こんにちは!野田リエです。
アメリカでは2021年頃から450万人以上の労働者が、解雇されるのではなく自ら望んで仕事を辞める「大退職(The Great Resigination/Big Quit)現象」と呼ばれるムーブメントが起きていること、ご存知でしたでしょうか?
2年前のパンデミックで深刻化した失業率が回復してきたかと思いきや、今度は自発的に職を離れる人々が後を立たないアメリカ。今回は、正に渦中にある現地からの大退職(Great Resigination/Big Quit)の実態についてお届けします!
どんな人たちが大退職の渦中にいるのか?
「大退職ブーム」という言葉だけ聞くと、なんだか若い世代がYouTubeやTikTokでインフルエンサーを目指して辞めているような印象を受けますが、実はそうではないんです。
このムーブメントの主役は、30歳から45歳のまさに働き盛りと見なされる世代。
以前わたしのブログで、コロナ解雇で職を失った女性がずっと夢に見ていたバーガーショップを立ち上げて一躍有名になった話を取り上げたことがありますが、パンデミックの体験で「これをやらずして死ねない」という心の底に眠っていた夢や価値観に気づいて起業する人たちも増えているんですね。
彼らが辞職を決意した主な理由として、以下のような理由が挙げられています。:
・生死を左右するパンデミックを体験したことで価値観が変わった。
・特定給付金や失業支援金などの政府の対策で、ローンなどお金のプレッシャーから解放された。
・コロナ禍で仕事の負担が増え、激務で燃え尽きた。
・パンデミックで休止していた転職活動を再開した。
一方で、雇用側も従業員離れを防ぐために、必死に対策を講じるようになっています。
大退職ムーブメントが取り沙汰されるようになってから、最低賃金が引き上げられたり、労働条件の大幅な見直しを実施する企業が増え、「大退職」と対になって「大見直し(The Great Assessment)」と呼ばれたりしています。
最近話題になったのは、ビデオ通話アプリのスタートアップ企業「mmhmm(相づち)」の「オフィスを設けない代わりに、月800ドル(約9万2千円)の光熱費手当を従業員に支給する」という破格の待遇。
参考までに、カリフォルニア在住のわたしの月々の光熱費(電気、ガス、インターネット、携帯)費用をざっと計算すると2万を少し越えるくらいでした。一時的なものなのか、そこの基本給がどれほどのものなのかは分かりませんが、これは羨ましい!
コロナと共に在ることが「ニューノーマル」になったとは言え、「リモートワークができる仕事環境」は、アメリカの労働者にとっても大きなチェックポイントです。
それでも(実際に顔を合わせなければ仕事はできない)と固くなな理念の企業もまだまだ存在し、完全リモートワークが可能なデスクワークに就く従業員にも週2,3回の出社を命じる「ハイブリッド体制」を強いているところがあります。
そういった企業は特に大退職ムーブメントの影響を受けているはずですが、そんなところに限ってなかなか環境が変わらないんですよね。
前述したとおり、このムーブメントには様々な要素が絡み合っていて、一つに絞ることはできません。
でも、パンデミックの体験や政府の補助金などのサポートに後押しされて、自分にとってストレスになる環境に耐えるのでなく、自分のために離れる覚悟を決めた人たちが増えてきた結果ではないかとわたしは感じています。
今回はアメリカの大退職(The Great Resigination/Big Quit)ムーブメントの実態に迫ってみました。アメリカで変わりつつある労働観・労働事情について興味を持っていただけたら嬉しいです。次回もお楽しみに!
Written by 野田リエ(アメリカ)