涼やかな季節になりましたね。今回は読書の秋と芸術の秋をいっぺんに味わえるお得な本を紹介します!
それがこちらの本「ダイオウイカは知らないでしょう」、著者は西加奈子さん・せきしろさんです。
直木賞作家の西かなこさんと構成作家のせきしろさんが、毎回ゲストが出すお題に沿った短歌作成に挑戦する1年半の記録です。
皆さん、短歌ってどういうものか覚えています?
短歌は和歌を由来とした「五・七・五・七・七」の31文字からなる定型詩です。
似ているものに俳句・川柳がありますが、基本的な特徴を説明すると下記のようになります。
【俳句】五・七・五の17文字の定型詩。季語を含めて風景やものごとを表現。
【川柳】五・七・五の17文字の定型詩。季語を含める必要はなく自由に表現。サラリーマン川柳やシルバー川柳などその時代を反映した句が多いのも特徴的。
【短歌】31文字の定型詩。季語を含める必要はなく感情や物語を自由に表現できるのが特徴。
俳句と川柳は一句と数えますが、短歌は1首と数えます。百人一首は100人の歌人の短歌を一首づつ選び集めたものですね。
国語の授業で習う有名な短歌といえば、石川啄木の、
「はたらけど はたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざり ぢっと手を見る」
世代が反映されますが、私が子供の頃に一世風靡したのは俵万智さんの、
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」です。
聞いたことあるという方も多いのではないでしょうか。
そんな短歌ですが、実は西加奈子さんも、せきしろさんも初心者ということで右も左もわからないところからスタートします。
西さんは本人曰く「締め切りは必ずまもる”真面目ちゃん”やねん」というように字数を極力守りつつも、小説家ならではの世界観が見事に反映された短歌を次々に詠みます。
ストーリーの豊かさゆえに、言葉選びに四苦八苦することもありますがさすがの表現力!
一方のせきしろさんはWikipediaに書かれている人物内容、
「教育大学に入学するも朝起きられずに必須の教育実習をすっぽかしてしまい、全てを投げ出して山形県の温泉宿にて住み込みのアルバイトを始める」
という一文が全てを表しているように、大胆で自由(笑)。
チョコレートが何文字にカウントされるかわからないそうで、字余りや字足らずになったりするのですが、これまた目の付け所がとてもおもしろい。
お二人の短歌を少しだけご紹介します。
お題:空
「空と海どっちが偉い?ふわふわで暖かいからきっと猫だろ」西加奈子
お題:おしゃれ
「このTシャツのまま死ぬことはできない 着がえるまでは生きるしかない」せきしろ
お題:鳴る
「銅鑼鳴らす華僑の顔は晴れやかだ 僕は別れを告げられている」西加奈子
「自転車のベルを鳴らされすぐ避ける まだ鳴らしてる そういう人か」せきしろ
西さんのは一瞬でその場面に引き込まれ、まるでドラマをみているかのよう。
せきしろさんのは思わず笑ってしまいます。そして、自分もそんな時あるなって思い出します。
短歌ってなんて自由!なんて豊か!そう思わずにはいられません。
タイトルにある『ダイオウイカは知らないでしょう』の全文は是非、本書で確かめてみてください。
本書ではゲストを交えてそれぞれの短歌から読み取れる情景を推測したり、それにまつわるエピソードを披露したりと、テンポの良い会話が面白おかしく続くのも魅力です。
読み進めるうちに「自分の考えたことを短歌に現わせたら気持ちよさそう。言葉を探すの面白そう。」と思いはじめ、本を読み終える頃には「私も一首詠んでみようかしら。」となること間違いなしです。
その日にあった出来事を31文字で詠んでみる。そんな秋の夜長をすごしてみるのもいいかもしれませんね。
ちなみに私が今日の一首を詠むとしたら、
「読みだすと想像やまず ブックレビュー 提出期限を3日も過ぎた」です。
優しく待ってくれた編集長に感謝をこめて!
Written by 周さと子(マカオ)