ベルギーといえばチョコレート。
そんなチョコレート大国で、日本人として活躍するパティシエ、チョコラティエに、佐々木靖氏がいる。
ベルギーチョコ王国で、世界200カ国で刊行されている歴史ある美食ガイド『ゴ・エ・ミヨ Gault & Millau 、ベルギー、ルクセンブルグ 部門2022年』で、チョコラティエ賞受賞、過去にもすでに二度の受賞。
世界菓子コンクールでも何度も入賞という華麗なる経歴の持ち主である。毎年クリスマスには、7000のケーキの予約をこなし、1300箱以上のチョコレートを日本へ輸出する。
母の日には300メートルも行列ができたほど愛されている、 Pâtisserie-Chocolatie Yasushi Sasakiのオーナーシェフ佐々木氏にベルギーのチョコレートについて、インタビューを申し込んだ。
そしてその活躍し続ける秘訣について、お伺いしてみることにした。
受賞後もいつもと気構えは全く変わらないという佐々木氏
ベルギーの閑静な住宅街ストッケルにある、教会のそばのヨーロッパらしい町の一角にたたずむ、Pâtisseri-Chocolaterie Yasushi Sasaki。
小さな店構えからは想像できない広い工房を通り、ヨーロッパらしい狭い階段を降りて、事務所に入らせていただいた。
チョコレートの本場ベルギーで、日本人パティシエ、チョコラティエとしての修業。店を開くとはどんなに大変なことかと構えていたが、近所の方々に愛されるお菓子屋さんであることを一番大切にする姿勢は、昔も今も変わらないという。
ご家族のベルギー駐在に同行し、ヨーロッパでの料理の勉強に興味が湧いた。ただ、昆虫嫌いで魚にも触れない性質だったので料理人としては難しい。
「お菓子は?」との助言がきっかけで、菓子作りへの勉強にシフトする。始めてみるとお菓子は深くて、種類もとても多く興味深い。材料は限られている。化学反応なので、理系が好きだった自分に向いていると感じたそうだ。
語学の壁も乗り越え、無事、ベルギー国立専門学校C.E.R.I.Aで法律なども含む、17科目の専門専門課程を卒業。開業に必要な学位を全て取得。
その後、当時ベルギーナンバーワンと言われていた、パリの正統派菓子の流れを汲んだ『Mahieuマイユー』に、通訳として参加していたが、マンダリンナポレオンコンクールで直談判し、「修業したい」と申し出る。
ヨーロッパの伝統的なお菓子の中に、日本お菓子も馴染んでディスプレイ
それから約10年間、マイユーで修業することになる。
当時は今のようなチョコレート専門店というのは存在せず、お菓子屋さんではたくさんの種類の菓子を作り出すことが通例とされていた。
ベルギーの現代のチョコレートの特徴は、大きく二つあると言う。
パティシエの感性でチョコに味を足すチョコラティーと、ワインの様な感覚で農産物としてチョコレートを作る、現代に出てきた流れのチョコレート屋である。
ココアの植民地を所有していたベルギーではチョコレートが有名なのだが、1990年代にはベルギーのチョコレート低迷時代を経て、2000年代からチョコレートを農産物と捉えた自然派が出てくる事になり、ベルギーチョコレートが復活する。
佐々木氏はマイユーで、多くの種類のお菓子を一通り作れるようになった。そしてお菓子作りはもちろんのこと、経営を学べたとのことが大きいと言う。
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