グアヤキルにいる日本人の友人のピンチヒッターで、「BUDOKAN」というエクアドル版コミケの出展ブースで、エクアドル人の名前を日本語で書くアルバイトをすることになった。
まだまだスペイン語を勉強中の私には、現地の人とのコミュニケーションが心配だったが、面白そうなのでやってみることにした。
そしてこの経験が、日本では理解できなかったアニメと漫画の魅力を改めて気付かせてくれる経験になったのでここで共有したいと思う。
会場はグアヤキルの数少ないホットスポット、マレコンにあるコンベンションセンター。
酷暑の中、多くの人が集まり周辺は車が動かないほどの大渋滞。家で過ごすことが多く、普段から人の少ない時間に出かける私にとって、こんな大規模イベントは初めてだ。
人の多さもしかり、アニメファンがこんなにグアヤキルにいることを知ってびっくりした。
会場のディスプレイや参加者のコスプレ姿は日本のアニメが主で、スパイダーマンやキャプテンアメリカなどはチラホラと目に入る程度。
普段は日本との強いつながりを感じないグアヤキルで、日本を意識した装飾や「ドラゴンボール」「鬼滅の刃」「ONE PIECE」などのコスプレをした人やポスター、フィギュアを見ると、嬉しいのと同時に不思議な気持ちになった。
会場を見渡しての主観だが、やっぱり「ヒーロー」「善と悪」「勇気と成長」「友情」など、強いキャラクターとストーリー性を持ったアニメが人気のようだ。
「ちびまる子ちゃん」「サザエさん」「クレヨンしんちゃん」などの、日本人だから理解できる「ゆるさ」のあるキャラクターは全く見かけなかった。
一番多いと感じたコスプレは、私も珍しくはまってしまった「鬼滅の刃」の炭次郎と禰豆子だった気がする。
会場に集まったコスプイレヤーたちは写真撮影のための声をかけると喜んでポーズを決めてくれて、時折、神神しさを感じさせるオーラを放つ人もいた。
凝ったコスプレをしている来場者のいる中、私の目を惹いたのがメイド服を着た男性たちだった。
日本だと、「メイド服を着るならメイドに近づけたい!」とヘアメイクにこだわりそうなものだが、その男性達からは「かわいく」とか「おもしろく」見せようという小細工は感じられず、「好きだから着た」という理由だけで着用しているようだった。中には前のボタンが閉まらず、厚い胸板をはだけてきている人もいる。
仕事中に見かけたため写真は撮れなかったが、日本ではファンタジーや非日常のカテゴリーに入るメイド服を、お気に入りのTシャツ感覚で着る彼らから、「人の目は気にせず、好きなものは好きでいい」という潔さと無邪気さを改めて学んだ気がした。
夕方になると、ステージ上の大画面に日本の人気アニメの映像が映しだされ、歌手がスペイン語と流暢な日本語でアニメソングを歌い、オーケストラが曲を演奏するなどして会場はさらに盛り上がった。
人気の曲が流れると、ステージに向かって一気に人の流れが動き出す。それに合わせて合唱している来場者もいる。
グアヤキルで日本語を話せるエクアドル人にはほとんどと言っていいほど会ったことはないが、「日本のアニメソングを歌える人がこんなにいるのか」ととても感心した。
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