5月4日からロックダウンが段階的に解けはじめ、少しずつ日常が戻ってきたイタリアです。
18日からは州内の移動が自由にできるようになり公園の立ち入り禁止がとけ、人との距離は最低1メートルという条件付きではあるものの、バールやレストランが開き、25日からはジムやプールも開きました。
6月3日からは州をまたいでの移動も可能になりますし、EU諸国からの旅行者は2週間の隔離制限もなく旅行できるようになります。
6月15日からは劇場や映画館も開きますが、ヴェローナの野外歌劇場(Arena)の夏のオペラは今年は中止となりました。
着々と日常を取り戻しつつイタリアですが、6月3日時点での新規感染者は318人ですので、まだまだ油断はできません。
学校は引き続き休校で、9月の新学期から再開されるようです。
新型コロナウイルス感染防止のためのイタリア政府による対策については、外務省海外安全ホームページをご参照ください。
イタリア北部の州では2月下旬から休校となっていますが、休校中「授業は全く行われていないのか」「宿題などの課題が出ているのか」イタリア北部在住の中学生の子を持つ友人5人に聞いてみました。
すると、「すべての学校で何らかの形でオンライン授業が行われている」という回答でした。
初めの2週間はしばらく様子を見るということで、課題も何もありませんでしたが、それ以降は学校側のオンライン授業対策が整ったところからZOOMや教育用のオンラインシステムに切り替え、現在ではほぼ全ての学校が1日2〜3時間のオンライン授業を行っているということです。
イタリアの公立学校は元々8時から13時まで週6日の授業体制のところが多いので、そう考えると、半分の授業数は確保できていると言えそうです。
日本はどうかというと、オンライン授業は一部の学校のみ。9月始まりへの移行も視野に入れての対策なのか、オンライン授業はなかなか始まりません。大学においてもオンライン授業の導入は6割に留まっているようです。
光回線の普及率は2019年3月末時点で日本が全国で70%以上に対し、イタリアでは16%と、オンライン授業を開始できるネット環境はイタリアよりも整っています。(参照元:総務省「世界情報通信事情」)
なかなかオンライン授業を開始できない要因は、日本の「全て整ってから」始める、という文化的背景が大きく影響しているように思われます。全てのことに配慮しすぎるあまり、新しいことを始めるまでに非常に時間がかかります。
これは素晴らしいことでもあるのですが、時には例外や特例を認めつつ、即座に対応する、ということがあっても良いのではないか、と思っています。
イタリアで生活していて感じる日本との一番大きな違いは、「とりあえずやってみる」ということ。
日本人はとにかく自分で調べてみて、わからなかったら人に聞く、まず計画を立て、計画通りに進める。
それに対しイタリア人はすぐ人に聞く。少しは自分で調べてみたらいいのに、と思うこともしばしばですが、逆に考えると、すぐに問題解決できそうな人に聞くので、解決までの時間が短い。
そして、「ダメだったらすぐにやり直せばいい」「とりあえずやってみて、うまくいかないところは改善しながら進もう」という精神性。計画性がないとも言われることがありますが、今回のような状況では、この「とりあえず始める」ことも大切なのではないかと思います。
全て環境が整うのを待っていたら何年かかるでしょう。その頃にはもう状況は変わっていて、以前の対策では追いつかない、ということも往々にしてあります。
GDPに対する公的教育費は、国別ランキングで日本は154ヵ国中107位、イタリアは100位。(参照元:Global Note)
教育に関する国のお金の使い方では似たり寄ったりの両国ですが、問題解決の速さや状況への適応という点では大きな差があるように思えます。
先の先まで考えてから行動する、というのは日本人の美点ではありますが、このような状況では、オンライン授業の是非や、9月始まりを議論するよりも先に、臨機応変に生徒への対応を応急でも良いので急いでもらいたいものです。
学校再開ばかり叫ばれますが、この休校期間を嬉しく思っている生徒も少なからずいるはずです。
今回のコロナを機にオンライン授業が増えることによって、不登校という概念もなくなるように受講の選択肢が増えていくと良いと思います。
Written by 平田信子(イタリア)