皆さん、こんにちは。ブラジル・サンパウロ州に住むMariです。
日本人も多いサンパウロ市内の一地区で、邦人が強盗被害に遭ったと、領事館から知らせが来ました。折しも、サンパウロ州ではコロナ対策についての法令を次々と発表し、本格的対応が始まった最初の週末でした。
被害者の男性は、薬局で買い物を済ませ外に出たところを、10代半ばの男子二人組に突然後ろから羽交い締めにされ「拳銃を持っている」と脅されて、現金とクレジットカードなどが入った財布とスマホを盗られました。
その後、領事館からは以下のような内容の注意喚起のお知らせが来ました。
・感染拡大の影響で,街中から人通りが激減。
・銀行やスーパー等は営業しているが,入店規制の為,店外に長蛇の列ができることもあり,強盗被害に遭う危険性大。
・病院や保健所職員等を装った強盗事件も発生。
そうなんです!
感染拡大に怯える中、街中の空気も違ってきていて、私達の身にもヒタヒタと危険は迫っていたのです。
州政府は翌週23日より完全に学校も閉鎖することを決めて、その一週間は移行期間としていて、すでに自主的に休みに入っている学校もあり、普段より街中はワサワサと、特に学生や若者が日中ウロウロする姿が目立ちました。
私も「今日できる事はやろう」と、その朝は友達と近くの公園でウオーキングをしました。
その時はまだ外出制限も無かったので、池の周りを5キロ超歩いて、気づけばお昼近くになっていました。いい感じに汗をかき、お腹も空いたので、近くのポルキロでお腹を満たし、スーパーマーケットで買い物をし、自宅アパートの前で友達と別れました。
「明日のことは分からないけど、今日もいい日だったね。」と言って別れたのが、午後1時のことです。
いつもの様に、アパートの門扉はポルテイロ(守衛)が顔を確認して開けてくれました。そのままエレベーターホールへ進むと、他の住民がいて一緒にエレベーターに乗りました。
「落ち着くんだ。たくさん買ってはダメだよ。」と、買い物帰りの私を見て、年配のブラジル人男性は言いました。
「はい、少しだけ買いました。」
と答えると、彼はそれでOKと親指を立て、チャオと言って6階で降りていきました。
写真に写っている2人は修理のために来てくれた業者さん
その後、我が家のあるフロアでドアが開いた途端に、若い男子2人組が目に飛び込んで来ました。ブラジル人は、日頃から親しげですが、その男子2人も満面の笑みで「やあ!」と挨拶しました。
「ん?確かに、ブラジル人は気軽に挨拶するけど、この2人は見た事ないなぁー住民?」と、思ってるうちに、私が乗って来たエレベーターで、そのまま降りていきました。ちょっとした違和感を覚えながら、私は自宅のドアまで進み、、、
「やられた!」
木製のドアの鍵穴付近に、壊そうとした痕跡を見つけました。
「えっ?さっきの2人!」
幸いにも、扉は開けられていませんでしたが、私は、とにかくあの2人が戻ってきてはいけないと思い、急いで部屋へ入りました。そして、内鍵も含めて3つの鍵を全てかけました。
コレは、間違いなく空き巣未遂だ!先ずは、管理室に知らせないと思い、会社で提携しているサポーターへ連絡をして、管理会社経由で連絡をしてもらい、警察へも通報しました。
同時に、私の頭の中は、1年以上前に受けた安全講習のことを必死に思い出そうとしていました。
・空き巣に気づいたら、部屋には入らず助けを求めること
・犯人と鉢合わせしないよう、顔を見ないように
など、注意された言葉を思い出しました。
でも〜私、犯人に対面しちゃったし、しかもこの場合は、犯人がまだ建物内にいるかもしれないから、むしろ外に出る方が危ないかも〜と判断し、部屋の中に留まる事にしました。
午後からのポルトガル語のクラスはキャンセルしたら、先生が、何かあれば手伝うよ、とメッセージくれました。
