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インドネシア国民に大切な建国五原則「パンチャシラ教育」とは?

2022年2月5日
杏子スパルディ (インドネシア)

インドネシアの建国五原則「パンチャシラ」

この鳥のマークは一体なんだと思いますか?

これはインドネシアの国章で、「ガルーダー・パンチャシラ」と言います。神鳥であるガルーダが抱えている盾に描かれたシンボルは五つ。これら五つを、インドネシアの建国五原則「パンチャシラ」といいます。

このパンチャシラは、学校や会社に、大統領・副大統領の写真と共に必ず掲げられています。ガルーダの足の部分のリボンに書かれているのは、多様性の中の統一を意味する「ビネカトゥンガルイカ」の文字。

パンチャシラは、1945年の6月1日(日本軍政の終わり頃)に開かれた独立準備調査会で、スカルノ初代大統領が発表したものが元になっています。

その内容は:

①唯一神への信仰 (Ketuhanan yang maha esa)
②公正で文化的な人道主義 (Kemanusiaan yang adil dan beradab)
③インドネシアの統一 (Persatuan Indonesia)
④合議制と代議制における英知に導かれた民主主義 (Kerakyatan yang dipimpin oleh hikmat kebijaksanaan, dalam permusyawaratan / perwakilan)
⑤全インドネシア国民に対する社会的公正 (Keadilan social bagi seluruh rakyat Indonesia)

この建国五原則こそ正にインドネシアの基本ルールとされているものであり、小学校一年生から学校で学びます。子供たちがこの五原則を何度も何度も読んで練習して、暗記するのです!

それほどインドネシアとインドネシア国民に大切なものとされています。ですから敢えて日本語での五原則にインドネシア語を書きました。

 

身分証明書にも宗教の欄

小学校一年生の教科書にも、二年生の教科書にも、とにかく毎年必ず載っていて、ただ文を暗記するだけではなく、5つのシンボルが何を意味するか、しっかりと覚えさせられるのです。

上の娘が小学校に上がり、初めてこのパンチャシラ暗記の宿題を持ってきた時は「こんな難しそうなものを6-7歳の子供たちが暗記するの?!」ととても驚きました。

このパンチャシラにある:唯一神の信仰、民主主義、多様性と公正さ、はインドネシアの教育カリキュラムにしっかりと入っています。

私立校でも国立校でも、必ず宗教という科目があります。我が家の子供たちはイスラム系の学校に通っているので、宗教の授業といえばイスラム教について学びます。

イスラムやキリスト系の学校での宗教の時間は、生徒がそれぞれ信仰する宗教に分かれて授業が行われます。

17歳になると発行される身分証明書にもしっかり宗教の欄があり、どの宗教を信仰している人かIDを見ればわかるようになっています。

記載される宗教はイスラム、プロテスタント、カトリック、ヒンドゥー、仏教、儒教の6つ。原則として無宗教・無神論は認められていません。

 

学校での宗教教育

4年生の娘の教科書にも

私の子供たちの学校はイスラム校ですが、他宗教を尊重することなども教科書に記載があります。イスラム以外の宗教の慣習や、各宗教の祈りの場所や寺院の特徴についても学びます。

宗教以外でも、学校では民族についても学びます。インドネシアは他民族国家です。日本で生まれ育った私が受けた教育にはなかったことも学校で学びます。(今は日本でも他民族や多様性についての教育がされているのでしょうか・・?)

インドネシア人と一言で言っても、その民族の数は300ほどあると言われています。その内訳は、大半を占めるジャワ人が45%、スンダ人が14%、マドゥラ人 7.5%、その他が33%、華僑が5%。

民族の数だけ慣習や文化もあるわけで、小学校の教科書でもメジャーな民族については、詳細に書かれています。

例えば、家屋について。○○人はこんな家、XX人はこういう様式の家が伝統で、それらの家の名前は△△、と覚えてテストにも出題されます。

各民族の楽器や伝統衣装の特徴や名前についても学びます。また、多様性を重んじるインドネシアの国家原則から、上記のように信じる宗教や民族(髪質や肌の色についても言及)を互いに尊重するように、と教科書にもあります。

 

インドネシアの言語は800以上!

最後に言語。公用語はインドネシア語ですが、各民族で独特の語彙や文法、文字を用いた言語が存在します。例えば、私の夫はスンダ人ですが、夫の実家では日常ではインドネシア語はほとんど使われず、皆スンダ語で話しています。

そのような環境で育った子供たちは小学校に上がるまで基本はスンダ語でコミュニケーションをとり、学校で初めてインドネシア語を学ぶのです。

これはスンダ(西ジャワ)に限らず、ジャワ地方(中部~東ジャワ)もそうですが、スラウェシ、スマトラなど、各島・各地域でたくさんの言語が話されています。その数は800以上もあると言われています。

スラウェシやスマトラ島といっても、その中で更に、北部では○○語、南部ではXX後と違っているからです。

小学校では公用語のインドネシア語以外に、地方の言葉を学ぶこともカリキュラムに入っており、私が住んでいるのは西ジャワ州のため、子供たちはスンダ(西ジャワ語)を履修します。

我が家は夫がスンダ人などで、スンダ語を子供たちも耳にしたことがありますが、例えばジャワ人でも、西ジャワの学区域であればスンダ語を学びます。ジャワ地方の学校ではジャワ語が教えられます。

いかがですか?インドネシアの学校教育のベースとなる建国五原則、そして実際に現在子供たちがリアルに何を学校で学んでいるか、インドネシアのユニークさが皆さんに伝わり、少しでも興味をもっていただけたら嬉しいです。

Written by 杏子スパルディ(インドネシア)

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