エクアドルの食文化もスペイン語も知らないままエクアドルに渡った私。主婦となり、食料品の買い物全般は私の仕事になったものの、スーパーに行ってもパッケージの見た目に頼って買い物をし、失敗することがよくあった。
バナナもその失敗例のひとつで、「こんなに大きくてしっかりとしたバナナがこんなに安い!さすがエクアドル!」と喜んで買ったら、後から食用バナナと知り、調理の仕方に戸惑うこともあった。
エクアドルでの暮らしに慣れて地元料理を食べる機会が増えるにつれ、食用バナナを使った料理に出会う機会も多くなった。エクアドルにはとにかく食用バナナを使った食事が多い。
食用バナナはスペイン語では「プラタノ」と呼ばれる。プラタノは普通のバナナよりも大きく、どっしりと重みがある。
お店に行くと、大体「マドゥーロ」と呼ばれる黄色、「ヴェルデ」と呼ばれる緑色の二種類が、房単位ではなく1本ずつ分けられて売られている。
作る料理や好みの熟れ具合によって選ぶ。価格はだいたい1本30セントくらい。スーパーではなくて、メルカド(市場)に行けばもっと安く手に入るのかもしれない。
今回はエクアドルの数ある食用バナナ料理の中から、地元で広く愛される、朝ごはん&スナックの一部をを紹介したい!
左:ボロン、右上:ティグリージョ、右下:トルティージャ・デ・ベルデ)
蒸したプラタノをつぶして、豚肉やチーズと混ぜ、ボール状にして油で揚げたもの。店舗によって大きさの違いはあれど、大体、野球ボールからソフトボールくらいの大きさ。
カジュアルに出来たてを紙皿や袋に入れて売っているところもあれば、オシャレなカフェに行くと、チーズソースや「アヒソース(ピリ辛ソース)」がトッピングされ、おしゃれに変身したボロンが出てくることもある。
あまり熟していないヴェルデのプラタノを使ったボロンは「でんぷん感」が強く、私はあまり好きではなかったが、マドゥーロのプラタノで作ったボロンは美味しく食べられた。
形のせいもあるかもしれないけれど、「ボロンはエクアドル人にとって、おにぎりのような存在」だと私は思っている。
ゆでたプラタノをつぶして、玉ねぎやチーズ、豚肉と炒めて塩コショウで味付けしたもの。アヒソースがついてくることもある。言われないと気が付かないくらい、食感がポテトと似ている。
こちらもカフェなどにいくと目玉焼きがついてきたり、チーズがついてきたりする。
蒸したプラタノをつぶし、中にチーズを挟んで焼いたもの。円形状のものや、エンパナーダのように半月型になったものなど、形はさまざま。中のトロトロのチーズとフワフワの生地のハーモニーがたまらない一品。
「今日はボロンやトルティージャの気分じゃないな」と思った時に注文する、プラタノを使った軽めの朝ごはんだ。
近所のボロンやティグリージョの人気店は朝の6時頃開店し、昼過ぎの1時にはもう閉店している。週末の朝は店先のテーブルは満席になり、行列ができていることもある。
左:パタコン、右上:チフレ、右下:マドゥーロ
パタコンはぶつ切りにしたプラタノを、蒸したり、焼いたりして柔らかくした後、包丁の腹などでつぶし、さらに油で揚げたもの。
チフレと違い厚みがあって、「モチっ」とした食感だ。ただし、日本人の求める「モチッ、フワッ」ではなく「モチッ、モサッ」とした食感だ。
塩をまぶしたり、チーズをのせてクラッカーのように食べたり。食べ方はひとそれぞれ。スープや好みのソースに付けて食べることもある。
2年前、エクアドルで初めて入ったレストランで、注文後におつまみとして出てきたのがチフレだった。チフレは簡単に言うとバナナチップス。
日本で売られているバナナチップスは、バナナの甘さを引き立てたヘルシースナックのイメージだが、チフレは薄切りにしたプラタノをカリカリに油で揚げたもので、塩やチリパウダーで味付けされた、カリカリの触感が癖になるスナックだ。
大型スーパーではたくさんの種類のチフレが並んでいる。レストランでは大体「セビーチェ」や「エンセボジャード」というスープについてくる。ちなみに「ピカンテ(ピリ辛)」味のチフレは、夫の晩酌の際の定番おつまみになった。
熟したプラタノをスライスして焼いたもの。調理の仕方によって、ほのかに甘酸っぱかったり淡泊だったり。エクアドル料理レストランでは注文するとライスのそばに添えられていることが多い。
日本人の私としては、「これはオカズ?それともデザート?」といまだに迷ってしまう一品だ。ちなみに私は酸味のある甘さのマドゥーロが好きだ。これも、どの熟成度のプラタノを選ぶのかによって味に違いが出てくるのだろう。
プラタノを使った料理は硬い皮から実を取り出して、蒸したり、焼いたり、潰したりと手間のかかる料理だ。美味しいけれど、手間がかかる。
しかし、プラタノの存在なしではエクアドルの食生活は語れないほど重要な食べ物だ。
エクアドルで愛されるプラタノ料理。これからもたくさんの美味しいプラタノ料理を楽しみたい。
Written by マットン美貴子(エクアドル)