住んでいるのはデンマーク。夫はスウェーデン人。生活していくと徐々に見えてきて楽しいのが、それぞれの国の違いです。
お隣同士であっても国民性や名物料理まで異なるのはもちろんですが、今更ながら気付いた大きな違いの一つが「お酒の“買い方”」。
デンマークではデパートのワイン売場が充実していたりワイン専門店があったりと、日本との違いを意識することがありません。
一方で、スウェーデンは何度も訪れつつ、「住む」ことはなかったので、全く疑問を持たずレストラン等でお酒を頂いていたのですが。
コロナ禍でのストックホルム滞在中、人の多いレストランは避けたい・ルームサービスも飽きた⇒お惣菜を買ってホテルで食べよう!となった時に判明した事実。
「お酒が売っていない!」
素敵なお惣菜もスイーツもたくさん並ぶ老舗デパートなのに、ワインが1本も見当たらない。不思議に思う私が連れて行かれた緑色の看板のお店、それが「システムボラーゲット(Systembolaget)」でした。
世界幸福度ランキングでは常に上位、自由なイメージも強い国でありながらお酒に関してはとても厳しいスウェーデン。実は500年以上の間、事あるごとにお酒に関わる法律が発令されてきました。
殆どは醸造や販売、つまりは飲酒を制限/禁止するもので、多くの人は公にアルコールを買うことができない制度となっていました。
それでも社会情勢の厳しさなどで飲酒に頼る人も多く、結果的に違法で安全性の低いお酒の購入・過剰摂取による健康被害も多発していました。
緑色の看板が目印、Systembolaget
1955年から現在に至るまで運用されているのは、「システムボラーゲット(Systembolaget)」という政府専売システムと直営店舗。
アルコール度数が3.5%以上のお酒は全て、この直営店でしか購入できません。
誰でも安全なお酒を買える政府直営店を設けると同時に高い酒税をかけることで、買い過ぎや飲み過ぎを抑制して健康維持に貢献するとともに税収を得る目的もあったのだとか。
直営店は大型商業施設の中や繁華街にあるので比較的便利ですが、営業時間は一般商店よりも短め。基本的には、
・平日:10:00〜19:00
・土曜:10:00〜15:00
・日曜祝日:お休み
なので、週末のバーベキューやクリスマス等のホリデーシーズンには、計画的かつ十分な量の購入が必須です。
昔は車に詰め込んで…という光景も多かったようですが、最近では通販システムも充実して店舗に行けない方にも便利になったのが有り難いところ。
店舗内は大きなスーパーくらい広々としていて、ビールやウォッカなど世界中の様々なお酒が並びます。中でも圧倒的にバリエーションが多いのはワインで、国別や赤白ロゼなど整然と分類されています。
銘柄毎のタグには、細やかなフレーバーの説明や相性の良い食材や料理がアイコンで示されていたりと分かりやすい上に、知識豊富で親切なスタッフさんたちも常駐。迷ったときにアドバイスを求めると勉強になります。日本酒もあるので、次回は説明を聞いてみたいなぁと思ってみたり。
スウェーデンのイメージの一つはおそらく、税金が高いことですよね。特に酒税はもともと高額な上にアルコール度数が高いほど税率も上がるので、基本的にお酒は高額。
デンマーク寄りの街に住む方達は国境を超えてお酒を買いに行くことも多いそうです。こう聞くと「あぁやっぱり」と思われるのですが、実は全てのお酒がそうだとは言い切れないのです。
ウォッカなどの蒸留酒やビールは、免税店や近隣国で買うほうが断然お得。でも蒸留酒ほどアルコール度数が高くない、酒税も中間程度のワインは意外な楽しみ方があります。
それは「お宝探し」。
なにしろ国全体で消費する量を政府が一括購入するのですから、他国他社の取扱量とは桁が違います。
必然的に仕入れ値も変わるため、他国ではかなりお値段が張る有名ワインも、システムボラーゲットなら、例え税金をプラスしても相当お手頃な価格で手に入れることができたりするのです。
お気に入りのワインがあれば探してみるのも楽しいと思います。
ただし、たくさんお酒を購入しても、スウェーデンでは公園など公共エリアでの飲酒もNG。日本のお花見のようなことは残念ながらできません。見つかると全部没収されてしまうのでご注意を。
また、お酒に関わる年齢は2段階。18歳以上であれば、スーパーでアルコール3.5%未満のビールを購入したり、バーやレストランでワイン等のお酒を注文(その場で飲酒)することはできます。
でもシステムボラーゲットでお酒を購入(持ち帰り)できるのは20歳以上。アジア人はとにかく若く見られるので、お酒に関わる機会にはパスポートやIDカードをお忘れなく。
Written by 高見節佳(デンマーク)