あ!そうだ、夫に連絡しなければ。とりあえず、途中経過を伝えると、私以上に慌てて「しばらく部屋から出ていた方がいい。今から帰る!」と、状況把握出来ていない返事がありました。
まもなくパトカーが6台と10人以上の警官や刑事が到着し、建物の中をくまなくチェックし始めました。
残念ながら一軒、ドアを開けられ実害のあったお宅がありました。他にも未遂に終わった家がもう一軒、いずれも不在の家だったので、人的被害はありませんでした。
犯人はすでに逃げたようだという確認が取れ、警察から呼ばれて防犯カメラのチェックをしました。ブラジルに来て、警察のお手伝いをする日が来るなんて考えてもいませんでした。警備室のカメラを前に、犯人のことを色々訊かれました。
「ティーンエイジャーでした。身なりは良かった。背の高さはコレくらいで、2人はよく似ていました。」
と説明すると、すぐに録画された画面に、出て行く2人の姿を見つけました。デジタル時計は、私が彼らに会ったほんの2、3分後を示していました。どこから入ったのか?ガレージや通用口のビデオを見ましたが、映ってません。
もしかして、普通に正面の門扉から入ってきたのでは?ということで、時間を遡って再生すると、普通にポルテイロに声をかけて、30分の時間差で一人ずつ入ってくる犯人を見つけました。
「パステルカラーの模様入りTシャツで、髪もオシャレにカットしていたし、とてもお金に困っている様には見えなかった。」という私の証言通り、普通の10代の男の子が、まるで友達の家を訪ねるかのように、侵入してきた事が分かりました。
そう、犯人は青少年です。サンパウロ市内で日本人を襲ったのもそうだし、いずれもペアで犯行を犯しています。
私の住んでいるところは市内より穏やかで、日頃は安全な街です。それでも、この時は、暇を持て余した青少年が、スーパーや薬局など人が集まる場所にたむろして、一種異様な雰囲気を醸し出していました。
彼らは、犯罪のプロとは思えません。
「プロならここじゃなくて、ここを壊すよ」と、修理に来た鍵屋さんも言ってました。イタズラの度合いが過ぎた遊びなのか、スリルを求めているのか。いずれにしても、このような青少年犯罪がコロナ騒ぎの陰で次々と起こっているのです。
門扉を開けてしまったポルテイロは、その日のうちに解雇されました。グルではないかと疑われもしましたが、まだ新しいポルテイロで住民の顔をうろ覚え、小綺麗な格好で和やかに挨拶する青少年にすっかり騙されたのです。
それから、管理組合のアクションは早かったです。
翌日にはすぐに門扉に新しいセキュリティシステムを取り付け、その週末には住民全員がI.D.写真を撮られ、セキュリティキーが渡されました。キーをかざすと機械に写った顔写真と照合して門扉が開くシステムです。コロナ対応で、指紋認証システムは却下されました。
壊されかけたドアは、やっと応急処置が終わりました。
玄関に近いリビングに、パソコンや携帯も出しっ放しにしていたけど、その日からは、出かける時は盗まれやすいものは奥の部屋へ鍵をかけてしまうようにしました。
私自身、ブラジル生活にも、慣れてきて、どこかに油断した気持ちがなかったかと言うと、否定できません。このアパートには、他にも5組の日本人家族がいます。私達の暮らしは、この先も絶対に安全とは言いきれないことを、みんなで確認しました。
だって、鍵屋さんのおじさんが
「僕なんてこれまで、24回も盗られたよ。お金や携帯や車も。」と、笑いながら言うんです。
「えっ?おじさん幾つ?」
「55歳だよ」
「ん?2年に一回何か盗られてる?鍵屋なのに」
そんな国に住んでいるのだと言うことを、もう一度思い知りました。
Written by 岩井真理(ブラジル)