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究極の癒しのデザート?イギリスの冬の風物詩 ‘The Steamed Pudding’

2021年2月24日
アレン真理子 (イギリス)

イギリス人のいうプディングとは?

ある冬の日、友人のディナーパーティで今まで食べたことのないデザートをいただいたことがある。

極上のローストチキンディナーを楽しんだ後、友人のヘレンが「さあ、どうぞ」とキッチンから持ってきたのがSteamed Pudding。ドーム型で、優しい黄色で、湯気のたつ、いかにも美味しそうなプディング!

もうすでにお腹がいっぱいだったにもかかわらず、それでもこのプディングが目の前にサーブされると、やれ「アイスクリームをのっけよう」だの、「いやこれにはカスタードソース」だのと盛り上がり、口にした途端「うーむ。。。」とゲスト一同、恍惚感にひたったのである。

ちなみにイギリスでは我々日本人がいう「食後のデザート」を総称してプディング(pudding)という。日本で好まれるチョコレートケーキやモンブラン、ショートケーキなどをイギリス人はプディングに含まない。

こういったスポンジケーキのたぐいは午後3時から4時の「お茶タイム」に楽しむもので、夕食の後のデザートとしていただくことはない。

では、イギリス人のいうプディングとはなんなのか?

それはチーズケーキ、トライフル、ムース、フルーツクランブル、なぜかイタリア系のデザート(ティラミスやアイスクリーム、コーヒーリキュールがけ)、メレンゲのお菓子などである。

そして、冬になるとじゃーんと登場するのがこのSteamed Puddingである。このプディングには日本のパティシエが作り出すような美しい芸術品のような繊細さはない。

砂糖、卵、バター、小麦粉を一気に混ぜて、シロップの入った器にいれて、蒸すだけ。なにも混じり気も洒落っ気もない、純粋なお菓子なのだ。

 

暗い冬の食卓に火を灯すようなデザート

が、想像してみて欲しい。寒い、暗いイギリスの冬、どこにも出かけるわけでもなく、明るい会話も尽きてくる。

夕食時、なんとなく盛り上がらない一家の団欒が終わる頃、テーブルに湯気のたつ、ほかほかのプディングが登場する。

ゴールデンシロップをじっくり吸って長い時間蒸したそのプティングは取り分けた瞬間にほわーっと甘い匂いを放出し、皆を一気に幸せモードにする。

口に含むとどうだろう、シロップの甘味がじゅわーっと口の中でふくらみ、ジューシーながらもふわっとした食感を残すスポンジが口にやさしい。

蒸したばかりでまだまだ温かいプディングに冷たいバニラアイスクリームを添えるのもよし、温めたカスタードソースをどっさりかけるのもよし、各自がそれぞれの食べ方でいただく。

長い、暗い冬の中で食卓に火を灯すような存在、それがこのSteamed Puddingなのだ。

この飾り気のない温かいデザートには、やはり飾り気のない、でも温かでまっすぐなイギリス人気質が染み込んでいるかのようで筆者のお気に入りの一品である。

パブやレストランでももちろん定番だが、前述のパーティでのように、ホームメードが一番美味しい。

今回はこのHelen’s Steamed Puddingのレシピを特別にシェアしたいと思う。とはいってもあまりに簡単で拍子抜けしてしまうかもしれない。

レシピ通りにすれば、お菓子作り初心者でもまずは失敗しないシンプルレシピである。シロップを入れるときは「ダイエット中だから」と、量を減らすような邪道なことはしてはいけない。

ここは潔くあきらめて、堂々と、すがすがしく、どっさりと使って欲しい。なにしろ、このプディングの醍醐味はシロップなのだから。

 

Helen’s Steamed Puddingレシピ

左上:手順①、中央上:手順②、右上:手順③、左下:手順④、中央下:完成!、右下:シロップがじっくり

【材料(4人分)】

・ゴールデンシロップ 大さじ4−6
・小麦粉 100g
・ベーキングパウダー 小さじ1
・バター(無塩、室温)100g
・砂糖 100g
・卵(室温)2個
・バター(ボールを塗るため)

お好みで
・バニラアイスクリーム
・カスタードソース(市販でオッケー)

*バター、卵は冷蔵庫から出して、室温に戻しておく。(バターは柔らかい状態にまで戻す。)

①耐熱ガラスボールにバターを薄く塗り、ゴールデンシロップを入れる。

②小麦粉、ベーキングパウダー、バター、砂糖、卵を大きなボールに入れてハンドミキサーで1,2分混ぜる。生地がスムーズでテカリがちょっと出るくらい。(あまりかき混ぜすぎないように!)

③生地を準備しておいたボールに流し込む。アルミホイルでしっかりと‘蓋’をするために紐を使って、締め付ける(写真参照)。この時にボールを後から簡単に持ち上げられるように取手をつけておくのがコツ。

④ボールがちょうど収まるような大きめの鍋にボールを入れて、ボールの半分の高さまで沸騰したお湯を注ぐ。いったん沸騰させてから、蓋をして弱火で1時間半蒸す。途中でチェックして、必要であればお湯を足す。

⑤1時間半後にボールを取り出して、ナイフを軽く周りに入れてから、大皿にひっくり返すような形でサーブ。

*日本人4人家族なら充分の量だが、もし5人家族、またはお友達を接待する場合、量を2倍にして、2時間蒸す。翌日に残り物をいただく場合、電子レンジで30秒ほど加熱すると美味しくなります!(写真は倍量で作ったもの)

王道は温めたカスタードソース、またはバニラアイスクリームを添えてお楽しみください!

Written by アレン真理子(イギリス)

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