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日本人女性の情熱で実現!スペイン・バレンシアで着物展示会、古城で日本文化祭り

2024年5月24日
ホーゲデウア容子 (ベルギー)

ワークショップで浴衣を着て舞踊の所作の体験を楽しむバレンシアのお客様

スペイン人が夢中になる日本の着物文化

海外にいると「日本文化の紹介」が頻繁に行われていて、関心の高さを感じることも少なくない。

私の住むヨーロッパは日本との国交の歴史が長いためか、歴史ある日本の伝統文化に大変興味を持つ人が多いと感じる。

そんなヨーロッパの中でも、スペイン・バレンシアの日本熱がかなり熱い!

スペインはおしゃれでカラフルなファッションが有名だが、バレンシアには2012年に設立された「バレンシア着物クラブ」がある。

スペイン人中心のクラブで、振袖、友禅といった華やかな着物から無地の着物まできちんと着こなす本格派だ。

クラブのメンバーたちは、多種多様な着物、帯、小物を、季節やTPOに合わせて組み合わせる独特で奥深い文化にすっかり魅了され、少しずつ揃えたコレクションを展示して、多くの方々に着物の魅力を知ってもらいたいと思うようになった。

2020年9月に展示会「Kimono−伝統からモードへ」を開催すると決め、日本の公的機関にも支援を依頼、15世紀に設立されたヨーロッパ最古のシルク・ギルド(手工業組合)の本場の提供を受けるなど、順調に準備を進めた。

そんな中、2020年の春にコロナ禍で世界中が混乱に陥る。日本の外務省は、海外で開催される日本文化イベントへの支援をすべて停止することを決定してしまった!

 

コロナ禍に阻まれ、開催までの苦しい道のり

イベント会場となったクリェラ城の関係者たちとクリェラの副知事

スペインは他の欧州諸国と同様に、コロナ禍最初の年は厳しいロックダウンを敢行したものの、2021年に入ってからは徐々に規制を解除。

それを受け、バレンシア着物クラブの展示会は、2021年秋には開催できる見通しとなったのだが、日本ではまだまだ厳しい規制の真っただ中。日本政府の海外での日本文化イベント支援もストップしたままだった。

会場のシルク博物館からは、「コロナで博物館への入場者収入が激減して運営が厳しいので、展示会の経費を日本政府や日本企業が負担してくれないだろうか」と打診された。

また、バレンシア着物クラブのメンバーからは、「なぜ日本文化のプロモーションなのに、日本関係各所からまったく賛同を得られないのか?」という声が上がった。

バレンシア着物クラブの数少ない日本人メンバーの佐藤美季さんは、在スペイン日本大使館勤務の経験もあったことから、日本政府や企業からお金を集めることがいかに困難であるかが分かるだけに頭を抱えた。

「折角の企画を中止にするわけにはいかない、どうしたら良いのか?」

 

日本人女性の情熱が政府や企業を動かした!

バレンシア着物クラブ、見学者の方々、みんな日本が大好き

悩みを抱えているところ、たどり着いたのがクラウドファンディング!

Club HouseなどのSNSでの発信を通じて、理解や賛同を示す方々の支援を受け、80万円のクラウドファウンディングに見事成功!

また、在バルセロナ日本国総領事館や国際交流基金マドリード日本文化センターから、後援名義を頂けることになった。こうして信用を高められたことで、バレンシアの日系企業やスペイン企業から寄付も集まった。

2021年10月に無事開催された展示「Kimono―伝統からモードへ」は好評を博し、当初3か月間の開催の予定が6か月のロングランへ!

入場者数は当初予想の約2000人だったのが、蓋を開けてみると、約1万8000人と実に予想の9倍となった。

シルク博物館への場所代、イベント運営費、日本の若手アーティストの作品展示費用は、クラウドファンディングや企業からの寄付金と予想を大幅に超える入場料収益ですべて賄うことができた。快挙!

私は佐藤美季さんの心意気にすっかり心打たれてしまった。

人はどこに住んでも、少なからず、土地の性質が自分の個性の一部になる。彼女は情熱のスペインにふさわしい情熱の日本人になったのかもしれない。

次のページ日本と海外の架け橋「日本文化海外サポートセンター」

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