7月に入り、息子の通うインターナショナルスクールも無事に学年末を迎えた。
新型コロナで学校に通えない時期もあったが、最後の2ヶ月はまた登校できるようになり、終わってみれば、「今年も親子共々がんばった」という思いになったのは例年通り。
今年はクラスペアレント、クラスのお世話役を引き受けていたので、先生へのギフトのアレンジも無事に完了することができ、ほっとしている。
学年末には人それぞれ感じることがあると思うが、インターナショナルスクールの家族にとっては大きな環境の変化を意味することが多々ある。
数年単位で引っ越しをする家族が多いため、学年末が区切りになりやすく、本帰国や異動で次にいつ会えるか分からない別れとなることがある。
そういうこともあり、息子が中学生になり毎日の送迎はなくなった今も、初日や最終日はできるだけ学校に行くようにしている。少し離れたところから見守っていると、どんどん成長する子供たちの姿に感心しきりだ。
何より子供たちが出てくるのを待ちながら、久しぶりにママ友・パパ友たちと話すのが楽しみだ。
「How are you?」から始まる近況報告。だいたいいつもGoodなので私はこの質問が苦手なのだが、大切なのはその先。
4年連続で同じクラスだったのでかなり仲良くなったイタリア人ママ友が「そういえば…」という感じで切り出した。
「私、8月にイタリアに帰るの」「ホリデーだよね?」「そうじゃなくって…、仕事が決まったの」かなりの驚きだった。
彼女自身オランダにはもう20年程住んでいて、夫はオランダ人。インター校では少数派の引っ越しの可能性が低いグループに勝手に分類していた。
「どのくらいイタリアにいるの?」「とりあえず1年。イタリアで教師として働くの」
彼女が以前から、オランダで教師の職を得るために就職活動をしていたのは知っていた。イタリア語教師だとそもそもポストがほとんどないから、歴史教師でトライするつもりだと言っていた。
しばらく会っていないうちに、こういう展開になっているとは想像もしていなかった。
「子供たちはどうするの?」「二人とも連れて行きたいけど、長女だけ一緒に行くことになったの。長女はフレキシブルな性格だから楽しみにしてる。次女は今の環境から変わりたくないと言うからそれを尊重する」
次女は息子と仲が良いので何となくほっとしたが、彼女の決断の大きさと突然の報告に言葉がうまく出てこない。
「私はもう20年ここで頑張ったから…」「そうだね、もう子供も大きくなったし、今度はあなたの番だよ。うまくいくといいね」と私は心の底から思いながら言った。
とっくに出ていた息子が少し離れたところで待ちぼうけている。「この後、合気道教室の見学なの」「私も今日までに長女の入学申込みを終わらせなきゃいけないのよ」
私たちは慌ただしく別れを告げた。コロナルールでハグすることもなく。希望と不安と祈りが入り混じったような気持ちが私の中に残り香のように残った。
インター校ではどちらかの親、たいていは父親の仕事に伴って家族全員が海外引っ越しをする家庭が多いので、実は自分のキャリアについて悩んでいるママ友に出会うことが少なくない。
みんな何不自由ない生活をしていて、とても幸せそうに見えるのだが、ちょっと仲良くなって深い話をするようになると、「私だけじゃないんだ」と意外な気持ちになる。
自分の国に住んでいたら、言葉や文化で大変な思いをすることもないし、やりたいことも実現しやすいだろう。仕事も選り好みをしなければ見つかるだろう。
そんな考えのループに陥ってしまう時もあるかもしれない。でもそういう思いに囚われているうちはなかなか前に進むことができないように思う。
私はポジティブに色んなアクションを起こす周囲の人たちにとても影響を受けた。
とにかく決断して行動することが大切だ。実行するということにはもちろんリスクが伴うが、大抵のことは大したことない。やらずに後悔するダメージの方がはるかに大きい。
どんなことでも行動を起こすことで経験値を得られ、いくつになっても成長することができる。一度の人生、自分がやりたいことをやるべきだ。
だから、ティーンエイジャーの母親である彼女の決意を祝福したい。数年後、お互いまた一段と逞しくなってワインで乾杯できたらと思っている。
Written by 藤村ローズ(オランダ)