ASEAN諸国の中で似た文化を持つ国はいくつかありますが、インドネシアとマレーシアも、まるで双子のような文化を持っています。
言語や食文化は特にそっくりですし、マレーシア国内のマレー系の人たちとインドネシア人は顔立ちも似ています。
そんなそっくりなインドネシアとマレーシアですが、この二国の関係性は複雑な歴史をたどってきました。
マレーシア人の方たちにお互いの国のことをどう思うか聞いたことはありませんが、インドネシア人たちのマレーシアへの思い、また彼らの持つマレーシアに対する印象の変化など、私自身がインドネシアで長年暮らしてきて、見聞きしてきたことを今回のコラムに綴ります。
東南アジアに限らず、隣国同士というのは、その地理的関係や、植民地時代の宗主国同志の関係など複雑な問題が絡み、仲が良くない国が多い印象です。
日本とその隣国、またインド周辺などにもれず、インドネシアもマレーシアと過去に微妙な関係にありました。
マレーシアはイギリス領、インドネシアはオランダ領でしたが、それぞれ独立後に、パダン島とギリタン島がどちらの国に属するかで対立し、最終的には国際司法裁判所の判断で、この両島はマレーシアの領土になりました。
マレーシアもインドネシアも、石油や天然ガスが主要産業なので、領土問題はとても大事です。
また、第二次世界大戦後に、宗主国のイギリスによりマレーシア連邦が作られましたが、インドネシアのスカルノ大統領はこれに反発したと言います。
この時スカルノは「ナショナリズム的思想だ」と世界的批判を受けたようですが、スカルノとしては「旧宗主国が独立後もまだマレー半島に干渉するのは許せない」という反発だったそうです。
このように歴史を見ても、古くからインドネシアはマレー半島に対する「思い」や「考え」を持っていたようです。
二国とも独立後成長を遂げてきましたが、現代になっても様々な問題が起こりました。
例えば、同じ時期に独立した二国ですが、マレーシアの方が経済的に発展が速かったこと。
最近ではインドネシアの首都ジャカルタもかなり発展し、隣国のマレーシアやシンガポールとさほど変わりませんが、十数年前までは首都の様子を見ても、明らかにマレーシアの方が発展していました。
また、見た目でなく数値で見ても、長年マレーシアのGDPの方がインドネシアよりも一人当たりの数値が「豊か」でした。
インドネシア側の感覚では過去に領土も獲られ、国の成長もより速かったマレーシアに嫉妬心もあったのでは、と言われています。
さらに、似た文化を持つ両国なので、言語や伝統芸能(バティックなど)で、「これはインドネシアのものだ」「これはマレーシアのものだ」と、争いも多々起きてきました。
追い打ちをかけるように、2017年マレーシアで開催されたSEA games (東南アジア競技大会)で、開催国マレーシアがインドネシアの国旗を上下反対にパンフレットに掲載するという「事件」もあり、インドネシア国民の反発を買いました。
サッカーの国際試合などでは、インドネシア・マレーシア戦は、日韓戦と同じくらい盛り上がります。
出典:www.insertlive.com、www.sparrowsph.my
そんなまるでライバルのような二国ですが、文化面で両国の架け橋となっている人たちがいます。
一組目はマレーシア出身歌手のSiti Nurhaliza です。1990年代からインドネシアに進出し、多くのインドネシア国民のハートをつかみ、現在でもインドネシアで楽曲を頻繁にリリースし今もなお人気です。
そして二組目は、マレーシアのアニメの主人公 Upin & Ipin。マレーシアのごくごく普通の家庭の双子の男の子たちと、その友人や家族、近隣住民が繰り広げる日常を描いたこのアニメがインドネシアで大ヒットしました。
老若男女、インドネシアでUpin & Ipinを知らない人はいないのでは?と思います。
先述の事情から、マレーシアにあまり良い印象を持っていなかったインドネシア人の友人は、このアニメを見てからマレーシアに対する印象が良い方に変わったと言うほどです。まさに国際親善大使なみの効果です!
インドネシア在住なので、どうしてもインドネシア側の事情の方が詳しくわかりますが、マレーシア国内でもインドネシアの文化、特に音楽が人気というニュース記事を見かけます。
インドネシアでマレーシアの歌手やアニメが愛されるように、インドネシアの娯楽文化もマレーシアの方たちに受け入れられたら嬉しいですね。
隣国同士、問題は大小あるかもしれませんが、今後とも仲良く良い関係が続くといいなと思います。
Written by 杏子スパルディ(インドネシア)