マイナス40度まで気温が下がるカナダ・オンタリオ州の郊外では、越冬に薪ストーブが欠かせません。
10年前に郊外に引っ越してきた時、主人はすぐに薪ストーブを買いたいと提案しました。
しかし、当時の私は「薪ストーブなんて危険そうだし、ただでさえ忙しい毎日なのに毎日使う薪を外から運び入れるなどやることがさらに増える」と考えただけで、全く気が進みませんでした。
ところが、郊外に住み始めて数年後にプロパンガスが2倍以上に値上がりしたことで、我が家も薪ストーブを購入することに。
仕方なく承諾した私でしたが、実際に使ってみると思ったより複雑でもなく、何よりも、燃える炎に癒しの力があることを発見し、以来薪ストーブの愛用者となりました。
今回は薪ストーブの機能性や魅力、着火のコツなどについて、お伝えしたいと思います。
燃料となる薪は広葉樹のみ
薪と言えば、皆さんは暖炉を思い浮かべるかもしれませんが、モダン薪ストーブは鋳鉄製の密封したボックス型で、気密性、加工性に優れていて、1000℉(538℃)以上のかなりの高温にも耐性を示す、極めて優秀な暖房器具です。
炉面も大きく、並び方にもよりますが、直径10㎝~15㎝、長さ40㎝~50㎝の薪が4〜5本が入ります。
上部の過熱面も広いので、煮込み料理やお湯を沸かすこともでき、多目的に使用できます。お湯を沸かすと加湿器の代わりにもなるので、ストーブで乾燥するお部屋には一石二鳥です。
ストーブの扉の真下に空気の流入口があり、空気の量を調節することで温度調整ができます。うまく温度調整をすれば、一日2回分の薪を燃やすだけで家中がポカポカに。
空気の温度を上げるエアコンと違って、壁や床などが暖められた後、室内の空気が熱せられることで底冷えしにくくなるため、外はマイナス20度でも家の中では半袖でも暑いくらいの温度を保つことができ、一晩中お部屋を温めてくれます。
ストーブに使う薪の調達ですが、大抵は薪の販売業者から注文します。
また、「燃料となる薪は広葉樹でなければいけない」という厳密な決まりを守らなくてはいけません。建築資材に使う松や杉などの針葉樹は密度が低いため、燃焼温度が高くなってしまい、ストーブを傷める原因になってしまいます。
広葉樹も切ってすぐに使えるわけではなく、一年ほど放置して乾燥させる必要があります。
ストーブの前はワンちゃんたちのVIP席
薪の並べ方には、主人と私でそれぞれのこだわりがあります。言い合いになることもしばしばですが、その都度担当する人が自分のやり方でやるという暗黙のルールができました。
私は空気の流入口を塞がないように炉面の両端に一本ずつ並べ、その上に反対方向で詰められるだけの薪を入れます。流入口からの空間には樹皮や新聞紙を置き、火を着けます。
樹皮や新聞紙の炎が流入口からの空間に閉じ込められ、流入口から炎を煽ぐ空気が入ってくるため、薪全体に速く火が移ります。
私と違って、主人は空気の流入口関係なく薪をびっしり詰めるので、火が着くまで1時間かかる場合もあり、寒がりの私は今か今かと首を長くして待たなければいけません。その代わり、一旦火が着くと長時間燃えるので、途中で薪を追加する必要がありません。
どちらにしても、一旦火がついたら800℉(425℃)まで上げてから、空気の流入口を少し閉めて600℉ (315℃)前後に保つように調整すると、室温が20℃前後に保たれ、薪が跡形もなくキレイに燃え切ります。
今年も薪ストーブを使うシーズンになりました。ストーブの前はワンちゃんたちのVIP席で、ストーブからの熱を堪能しながら床でゴロンと寝ています。
真っ白の雪景色を背景にクリスマスツリーのライトが光る中、熱いコーヒーやお茶、ホットチョコレートを片手にストーブの傍でリラックスする至福のひととき、このシーズンのささやかな愉しみです。
Written by 林いくえ(カナダ)