新型コロナウィルスが流行りだしてから、夫がキッチンに立つ回数が増えた。数時間後に家族に振る舞われるのは、美味しい料理、、ではなく、煮出した漢方茶である。
「これは、免疫力を高めるんだ」とか「肺にいいんだ」等のコメント付で、マグカップになみなみ注がれる漢方茶。
それらはコーヒーや紅茶のような色をしているが、飲んでみると口の端が横にぐっと広がるような、若干の苦さを携えている。冷たく冷やしたものもあれば、暖かいものもある。
そして飲み干さないでいると夫に「体にいいんだから全部飲みなさい!」と注意されるのだ。おかげで私達家族は、今日も元気だ。
この漢方茶は、涼茶とも呼ばれる。
中国広東省、香港、マカオ、台湾などの亜熱帯地域で良く飲まれているもので、高温多湿地域に住む人達の体の熱やほてりを取り除くための漢方が配合されている。体を涼しくさせるお茶で、涼茶というわけだ。
マカオに住んでいると、この涼茶はとても身近な存在だ。
吹き出物や口内炎ができたとき。便秘気味のとき。風邪の引きはじめかな?と感じたとき。まずは涼茶を飲む。
最近は、漢方薬局の軒先で「薬膳スープセット」をよく見かけるようになった。普段以上に、市民の健康意識が上がっているのだろう。
これらの漢方セットは、豚肉や魚、野菜などと一緒に2〜3時間煮込むだけ。すると薬膳スープの出来上がり!
良薬口に苦しというが、全てが苦いわけではない。独特の匂いを感じるものもあるが、味わい深い美味しいスープも多い。
夫の祖母が元気だった頃、おばあちゃんは貧血気味の私によく増血作用のあるスープを作って持って来てくれるものだった。涼茶や薬膳スープをよく作る夫は、おばあちゃんの血を濃く引いているのかも!
また、街には「涼茶スタンド」がいたるところにあり、一杯300円~500円程で気軽に飲める。涼茶スタンドで良く売られているのはこちら。
<五花茶>
成分:5種類の花のつぼみや花びら
効能:解毒、利尿、熱や火照りの除去
<雞骨草>
成分:雞骨草という薬草など
効能:解熱、解毒、肝臓の痛みや黄疸の緩和
<酸梅湯>
成分:烏梅、山査子など
効能:消化不良の解消、健胃整腸作用
<感冒薬>
成分:桂枝、甘草、なつめ、果皮をはじめとする薬草
効能:消炎、健胃整腸作用、身体を温める
「涼茶」を飲むことで、油ものや冷たいものを控えて体を労ろうという意識にもつながっている気がする。その結果、体調の本格的不調を防ぐ効果もあると感じている。
マカオの人達は、小さいころから漢方薬に親しんでいて、体調管理に漢方薬をうまく活用しているように思う。
前の職場のスタッフ達がオフィスで飲んでいたのは、なつめや百合根などを浸したお湯やお茶だったり。自家製スープを魔法瓶に入れて持ってきている子もいた。
コーヒーをがばがば飲んでいるのは私ぐらいで、よく若いスタッフにコーヒー飲み過ぎですよ!と注意されていたなぁ。
私の息子も義母にしっかり教育されており、少し喉の調子が悪い時などは、自らアイスクリームやポテトチップスなどのお菓子を食べず、暖かいスープを好んで飲んでいた。幼稚園のころから!
我が幼い息子ながら「自己管理出来てすごいなぁ」と思っていたものだ。
一方、一つ下の娘は、アイスを控えるどころか兄の分まで食べた挙句、トイレに駆け込むという事を2,3度やっているので、人によって意識の差があることは確実である。笑
中国4000年の知恵である漢方薬。私ももっと知識を深めて上手に使って、ウィルスに負けない強い体を作っていきたい。
Written by 周さと子(マカオ)