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全米をネットワークする旅客鉄道「アムトラック」田舎の駅と都会の駅のちがい

2022年6月8日
スペイツ由美 (アメリカ)

アメリカは本格的な夏休みの始まり

5月から6月にかけて、ほとんどのアメリカの学校は学年末を迎えます。そして5月の月曜日Memorial Dayのホリデーを皮切りに本格的な夏休みの始まりです。

Memorial Dayは戦争で亡くなった人たちへの追悼をする日で、Federal holidayと言って国の定めた休日になります。

アメリカにある10個のFederal holidayの中で、このMemorial Dayと7月4日の独立記念日Indepence Day、そして夏休みの終わりを告げるような、日本でいう勤労感謝の日であるLabor Dayが9月の第一月曜日。

この3つの夏のホリデーを使って家族が集う、また旅行にいくなどの予定を立てる人たちは多いことでしょう。大都市を始め、それぞれの地域ではお祭りやパレードが開催され、花火が打ち上げられます。

2020年から約2年間、コロナの影響で人々が集う機会の多くが中止されたので、だいぶ落ち着いてきた今年のホリデーはさぞかし賑わうことでしょう。

昨年「結婚式にご祝儀を持っていかないアメリカ」でも紹介しましたが、結婚式もまた、この夏のホリデー休暇を前後に含むように計画される人々が多いのです。

みなさんもご存知の通り全米50州からなるアメリカ合衆国は、移動するだけでも長距離。例えば一口にアメリカを横断すると言っても交通手段にもよりますが、約4000キロから6000キロを旅することになるわけです。

遠くの州から結婚式に呼ばれた場合は、飛行機での移動はもちろんですが、結婚式に参列するという目的を含めたバケーションで旅をする人たちも少なくありません。

そんなことも含めて、コロナの規制が大きく緩んできた今年の夏は、多くのアメリカ人が国内外を旅することでしょう。

 

全米をネットワークする旅客鉄道

カラマズーの駅と車内の様子

日本やヨーロッパに在住の世界ウーマンたちとコラム会議などでみなさんとお話しますと、アメリカの国土の広さが度々話題になります。

ミシガン州を南北に移動するだけでも約446キロあるわけで、日本でしたら東京から京都までの距離に近いです。

縦長のカリフォルニア州に至っては、南北が日本の本州がすっぽり入ってしまうほどの大きさです。それが一つの州なのですから、やはりスケールが大きいです。

さて、前置きがずいぶん長くなりましたが、今回のテーマ「アムトラック」に入りましょう。

アムトラックは全米をネットワークするアメリカの列車旅客サービスで、シカゴを中心とした長距離線ネットワークで、ボストン~ニューヨーク~ワシントンDCの東海岸路線、西海岸の縦断ルートなど全米中を運行しています。

アメリカ東海岸のニューヨークから、アメリカ西海岸のロスアンジェルスまで飛行機でひとっ飛びもいいですが、時間をかけてアメリカ大陸の大きさを肌で感じるには、ドライヴやアムトラックでの旅も印象深いものだと言えます。

私が住んでいるミシガン州のKalamazoo(カラマズー)にもアムトラックの駅があります。シカゴに行く時にはこの駅からアムトラックに乗ります。駅にはちょっとした売店とピザ屋さん、ホットドック屋さんなどがあります。

アムトラックの駅は全米で542駅あるそうですが、多分多くの駅はカラマズーのようにこじんまりとしたものだと思います。

マンハッタンにあるPenn Station

それに比べて大都会のニューヨークシティ(マンハッタン)にあるアムトラックの駅 Penn Stationは、とても近代的な雰囲気が漂う駅でした。週末にこの駅を訪れたこともあり、Penn Stationは学生たちや家族連れで賑わっていました。

ニューヨークでショッピングをしてたくさんの荷物や紙袋を抱えている人、恋人と待ち合わせをしているような人、この駅を通ってJFK空港へも行けることもありビジネストラベル風の人など、旅にはドラマがありますね。

駅の構内には、洒落たお花屋さんやカード屋さん、スタバやスイーツ屋さん、イタリアンカフェやバー、レストランもあります。これは田舎のアムトラック駅とは雲泥の差。

電車出発前には構内アナウンスが流れますが、このアナウンスも機械音声のようなアナウンスで、近代的な雰囲気がしました。

 

人間味が溢れるアムトラック独特の雰囲気がいい

左:Penn Station、右:全てはこの掲示板が頼り

ただ、サービスは田舎のアムトラック同様。日本の新幹線のように1秒の遅れもないような正確さはなかったです。このいい加減さは実はアムトラックのいいところかも。日本人からすると、かなりワイルドですよ。

電車が遅れている時には、掲示板に”Delayed”の表示が出ます。どのくらい遅れているのかしらとカスタマーサービスに聞きに行ってみると、「まだわからないわ。あと15分くらいしたら掲示板に出るわよ!はい次の人!」との答えが返ってきました。

”Delayed”の電車に乗る予定の人々は、掲示板の前で次のお知らせが出るのを待っていました。いつ来るのか?どのプラットホームから乗るのか?全てはこの掲示板が頼りです。

駅やアナウンスは近代的でも、カスタマーサービスのおばちゃんは、私の知っている田舎のアムトラックのおばちゃんと同じ感じでした(苦笑)

トランシーバーを持ったおばちゃんが、大きな声を張り上げて「ここに並んで!今からホームに順番に降りていって!左側の電車があなたたちの乗る電車よ!!」

アムトラックは指定席ではありません。ファーストクラスも普通車も自由席。ですから、席は早い者勝ちで取れます。

このテクノロジーの進んだ世の中でも、指定席がない早い者勝ちのアムトラックのアナログさが不思議ですが、面白いと思いました。もしかしたら、アナログな人たちが混乱しないようにわざと昔のやり方を残しているのかもしれませんね。

近代的なニューヨーク・マンハッタンでのアムトラック駅を見ていてそんな風に感じました。

駅や人々の様子は田舎とは大違いでしたが、アムトラック独特の雰囲気は人間味が溢れていて、少しいい加減で、その様子は田舎と同じでした。都会のアムトラック駅を訪れて、少し懐かしく安心した、田舎から来た私です。

Written by スペイツ由美(アメリカ)

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