お料理に合わせるなら断然辛口。デザートに合わせるなら甘口がおすすめです。
イタリアに来られたときのご参考に、辛口は、セッコ(Secco)、セミセッコ(Semi Secco)、アッボカート(Abbocato)と表示されています。
甘口はアマービレ(Amabile)、ドルチェ(Dolce)。ドルチェが一番甘く、ぶどうジュースを飲んでいるようです。
アルコール度も普通のワインより低めで7%〜11%くらいのものが多いようです。
ランブルスコはコストパフォーマンスが高いワイン。1本で前菜からデザートまで合わせられます。
常温でそのまま飲んでも美味しいですが、お勧めは冷蔵庫で冷やして飲む。きりりと冷えた辛口のランブルスコは前菜にぴったりですし、少し時間が経って常温近くになってくると、肉料理にも合います。
泡がなくなってしまっても、甘口ワインとしてティラミスなどのデザートと一緒に楽しめます。
高級料理に合わせて、というより、みんなでワイワイ容器に飲んで歌って、というイタリアの明るいイメージにぴったりのランブルスコ。
最近では評価も上がってきているワインですが、イタリアのスーパーマーケットで2〜10ユーロ、日本では600〜2000円位と価格もお手頃です。是非お試しあれ!
Written by 平田信子(イタリア)