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ただいま、日本!祖国へ帰って改めて感じること。リバースカルチャーショックとは?

2021年5月8日
岩井真理 (日本)

予期しなかったブラジル行き

皆さんこんにちは。ブラジル帰りのキャリアコンサルタント、マリです。世界中どこにいても輝けるキャリア&ライフを応援します。

この度、日本へ本帰国しました!思えばあっと言うの3年間。夫は実に5年の駐在生活を送りました。

今回は新シリーズ第1回目ということで、自己紹介を兼ねて、海外転勤に帯同した「駐妻」の行き帰りアレコレについて、キャリアの視点も混じえて書きたいと思います。

ブラジル行きは私にとって予期せぬことでした。ブラジルに帯同するにあたり、私は日本で20年超勤めた金融関係の会社を辞めました。

帯同期間中、私は人生初の「専業主婦」になりました。それまで完全なる共働きでしたから、無収入、人の稼ぎで暮らすことを初体験しました。

夫には単身赴任を継続してもらい私は日本で働き続けるとか、とりあえず休職して帰国したら元の職場へ戻る、という選択肢もありました。

でも「ここはキッパリ辞めて、新しいスタートのための充電期間にするのも悪くない」「会社の人事異動のつもりでその役割を果たそう!」いう気持ちになりました。

当時、役職をいただいていたこともあり、退職には一年かかりました。長く勤めた会社に心残りがないように、精力的に引き継ぎをこなしました。

元々いつか退職したら「キャリアコンサルタント」として働いてみたいという思いがあったので、会社を辞めてからは個人セッションや業務委託の仕事をいくつかこなしながら、渡伯する日を待ちました。

老いた親を残していくことも不安でしたが、とりあえずいろんなことを中断して、いろんなものを日本へ置いて、ブラジルへ向かったのです。

 

アイデンティティクライシスに直面

ブラジル地図のデコパージュ

南米は事前情報が少なめだったので、渡伯直後はとにかく生活を整えることに必死でした。

夫が既に2年間単身赴任をしていたものの、単身の生活とは勝手が違い、生活の基礎情報を得るためには人との繋がりが不可欠でした。

とはいえ夫は何の繋がりもなかったので、自分から働きかけして何とか駐妻グループにたどりつき、様々な事を教えていただきました。

行ってから知ることも多い生活の中で、分からないことはこのグループに訊けば、必ず誰かが教えてくれました。仕事中心の時とは一味違う、「主婦同士の繋がり」をかなり頼もしく感じました。

数ヶ月が経ち生活に慣れると、逆に私の気持ちは少しずつ落ちて行きました。ブラジルではビザの関係と夫の会社の方針で働くことはできない状態でした。

家事や駐妻仲間とのお付き合い、週2回のポルトガル語レッスンくらいしか、私にはする事がないと悶々とする日々。

私は自分が無能な人間になったような気がしました。誰にも必要とされていない事に気付き、日本へ置いてきたものの大きさをドカーンと感じました。

キャリアコンサルタントの私はかなりの覚悟をしていたはずなのに、ドォーッと落ちるという、いわるゆるアイデンティティクライシスに直面しました。

アイデンティティクライシスとは、「自分は何なのか」「自分にはこの社会で生きていく能力があるのか」という疑問にぶつかり、心理的な危機状況に陥ることです。

まさに、これ。まさかのコレ。理論的には分かっていたつもりです。産休や育休などで仕事の現場を離れた方からもよく聞く話でした。

でも、人間ってその立場にならないと本当の意味では分からないんだな、という事も感じました。シンドイ思いもしましたが、分かって良かったと今は感じています。

 

落ちるならトコトン!

カンブイの夕陽

落ちるならトコトン!これも、この体験で得た教訓です。

大丈夫なフリなどせず、ズコーンと底辺まで行って、抗わないことをお勧めします。何故なら、落ちたら次は上がるしかないからです。落ち切れば、必ず上がれます。

その底辺で気付いたことがあります。

私は自分を無価値な人間だと思っているけど、ブラジルへ来る前と、今の私は何が違うんだろう?私に能力があったとしたら、それが突然失われたのだろうか?

