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女優兼歌手ヴァネッサ・エンジェルが交通事故で死亡、インドネシアの交通事情

2021年12月3日
杏子スパルディ (インドネシア)

「命を預かっている」意識が希薄なドライバー

2021年11月4日、インドネシア中を揺るがした、女優兼歌手ヴァネッサ・エンジェルが交通事故で亡くなったというニュース。

事故当時ドライバーが運転していた車には、ヴァネッサと夫、まだ幼い息子とシッターの合計五人が乗っていましたが、内二人、ヴァネッサ夫婦が亡くなってしまい、ヴァネッサの息子、ドライバー、シッターの三人はケガは負ったものの助かりました。

警察の調べに対し車を運転していたドライバーは、居眠り運転だったことを認めました。さらに恐ろしいのが、なんとこのドライバー、運転中にスマートフォンからSNSの投稿をしていました・・・。

日本人の友人とこの事故についての話題になり、友人が言った言葉がとても重かったです。「私たちって、ドライバーに命を預けているんだよね」

インドネシアに住む外国人の多くは、企業や個人でドライバーを雇っています。インドネシア人でも、富裕層はドライバーを雇っていることが多いです。その場合、毎日車に乗る際に、「命をドライバーに預けている」ことになるんですね・・・。

ところが、ドライバーのほとんどはおそらく「命を預かっている」という意識を持っていない、もしくは意識が薄いのではないかと思います。

日本では電車やバス、タクシーの運転手は、「乗客の安全を守る」という意識を持つことが当たり前のことですよね。でもインドネシアはどうでしょうか?

大手のタクシー会社の運転手も高速道路を走行中に平気で居眠りをするくらいです。しかもそれを指摘すると、「大丈夫」「居眠りしていない」などと否定することが多いのです。これってとても恐ろしいことですよね。

 

ドライバーの安全意識が低い理由

都市バスや長距離バスの事故もとても多いです。なぜインドネシアのドライバーがこんなに安全意識が低いか考えてみると、すぐに思い当たるふしがありました。

まず大前提として、インドネシアは交通面では実質「無法地帯」であることが考えられます。そう言うと、皆さんきっと驚かれることでしょう。

日本、または日本以外の国でも、運転をしたければまずは何が必要でしょうか?

教習所へ行き交通ルールを学び、運転をするという実技も学び、試験を受けて合格したら晴れて免許証が発行されて、公道で運転することができますね。ではインドネシアの場合はどうでしょうか?

どの順序で書けばいいか少し迷ってしまうほどめちゃくちゃなのですが、日本のような教習所はありません。

プライベートドライビングスクールはジャカルタや近郊であれば見たことはありますし、「練習中」のマークを付けて道路を走っている車も見たことがあります。ですが、そもそも免許証がなくても運転できてしまうのです。

「どういうこと?」と思う方もおそらくいらっしゃるかもしれませんが、免許証の携帯・不携帯ではなく、そもそも運転免許証を取得せずに運転できてしまいます。

インドネシアにも交通ルールは一応あり、運転免許証が必要です。また何歳で免許証が交付されるかも決まっています。

でもこれは「ただの」ルール。実際は運転免許証無しで車もバイクも運転できてしまっています。

インドネシアに来たことがある方は見たことがあるかもしれませんが、小学生~高校生も無免許でバイクに乗ってしまいます。さすがに小学生はあまり大きな道路では乗りませんが、中高生のバイク通学はいたって「普通」です。

法律では17歳から免許を取ることができますが、多くの人は無免許でバイクに乗っています。そして警察も見て見ぬふりをしています。

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