MENU

アールヌーヴォー時代にも用いられた焼き絵「パイログラフィ」は禅の境地だった

2020年9月28日
土屋芳子 (マレーシア)

精工で美しいパイログラフィアート

前回のクルアン旅行の記事で書いた壁画アート。マレーシアではさまざまな場所でよく見られますが、アートに興味のある人口が少ないからか、日本のように多くのアートが楽しめる場所はありません。

ですが、それぞれのアーティストは創作活動を継続していて、ちょっとお金持ちの一般の人が絵を購入するというシーンは日本より活発な感じもします。

今回は「パイログラフィ」、またの名を「焼き絵」、「ウッドバーン」のアーティストの展示とワークショップに参加しましたのでレポートします。

パイログラフィとは昔から世界の広範囲で伝統として用いられているアートの手法で、木や紙や皮などに熱した鉄で焼き付けて絵を描くアートです。

今は電気式の専門の器具があり、アタッチメントを変えることで、影や線の太さをコントロールします。

古代エジプトやアフリカの部族の間や、中国の漢王朝時代、さらには、アールヌーヴォーの時代にも、ヨーロッパの広範囲で木箱の装飾や伝統工芸などに用いられてきました。

こんなにも昔から世界中で使われているアートの手法なのに、意外にも私たちはあまり知らないし、目にすることがないですね。

オーストラリアなどでパイログラフィーアート業界は活発だと聞きましたが、ここマレーシアのジョホールバルではRAYMOND KOH氏が30年以上その活動を続けています。

チャイニーズオペラや動物、建物などの作品をテーマに作品を制作。ときには、お客からのオーダーメイドで肖像画などを手がけることもあるそう。

大きな作品には製作に3か月かかることもあるそうです。木の板や紙に焼き付けて絵を描き、作品によっては、アクリル絵の具を塗って色付けします。

現在、Amari Hotel のロビーでチャイニーズオペラをテーマにしたRAYMOND氏の作品が展示されていて、誰でも無料で鑑賞したり、購入することもできます。

10月には動物がテーマの展示になるそうです。

この精工で美しいパイログラフィアートをご覧ください。人物像では目が一番大事で、まるで生きているような躍動感があります。

チャイニーズオペラの衣装は、時代や伝統を表すものなので、イメージで描くのではなく、写真などの資料をもとに忠実に描かれているそうです。

 

手ぶらで体験できるワークショップに参加

Amari Hotel では、2名から8名の人数が集まれば、いつでもパイログラフィのワークショップを開催してくれるとのこと。

料金は軽食付きでRM220(約¥5500)。所要時間は2時間です。手ぶらで来て体験できます。

アーティストのRaymondさんから直接教わることのできる貴重な機会。マレーシアでパイログラフィ体験ができるのは唯一ここだけだそうです。

ワークショップでは木製の板と図案(今回は曼荼羅)、カーボンシート、電気式のパイログラフィの器具が用意されています。

まずは小さな板に練習。ペンの先に鉄のアタッチメントがついていて、これを電気で熱して、まっすぐの線を焼き付けていきます。

ペンで線を書くのと変わらないような手の動きなのですが、これが意外とむずかしい。

ゆっくりすぎると木が焦げて、太くてにじんだ線になります。早すぎると薄くて細くてかすれた線に。ひと呼吸手を止めるだけで、線に丸いスポットが焼き付いてしまいます。

ある程度練習したら、板にカーボンシートと図案をのせて、上から鉛筆でなぞり、板に図案を写します。その後、パイログラフィのペンで図案をなぞって焼き付けていくだけで完成。

神経を集中させて、同じスピードでたんたんと焼き付けて線を描く、ということは、むずかしいことではありませんが、無の境地になります。

禅ZENの実践が、「通常時にひとつの対象に定まっていない心を、ひとつの対象に完全に集中すること」(ウィキペディアより)とすると、これは完全に禅ZENの境地です。

終わったあとはなんだか気持ちが整いスッキリして、癒しになるということを発見しました!癒されたい時に、これはおすすめです。

【Pyroraystudio】Raymond Koh氏主宰のスタジオです。
https://www.facebook.com/pyroraystudio/

Written by 土屋芳子(マレーシア)

この投稿をシェアする

イベント・セミナー一覧へ
コラム一覧へ
インタビュー一覧へ
ブックレビュー一覧へ
セカウマTV一覧へ
無料登録へ