小学校に入れば、子どもたちの英語の勉強は、アルファベットの音に重きを置いたフォニックスから入ります。しかし、実は英語教育はすでにその前から始まっていて、それがナーサリーライムなのです。
子どもたちは、本が読める年齢に達するまでにナーサリーライムで言葉の感覚を身に着け、文学の基盤を固めます。
ナーサリーライムの歌詞は一見ナンセンスなものが多いように思えるのですが、そもそもナーサリーライムは言葉の意味を理解するために歌われるのではなく、言葉のリズムを楽しむために歌われるものと理解しておきましょう。
これは英語圏の人たちが「面白い」と感じる言葉遊びに通じていて、この感覚を幼い頃から自然と身につけられるのが、ナーサリーライムなのです。
ナーサリーライムを知ると、生活のあちこちにその面影がちりばめられていることに気が付くようになります。
現代でも広告、新聞の見出し、文学、映画、アニメなど、ナーサリーライムを引用した場面は多く、英語圏の大人たちは、幼い頃に歌ったナーサリーライムを思い出してはそこに「面白さ」を見い出します。
ナーサリーライムを知ることで、日常生活の中でネイティブと一緒にクスッと笑えるようになったり、彼らの笑いのツボを理解できるようになるのです。
ナーサリーライムには子供が楽しんで学習できる要素がギュッと詰まっています。
繰り返し歌われるフレーズでは、記憶力や予測能力が身に付きますし、数字やアルファベットも楽しく自然に覚えられます。
また、グループの中で手足を動かして歌うナーサリーライムは、子どもの脳に心地良い刺激を与え、情緒を安定させる働きがあります。
好きなナーサリーライムを自然と口ずさむようになれば、それが自信となり、主体性の形成にも役立つ効果も期待できます。
たくさんあるナーサリーライムの中でも、実際にプレイグループでよく歌われ、私も息子と一緒に楽しんだ10曲をご紹介します。
耳に残りやすい単純なリズムなものばかりなので、気がついたら口ずさんでしまうこと間違いなしですよ。
Ring-a-Ring O’roses:グループで輪になって歌います。コローンとみんなで転ぶ場面が、子どもたちは大好き!
Grand Old Duke of York:足踏み行進しながら、たくさんの兵隊を引き連れた貴族になったつもりで歌います。しゃがんだり背伸びしたり、体を大きく使って楽しみましょう。
Humpty Dumpty:たまごのハンプティダンプティが壊れたけど、誰にも直すことができない。という内容の歌です。このハンプティダンプティ「不思議の国のアリス」にも出てくるのを思い出す人も多いのでは。
Incy, Wincy Spider:両手をLの形にして、小さなクモが動く様子を歌う、手遊び歌です。イギリスにはクモが多く生息していて、子どもたちにも身近な存在なんですよ。
Hey, Diddle Diddle:歌詞は全くのナンセンスなのに、一度聞いたら歌わずにはいられないナーサリーライムの代表格です。言葉の音の美しさを楽しんでください。
Row, Row, Row Your Boat:もともとは子守唄の優しいメロディのナーサリーライムですが、プレイグループではボートをこぐマネをしながら、いろんな動物に出会ってリアクションをする楽しいリズム歌に変身します。
Wheels on the Bus:子どもたちに人気ナンバーワンのナーサリーライムといえば、これ。バスにまつわるオノマトペを、体を使ってノリノリで歌います。単語の勉強にもなりますね。
One, Two, Three, Four, Five:数字の1から10を学べるナーサリーライムです。韻を踏むリズムが、耳に心地いいですね。
Baa Baa Black Sheep:羊の国、イギリスらしいナーサリーライムです。「メリーさんの羊」も有名ですが、プレイグループではこの曲がよく歌われます。短い歌ですが、昔のイギリス社会の事情もチラリと垣間見ることができますよ。
Rain, rain, go away:これも雨の多い国、イギリスらしいナーサリーライムです。短い曲の中にもしっかりと韻が踏まれています。
この記事では、英語圏で生活する上では欠かせないナーサリーライムについてお話ししてきました。
ナーサリーライムが単なる子ども向けの歌ではなく、その後の人生をも豊かにする要素の詰まったものだということが、お分かりいただけたでしょうか。
世代を超えて受け継がれてきた歌は、心の栄養になり、人生の基盤となる大切な部分を支えてくれます。
子どもと一緒に繰り返し歌うことで、ナーサリーライムから派生する世界が、生活のそばにあることにきっと気が付くようになりますよ。
ぜひ、ナーサリーライム独特の言葉のリズムを楽しんで、ネイティブの世界をのぞいてみてくださいね。
Written by ハリガン敬子(イギリス)
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