答えは、ノーです。私自身は、何も変わってはいないんです。環境や立場は変わったけれど、私という人間は何も変わってはいないのです。だとすると、そんな自分に今できる事はなんだろうか、と考えました。

私はやっぱりコンサルタントとして、誰かのお役に立ちたいと思うようになりました。特に私のようにアイデンティティクライシスに陥った人や、海外にいる悩める人達の助けになりたいと考えるようになりました。

その後は、オンラインで自分ができそうなボランティアとコミュニティを見つけて一つずつ参加しました。今ではどんな検索ワードを入れたかは忘れてしまいましたが。

お陰様で仲間にも恵まれて、帯同生活に張り合いが出ました。報酬を得る事だけがキャリアではなく、必ず人生の中でその時々のロール(役割)があることも、明確に意識できました。

落ちたところで、自分の気持ちを見つめることができたからこその答えです。
 

コロナで生活が激変、唯一の駐妻に

コロナが始まった頃のブラジルの様子

周囲の駐妻との良い関係を続け、現地の知り合いも増えました。南米を中心に旅行に行ったり、ボランティア活動をしたり充実した日々が2年ほど続いた頃、コロナがやって来ました。コロナは私達の暮らしを大きく変えました。

日本人家族のほとんどは、会社の方針で日本へ一時避難帰国をしました。帰国する彼女達もまた、突然の不可抗力により駐在生活を中断する事になりました。

我が家は夫の仕事の都合で残留が決まり、2020年の4月の末には、私の周りには数人の駐妻しか残っていませんでした。

「また、戻って来れるのかな?」「このままじゃ終われない」「まだ、やり残した事があるのに」など、みんなそれぞれの胸に複雑な気持ちが渦巻いたと言います。

残る私も、いつという確信の持てない「またね」という挨拶に、胸が痛くなりました。

それから半年ほどすると、同じ地区に最後までいたご家族がアメリカへの転勤が決まり、私は地域唯一の日本人駐妻になってしまいました。かつて25人ほどいた駐妻たち。何かと頼りにしてたのに、ひとりぼっちとは。

そもそも人に会うこともなかったけれど、それでももう近くには誰も居ないのだと思うと、少し心細くなりました。

世界中がパンデミックに振り回され、心の問題を抱える人も少なくないと感じる事が多くなりました。自分自身も「明日のことは分からない、とにかく今日を何とか生きなくては」という気持ちでした。

そして、年の瀬が近くなった頃、夫の帰任について内示が出ました。最後の一年、どこへも行けず、何もしてないのに、これで駐在生活が終わるんだな〜と、やや消化不良な気持ちになりました。

私の中にも、「こんなはずではなかったのに」という思いが少なからず込み上げました。

 

噂の「リバースカルチャーショック」?!

帰国した祖国日本の景色

その後、コロナ禍で帰国した人達が、それぞれのモヤモヤする胸の内を語ってくれました。

「日本の暮らしが窮屈に感じる」

「予定外の帰国に、心がついていかない」

「なんだか胸にポッカリ穴が空いたみたい」

「日本は自分の国なのに、違和感がある」

「海外での出来事は、あまり話せないかんじ」など、異口同音に、なぜかしっくり来ないと言います。

実はこの感じ、私も薄ら感じます。コロナで色々な事が変わってしまい、余計に以前の日本とは違う感じがします。ニューノーマルと称して、これまでにない事が取り入れられています。一方で、街中や電車の人混みの多さには、ビックリ。

来た来た!これは、噂の「リバースカルチャーショック」に違いありません。

リバースカルチャーショックとは、海外生活を終えて自分の慣れ親しんだ環境(文化圏や国)に戻ってきた人が経験する、自分の文化への再適応に伴い感じてしまう驚きや戸惑いのことです。

それでもまた、生活を立て直さなくてはなりません。帰国後最初の2週間は、自粛生活で身動きが取れませんでした。その後、引越、役所巡り、荷物が届く、荷解き、足りない物を揃えたり、とにかく目まぐるしく動きました。

身体はフル回転ですが、心は空回りします。何故だろう、自分の国にいるのに、またモヤモヤします。

 

本当のHomeとは?

再度フリーランスとして働こうと考えているので、これまでご縁のあったところや新たなお仕事相手を模索中です。コロナの影響もあり、ややゆっくり目ですが、ありがたい事にいくつかお仕事は入っています。

しかし私には、特にココという行く場所はありません。それにひきかえ、夫にはとりあえず会社という行くべきところがあります。

日本から海外へ出た時も、海外から日本へ戻った時も、その土地の文化や生活に馴染もうと努力すればするほど、自分の居場所や立ち位置を探し、悶々とします。

戻ってきたココ日本そのものが、自分にとってのHomeというわけではなく、自分が居心地良くいられる場所や立場が、本当のHomeなのだと思います。

海外生活後のリバースカルチャーショック、そうなるのはよくある事で、当たり前なのです。逆に海外に出たからこそ知ったこと、感じた事もあって、それは間違いなく新しい経験値になっているのです。

これから日本へ帰国する方、またはいつか帰国する方、行きも帰りも、心は揺れます。

でも、知っておけば大丈夫!環境変化の中で、頑張ったからこそ、この心理的動きが大きいのです。

Written by 岩井真理(日本)

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