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「ホー・チ・ミン」 は人名とご存じでしたか?ベトナム建国の父のストーリー

2022年5月21日
平良弥生 (ベトナム)

グエンフエ通りと呼ばれる歩行者天国に立つホー・チ・ミンの銅像

その昔は「サイゴン(Sài Gòn)」と呼ばれていた

Xin chào! ベトナム ホーチミン在住のYayoiです。今回のコラムは私の住む市の名前にもなっている「ホー・チ・ミン」について書いてみたいと思います。

皆さん、「ホー・チ・ミン (Hồ Chí Minh)」は人の名前だということをご存知でしょうか。ホーチミン市は、その昔、ホーチミンではなく、「サイゴン(Sài Gòn)」という都市名でした。

去る4月30日、この日はベトナムでは祝日となっておりお休みの日でした。 何の祝日かというと、「南部解放記念日」と呼ばれる、ベトナム戦争が終結した日です。

ベトナム戦争当時、ベトナムは北ベトナム(ベトナム民主共和国)と南ベトナム(ベトナム共和国)とに分断されていました。

47年前の1975年4月30日、北ベトナム軍の戦車が南ベトナムの大統領官邸に突入したことで(サイゴン陥落)、ベトナム戦争は終結し、北ベトナムと南ベトナムは統一されることになりました。

その時北ベトナム(ベトナム民主共和国)の国家主席だったのが、「ホー・チ・ミン (Hồ Chí Minh)」さん。彼の名前にちなんで、サイゴンはホーチミンへと改称されることになりました。

 

「ホー・チ・ミン」はどんな人物だった?

統一会堂(旧南ベトナムの大統領官邸)に北ベトナム軍の戦車が突入し、ベトナム戦争は終結

ここで少し彼の生い立ちや当時のベトナムの歴史について説明したいと思います。

ホー・チ・ミン (Hồ Chí Minh) は、政治家であり、革命家です。1890年、当時まだフランスの植民地(フランス領インドシナ)だったベトナムに生まれ、若い時代をパリで過ごしました。

そこでベトナムの独立運動に参加するようになり、ここから政治活動を本格化させることになります。51歳でベトナムに帰国したホー・チ・ミンは、ここでもベトナム独立のために尽力しました。

第二次世界大戦時にはフランスに代わってベトナムを支配していた大日本帝国を相手に政権奪取を試み、大日本帝国の降伏後、ベトナム民主共和国を建国して国家主席兼首相に就任しました。

さらにその後、ベトナムは北ベトナム(ベトナム民主共和国)と南ベトナム(ベトナム共和国)とに分断されてしまいます。

その際アメリカなどの資本主義国家の後ろ盾を得ていた南ベトナムが独裁的だったため、南ベトナムを奪還すべく、当時開戦していたベトナム戦争では国民にベトナムの統一を呼びかけ、南ベトナムとの戦いを続けました。

しかし悲しいことに、ホー・チ・ミンはベトナム戦争が終わりを迎える少し前に心臓発作で亡くなってしまいます。

ベトナム戦争の終結後、その彼の栄誉を讃え、サイゴンはホーチミンへと名称を変更することになりました。

彼の栄誉もさることながら、ホー・チ・ミンはその人柄でもベトナム国民から大いに賞賛されています。彼は絶対に汚職などに手を染めることはなく、また国のトップとは思えないほどに質素な生活をしていました。

さらに彼は、常にズボンのポケットに子どもたちに配るための飴を入れていたとされ、ベトナム国民からは、親しみを込めて「ホーおじさん」と呼ばれていました。

 

今もあちこちに見られる「ホーおじさん」

ホーチミン市中央郵便局に飾られるホー・チ・ミンの肖像画

ベトナム国民から愛される「ホーおじさん」ことホー・チ・ミンの写真や銅像は、ベトナムのあちらこちらで見かけることができます。

まず、現在ベトナムで流通している通貨、ベトナムドンの紙幣には、全てホー・チ・ミンが描かれています。(世界ウーマン ベトナム12月コラム)

また、私の住んでいるホーチミン市にも、街の至るところにホー・チ・ミンの銅像や写真が飾られています。トップ画像のホー・チ・ミンの肖像画は、ホーチミン市の中央郵便局内に実際に飾られているものです。

またベトナム各地にホー・チ・ミン博物館もあり、首都のハノイには、ホー・チ・ミンが実際に住んでいた家や、ホー・チ・ミンの遺体が今も保存されているホー・チ・ミン廟があり、実際に遺体を見ることもできます。

ベトナム人にとって、「ホーチミン」といえば、ホーおじさんことホー・チ・ミンを指しているので、都市名を表す場合、ホーチミンの後ろにシティをつけて「ホーチミンシティ」としたり、またはベトナム語で「TP. Hồ Chí Minh」(TP. =Thành phố は市、街の意味)と表したりします。

 

「サイゴン」の名も今でも現役

Saigon Casa というカフェとベトナムのビールブランド「BIA SAIGON」

ちなみに今でも、旧都市名の「サイゴン(Sài Gòn)」は日常的に使われており、会話の中や、新聞などでもよく見聞きしますし、ホーチミン市に住む人たちのことを、「サイゴニーズ (Saigonese)」と表現することもあります。

他にも、商品名やビル名などにも、「〇〇サイゴン」などと名付けられているものをよく見かけます。

今回私がホー・チ・ミンについてのコラムを書こうと思ったのは、ホーチミンはベトナムの都市の名前で、実在する人物の名前だったということを知らない人もいる、ということを知ったことがきっかけです。

今少しずつ注目され始めているベトナムですが、ベトナムの歴史となるとやはり知らない人も多く、少しでもベトナムについて知って欲しいと思ったからです。

このコラムが少しでもベトナムを知るきっかけになってくれると嬉しいです。

Written by 平良弥生(ベトナム)

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