夏ですね。マレーシアでもさまざまなインターナショナルスクールが徐々にホリデーに入り、子供は1,2ヶ月間休みになることから、現地日本人は2年ぶりに日本に一時帰国する準備を始めています。
以前のようなイベントも行われるようになり、クアラルンプールでも、7月16日に盆踊りイベントが開催されます。
マレーシアでの文化交流を目的に、1977年からはじまった盆踊り。3年前にジョホールバルで行われた盆踊りには、1日5万人、2日間合計で10万人もの人が参加しました。
このイベントでは日本と同じように櫓が設置され、地元の屋台などが出店し、和太鼓やゲストのパフォーマンスなども盛大に行われます。
日本人会が浴衣の貸し出しや着付けボランティアをすることで、マレーシア人も浴衣を着ることができ、セルフィーを撮って、ダンスすることを楽しんでいました。
コロナの期間の2年間は開催できなかったので、久しぶりに楽しみにしている方も多いことでしょう。日本好きのマレーシア人はみんな集まるイベントと言っても過言ではありません。
左:今年の告知用ポスター、右2枚:3年前にジョホールバルで行われた盆踊りの様子
ところが。
宗教問題(イスラム教)担当大臣の偉い方から、「盆踊りは仏教の宗教的イベントなので、イスラム教徒は参加しないように。ポスターにイスラム教徒女性の絵を使うのもけしからん」的な発言が出たので騒然。
私たち日本人からしても、信仰心から参加しているつもりもなかったので、びっくり発言でした。当たり前のように文化交流だと思っていたし、1977年からほぼ毎年行われてきたイベントです。いまさら感があります。
この発言がニュースになると、コメント欄も大盛況。
7割くらいの方は「ナンセンス」という意見ですが、3割くらいのムスリムは「確かにルーツを辿ると宗教的イベントだ」「ムスリムは行くなと言っているだけで、他の人が参加するのを邪魔するつもりはないから問題ないだろう」などという意見。
この顛末を見守ってきましたが、コメントでは「盆踊りの名前を日本文化祭などに変更したら良いだろう」「他国のイベント名を改称しろというのは侮辱であって傲慢だ」「外国のイベントに信仰心を揺らがされるほど私たちの信仰心は弱いのか」など、湧いていました。
その後、開催地であるセランゴール州の王様が、セランゴール州イスラム局にイスラム教徒の祭りへの参加を禁じないよう命じました。
そして、シャーアラム市役所の職員が盆踊り大会に参加し、このイベントの実像を知り、イスラム教徒の信仰を損なわないことを確認することも提案しました。
盆踊りがだめならこれもだめでしょうか?
いい落とし所ですね。日本大使館でも、「これは文化交流を目的にはじまった」という旨の広告を掲載。
マレーシア統一民主同盟(Muda)の創設者は王様の発言に賛同し、「盆踊り大会に参加して自分の目で確かめるべきである」と語りました。
「結論を急ぐな。マレーシアと日本の関係を悪化させる。我が国の強さは多様性にある。文化の違いで団結を崩すわけにはいかない」と述べました。
一件落着すると思われましたが、王室の非難にかかわらず、イスラム教団体と女性委員会は再び「この祭りは仏教の儀式の要素があり、信仰を揺さぶる可能性がある。イスラム教徒はこのイベントに参加すべきではない」と声明を出しています。
さあどうなることやら。盆踊りは7月16日。私は一時帰国中なので、日本から見守りたいと思います。
Written by 土屋 芳子(マレーシア)