シチリア在住、桜田香織です。イタリア生活も四半世紀を超える今日この頃、和食への思いが募ります。イタリアで暮らし始めた最初の数年は、毎日イタリアンでよかったのですが、歳のせいでしょうか?
ミラノやローマならば和食材も簡単に手に入るかと思いますが、私の住んでいるパレルモはなかなかそうもいきません。と言っても、10年くらい前と比べるとかなり手に入るようになりました。
それは徐々に始まった「寿司ブーム」が大きくブレイクしていることに関係がありそうです。
シチリアに寿司ブームが来たのは、他のヨーロッパや北イタリアと比べてもかなり遅かったと思います。主要な都市に存在する「和食屋さん」も、シチリアにはオープンしませんでした。
シチリア内のいくつかの都市では試みがなされ、夫シチリア人、妻日本人カップルがレストランをオープンしたケースもあります。
しかしそれは和食とイタリアンのミックスであって、本格的な和食ではありませんし、お寿司もかなりお粗末でした。仕方がありませんよね、プロの職人さんではないので。その割に価格設定が高かったことを覚えています。
その後まず若者の間で「日本ブーム」が起こり、それはアニメを発端としたものだったようですが、徐々に休暇で日本へ行く人たちが出始めました。そして「お寿司が好き」という人が増えていったのです。
それに伴い寿司レストランが次々とオープン、その速さは驚くほどでした。と言っても、全部中国人経営なのです。そしてメニューは和食と中華料理の両方で形成されています。
面白いのはこれらのレストランの経営の仕方です。All You Can Eatというシステムで、メニューから何を頼んでも同じ値段なのです。大体お昼が16€から18€(2000円強)、夜は22€から25€(3000円強)くらいでしょうか。
ブッフェではなく、メニューから選び、きちんとテーブルに持ってきてくれます。飲み物とデザートは別料金となります。
ただ、万が一頼み過ぎて残した場合は、その料理の値段をプラスして支払わなくてはいけません。これは「食品ロス」を防ぐためです。いい気になって取り過ぎて残す、シチリア人結構あるあるなので。
さて、シチリアで中国人の握るお寿司はどんな物なのでしょうか?
ごく普通の握りもありますが、変わりネタも面白い。巻き寿司をそのままフライにしたり、クリームチーズ使用、照り焼きソースがかかったもの、トリュフを使った物まであります。
はっきり言って日本人から見ると「えっ?」と思う物も多々あるのですが、これらは「別物だ」と認識して食べると結構美味しいのです。決して日本のお寿司と比べてはいけません(笑)。
お誕生日にテイクアウトした寿司セット。天麩羅も
人気メニューはエビの天麩羅、餃子、春巻き、そして意外なことにラーメン。そして巻き寿司が好きみたい。
中華と和食を一緒に食べるのも多少変な感じがしますが、餃子と焼き魚が並ぶ日本の家庭の食卓を思えば、こういうのもありなのだと思えます。
寿司ネタは非常にワンパターンで、主にサーモン、マグロ、エビ。時々白身魚が加わります。お店によっては「炙り」もあり、結構気に入っています。
新鮮な魚自体は手に入る場所なのですが、最初の頃はお米がひどかったです。炊き方が悪く、あまり美味しいとは感じられなかったのです。
しかし競争も激しくなり、中国人もしっかりと学んだようで、かなり美味しいお米を使用し、上手に炊き上げているところが増えたので有難いです。
テイクアウトも充実していて、3500円くらいで揚げ物とお寿司の盛り合わせなど、食べ切れないほどの量があります。なかなか帰国できない今現在、私の胃袋を助けてくれるなくてはならない存在となっています。
できれば茶碗蒸しや揚げ出し豆腐など、私の大好物がメニューに載るようになるといいのですが、まぁこれは高望みでしょう。今ある物で満足、そして感謝です。
Written by 桜田香織(イタリア)