「表情は、他人のためにある。自分の顔は鏡に映さない限り見えないけれども、周囲の人はあなたのその顔をいつも見ている」
という言葉に、あなたはどんな反応をするでしょう?
私はドキッとしました。
真っ先に、「娘の目に映る私の顔ってどんなかな」と考えて、そしてちょっと落ち込みました。眉間にしわが寄っている私の顔が思い浮かんだからです。
最近、思春期の娘に対してやきもきする機会が増えています。私から娘への要望は一方通行の場合がほとんどで、つい「何度言ったらわかるの!」という言葉が口を突いて出そうになります。そんな表情の私を見る娘は、何を思うでしょう。
今回紹介する「あり方で生きる」は、コミュニケーションの本質を教えてくれる本です。
人はコミュニケーション無しでは生きてはいけません。他人とのコミュニケーション、自分とのコミュニケーションが十分に取れている人は、結果的に他人も自分もどちらも幸せにすることができます。
「やり方」ではなく「あり方」に焦点を当てることで、自分自身がどんな存在であるのかをより本質的に理解し、どんな存在でいたいのかに向けて行動しやすくなります。
本書には、自己対話と行動のヒントが50個、具体的なエピソードとともに簡潔に紹介してあります。
著者の大久保寛司さんは、「人と経営研究所」の所長として、人と企業の価値を高めるための講演活動も行っていて、取り上げてあるエピソードには職場でのものが多いですが、どんな環境の人にも響く内容だと感じます。
上述した表情の話でいうと、とある企業研修でのことが書かれています。
組織内の円滑なコミュニケーションを目的として幹部の方たちへ自身のデスクの上に鏡を置いて、時々自分の顔をチェックしてみるという提案をしたそうです。
2か月後のフォローアップ研修時に、自分の顔を鏡で見ているかを尋ねるとほとんどの幹部は「見ていない」と言います。理由をたずねると「自分の顔を見ると憂鬱になるから」という答えが返ってきました。
仕事で大変なこともあるでしょうし、普段から厳しい顔になってしまいがちなのかもしれません。
しかし、大久保さんは幹部たちへはっきりと伝えます。「部下たちは非常に迷惑です」
「表情の暗い人、しかめっ面の人は不愉快な雰囲気をまき散らし、周囲のモチベーションを下げてしまいます。明るい表情をして生きている人は、ただそれだけで周りの人を幸せにすることが出来ます」
この段階で、ようやく自分が周囲に与えている影響にハッと気づく方も多いのだとか。
このように、頭では分かっていても日々の生活の中でついつい見落としがちな「あり方」は結構あるものです。
書かれてある50のヒントにそれぞれ素敵な挿絵がしてあるのもこの本のグッドポイントです。具体的なエピソードや絵を見ながら、自身のことを振り返ったり、イメージを沸かせたりと考える工夫がされていて、何度も読み返したくなります。
今日のあなたの「あり方」のその先にあるのは、どんな未来でしょうか。
気になった方は、この本を手に取ってみられることをお勧めします。
Written by 周さと子(マカオ)