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「女子一人、心ゆくまで美味しい寿司を堪能」ごほうびおひとり鮨 早川光、王嶋環著

2020年10月28日

ごほうびには美味しいお寿司が食べたい?!

あなたの考える贅沢はなんですか?

本書の主人公は、アラサーの伊崎藍子。名字も名前も魚の名前(イサキは夏が旬の白身魚、藍子はアイゴと読んで棘に毒がある魚らしい)。「ごほうびおひとり鮨」というタイトルと相まって期待感が高まったのは私だけだろうか。

三十路に入って10年以上付き合った彼にふられ、いきなり自由の身となった藍子は、どういう訳か「どんな贅沢をしても許される」という結論に至った。

ある日たまたま打ち合わせで顔を合わせた取引先の子安に聞いたのが、上記の言葉。

彼の答えはズバッと単純明快「鮨ですね」だった。

その言葉をきっかけに、藍子は前から気になっていた寿司店に思い切って一人行ってみることにする。

「そう!寿司って素敵!寿司はまさに贅沢!」読みながら、大いに頷いてしまった。秋に入って肌寒くなってきて、無性に美味しい寿司が恋しい近頃なのである。

 

寿司のエクスパートが原作者で漫画だけど本物志向

近年の和食ブームもあり、海外にもお寿司屋さんは意外に多くあるが、どんなに評価の高いお店でもやはり日本のお店とは違う。

海外で食べる寿司は高いので確かに贅沢ではあるが、素材の鮮度か、水か空気か、店内外の雰囲気か、日本と同じ満足感を得られることは残念ながらほとんどない。

それならば、読むことで想像力で美味しい寿司を味わい、帰国の日のためにしっかりリサーチをしておくのが私流の寿司欲との共存方法。

本書は主人公になりきって、ちょっといいお寿司屋さんに女子一人で食べに行き、優しい大将の説明を受けながら、心ゆくまで美味しい寿司を堪能できる漫画である。

藍子は口コミサイトのレビューを参考に店選びをするが、どれも大当たり。どのお店も個性あふれ、本当に美味しそうである。(大当たりの理由は1巻では明らかにされていないが、これから分かりそうな伏線がまた楽しみ)

最初から最後まですべて真剣に向き合う寿司、寿司も大将も優しい寿司、イケメン大将美味寿司、旨すぎて罪深い寿司、興奮の連続攻めの寿司、あなたならどの寿司を食べたいだろうか。食欲の秋、妄想グルメを存分に味わってほしい。

ところで、数ある寿司漫画の中から本書を選んだ理由、なぜ本書は読んでいるだけでこれほどに寿司を楽しめるのか?

それは、原作者の早川光氏の存在である。調べてみたら、藍子に似た三十路女子という予想に反してアラ還の男性。

生粋の「スシオタ(鮨オタク)」であり、寿司のエクスパートである早川氏は寿司番組のナビゲーターや寿司に関する本の原作者としての仕事を多く手がけてきた。

道理で寿司の旨さの表現が本当に上手い。美味しい寿司を食べ続けてきた人だからこそできる究極の表現がここにあるからこそ、主人公と一緒に読むだけで寿司を堪能できてしまうのだと思う。

早川光の旨い鮨ブログには美味しそうな寿司の写真も掲載されているので、ぜひチェックしてほしい。

第1巻で挙げられていたのは、以下の鮨わたなべ(四谷)、幸鮓(蔵前)、すし北野(牛込神楽坂)、鮨太一(銀座)、鮨かじわら(根津)の5店。

次の一時帰国時の為にメモを取ったのは言うまでもない。

Written by 藤村ローズ(オランダ)

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