あなたはスマートフォンのない時代に戻れるだろうか?
私は絶対に無理だと思う。連絡ツール、情報収集、決済ツールなどとして、生活に必要なインフラを大きく依存しているので、1日ですらスマホなしで過ごせる自信がない。
いや、1日どころか、1時間ですら少し不安だ。先日、車のタイヤ交換をしたのだが、その際うっかりスマホを車の中に置いたままだったので、待っている1時間、軽いストレスを感じた。
「残りあとどのくらいかな?」と時間を確認しようとして、「あ、スマホは車の中だ」となる。しばらくして、「明日の予定を確認しておこう」と思いアプリを開こうとして、「あ、今ないんだ」となる。
そういう自分を自覚して、やっぱりスマホ中毒なんだろうなと思う。
「スマホ脳」というドキッとするタイトルの本書の著者は、スウェーデン人の精神科医アンデシュ・ハンセン氏。
彼が2018年にニューヨークで開催されたアメリカ精神医学会に参加した際に、この10年間で心の不調で受診する人、特に若い人が急増している理由として、デジタル化したライフスタイルにあるのではないかという議題が上がった。
人類史上、これほど急速にライフスタイルが変わったことはなく、人類が体験したことのない種類のストレスが存在するようになったという。人間の脳はデジタル社会にまだまだ適応していないらしい。
第3章のタイトル「スマホは私たちの最新のドラッグである」はかなりショッキングだ。スマホ中毒の私は薬物中毒者と同じということ?と気が遠くなってくる。
常に新しいもの好きの脳は、スマホの着信音が鳴ったり通知が来たりする度に期待し、報酬中枢を煽られ、ドーパミンを出す。そのメカニズムはギャンブルの「もう1ゲームだけ、次は勝てるはず」とまさに同じだという。
SNSにはヘロインと同じような中毒性があり、一度ハマってしまうと、抜け出すのがとても困難だ。スマホは脳をハッキングしてしまうので、遠ざけておくのがとても難しいそうだ。
まさに私もこれらを日々体感している。この本を読んで、できるだけスマホを手に取る回数を減らそう、使用時間を減らそうと努力しているが、容易ではない。
スマホを確認していない間に重要な連絡が来ないか、タスクが溜まってしまうのではないかととても気になる。
マルチタスクも常態化していて、例えば文章を書いている時も、動画を再生しながら情報収集したり、急ぎのメールにはその場で返信したりする。それも脳のためには良くないらしい。
本来脳はマルチタスクに向いてなく、マルチタスクすることによって集中力や作業記憶が下がり、人間の能力を低下させることにつながっているという。
この本を読んでいると、大好きなスマホがひどい弊害ばかりなので、思わず家の前にある水路に投げ捨ててしまいたくなった。
だがやはり、私はスマホのない時代に戻ることはできないだろう。
だから、スマホと上手く付き合う方法を模索していきたい。巻末の「デジタル時代のアドバイス」はシンプルだが、とても参考になる。
私はまず、毎日のオフ時間を決める、1日の使用時間に限度を決めるなど、シンプルな目標を続けていこうと思う。
Written by 藤村ローズ(オランダ)