近年、健康的な植物性タンパク質として、欧米でも「豆腐」が注目されている。
私の住んでいるオランダでも、アジア系スーパーやオーガニックスーパーでない普通のスーパーマーケットで豆腐が売られている。
オランダの豆腐は水分が少なく、固い。沖縄の島豆腐に似ていると言ったら分かってもらえるだろうか。肉売り場の端の方に置かれていて、ベジタリアン向けの代替肉の扱いである。
イギリス人の友人もたまに豆腐を食べるとのことで、どのように食べるのかと聞いたら「味噌汁作るのよ」という答えが返ってきて、二重に驚いたことがあった。
彼女の家に遊びに行った時に、お手製の”Miso soup”をごちそうになる機会があった。興味津々。キッチンでしゃべりながら作るところを見ていたら、やっぱり一般的な日本人の作り方とはちょっとちがう。
まず、だしは取らない。いろんな野菜やきのこをたっぷり、同時に豆腐も小さく刻んで入れる。しかしもっとも驚いたのは、彼女がスープの中に玄米を投入したことであった!
”Japanese Miso”と言っていたが、彼女の家にあったのは韓国の黒味噌。「合うのかな?」と思いつつ完成したスープをいただいてみると、なかなかにおいしかったのである。
「味噌が入ってるスープだから、たしかに味噌汁だわ」と妙に納得した次第である。
だしは日本料理にとってとても大切なものだが、野菜やきのこから旨味が出るからなしでもいけるというのは学びであった。
さて、前置きが長くなってしまったが、日本人は子供の頃から豆腐を食べ慣れていることもあって、やはり豆腐にはこだわりがあると思う。
海外ではなかなか日本のような新鮮な豆腐は手に入りづらいが、できる限りおいしくいただきたい、この固さを生かすレシピが知りたいと思って購入したのがこの本。
本書には、79もの豆腐レシピが書かれてある。冷奴メニュー、低カロリーおかず、中性脂肪を撃退するレシピ、汁物メニューと4つの章に分けて紹介されている。
レシピや料理の写真だけでなく、時々挿入されている豆腐にまつわるコラムが意外に面白く、豆腐の知識を深めてくれる。
発酵食品の権威、小泉武夫氏によると、豆腐は江戸時代からのスタミナ食であり、東海道五十三次の宿場では「豆腐入りの納豆汁」が提供されていたという。
長時間歩いて疲れた身体にも優しく、体力を補ってくれるということを、まだ科学の発達していない時代でも実感できたからこそこのメニューが重宝されていたのだろう。
便利になった現代でも、豆腐の素晴らしい栄養を日々の生活の中で活用していきたいものだ。
シンプルな食材がゆえにマンネリ化しやすい豆腐料理だが、本書を参考にぜひいろんなレシピを試してみてほしい。
女性ホルモンも豊富な豆腐、なんだか毎日食べたいような気すらしてきた。
Written by 藤村ローズ(オランダ)