そのひとつの事例として、小学校低学年の時の出来事をお話します。
フィリピンでは当たり前の文化として、生まれたばかりの女の子の耳に穴をあけます。女の子は赤ちゃんの頃からピアスをつける習慣があるのです。
母は日本ではそれが校則違反ということを知るすべもなく、私に小さくて可愛いピアスを付けてくれていました。それを見つけた周りのクラスメイトが先生のところへ行き、私がピアスを付けていることを話すと、私をビンタしました。
当時6歳の幼い私は理由も分からず、クラスメイトみんなの前で罵倒され、悪いこともしていないのに泣いて謝るという経験をしたことを今でも忘れられません。
そのことが原因で、一部のクラスメイトからいじめを受ける事にもなったのです。
今となれば、この問題の本質と原因は「先生の知識の足りなさ・外国人への偏見」だったと思います。
もしあの時の先生が海外の文化について知識を持っていたら、ひとりの幼い子供がクラスメイトから差別や偏見、イジメから心を傷つけられることもなかったかもしれません。
もしあの時の先生が異国の文化について生徒たちに話すことが出来る人だったら、無意識に差別してしまう子供たちを減らすことができたかもしれません。
もしあの時の先生が「外国人の文化につい少しでも知ろう!外国人の親とも少し話してみよう!」そんな感覚を持っていたら、わたしの母は自分を責めることなく安心して私を日本の学校に通わせ、日本の文化に戸惑い、苦しみ、泣く日々から救われていたに違いありません。
忘れないでください。差別が生まれる一番の原因はわたしたちの『知識不足または間違った知識と、身勝手な思い込み偏見』から来るものです。
日本での差別やイジメから疲れ果ててたどり着いた場所は、自分を受け入れ、自分は愛されても良い存在と学ばせてくれた。そう、私が生まれた国フィリピン。
決してお世辞にも裕福とは呼べない国かもしれない。だけど自分のルーツであるこの国は、当時15歳の私にはとても眩しく、何もかもが新鮮で輝いて見えていました。
フィリピンに留学し、外国の文化や宗教、価値観、人間心理を学び、友達も出来て楽しい留学生活を送っていましたが、留学してから数ヵ月後、周りの態度の異変にうすうす気が付いていました。
そう、フィリピン人からすると私は外国人。日本人。海外から来た帰国子女。
日本のイジメのような大きなことはなかったけど、日本人ということで変な名前で呼ばれたり、イベントの仲間に入れてもらえないなど小さな差別はありました。
それも、すべて『知識不足または間違った知識と、身勝手な思い込み偏見』から来るものです。
あれから15年以上が経ち、子供たちが社会に溶け込み、自分の存在を否定することなくプライドと愛を持って生きられる人間を育てられるのか。母として自分が出来ることは何か?毎日のように考えています。
自分の過去の経験を活かして、自分の子供達だけでなく、世界中にいるミックスキッズ(様々な国の血をひく子供たち)についても考えています。
そして人種差別問題やイジメで悩む子供たち、貧困家庭、シングルペアレント問題の解決をテーマに活動をすることで、ひとりでも多くの子供たちを明るい場所へと導く挑戦を一歩ずつはじめています。
そしてなによりもいつの日か、全ての命が、肌の色、外見、性別、身分、年齢、国籍、民族などの差別で命の危険や恐怖を感じることがなくなりますように。
これから私たちにできることは、偏見・差別を許さない社会づくり。いつか皆さまのサポートや力を貸して頂けることを心から願っております。
自分の知識を増やすこと、他国の文化の違いをただ触れ受け入れてみる、または外国の友達を作ってみることも、差別を防ぐ大きな力になると信じています。
Written by 新井ステラマリー明子(フィリピン)
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