4月1日から、いよいよ今年のラマダンが始まった。ラマダンとはイスラム歴の9月で、よく知られている断食以外に、感情を抑えたり信仰心をより高める、神聖な一か月になります。
世界最大のムスリム人口がいるインドネシアでは、ラマダンの一か月は国の大部分が一つになり、この断食月を迎えます。
他のイスラム教徒の多い国々と同じ又は似ている部分、違う部分があるかと思いますが、今回のコラムではインドネシアのラマダン中に多く消費されるアイテムを紹介します。
通称「断食月」のラマダンですが、「食べる楽しみ」も大きい一か月です。一日の断食を終えて、家族や仲間と迎える断食明けの食事は、インドネシア人ムスリムにとって大切なイベントです。
一か月続く断食ですが、これを一人でするのはとても大変ですが、家族、友人、同僚など仲間や、国民(の大部分)が一つになってするから辛さも軽減されるのではないかなと思います。まるで何かの大イベントです。
テレビ番組もこの時期は「今日の断食明けのメニュー」というテーマで料理番組が放送されたり、毎朝3時頃(夜中といっていい時間?!)には、賑やかなタレントさんたちが「今日のサフール」を盛り上げたりします。
サフールとは、夜明け前、断食を開始する前に摂る食事のこと。こういったテレビ番組は複数のチャンネルで放送され、テレビタレント以外にも、イスラム説法師のような宗教系タレントたちが出演しています。
ラマダンの初日の夕刻の断食明けは家族で迎えるという伝統を持つ家族も多く、就業時間を短縮する会社もあります。
左上:コランカリン、右上:シロップ、左下:ナタデココ、右下:デーツの山
そんな国民の大イベントであるラマダン月に、よく消費されるものを紹介します。これらの食べ物・飲み物は、インドネシアのラマダンの風物時と言えるでしょう。
まずは「シロップ」。
お店にずらりと並んだ瓶をご覧ください。日本のかき氷のシロップを想像していただけるといいと思うのですが、インドネシアではこのシロップを水で割って飲みます。
シロップの飲み方も色々とあり、水で割って飲むプレーンなもの、練乳も混ぜて飲むもの、更に刻んだ果物を入れるもの(Es buah)、そして一番の豪華版は、果物に加えて、ナタデココや「コランカリン」を入れて飲むものです。
これらを総称してエス(Es)と言いますが、Esの種類は本当に多く、中には発酵したキャッサバや、刻んだ食パンを入れるものもあります。
断食明けには重い食事をとらず、甘いシロップ、又はお茶とクルマ(kurma = デーツ) でお腹を慣らす人も多いです。シロップもデーツも一年中売られてはいますが、やはりラマダン中にはより多く消費されます。
断食月が終わるとレバラン(断食明け大祭=イード)を迎えますが、レバラン中に食べられるお菓子を各家庭で手作りします。ギフトとして日本のお歳暮のように売られるものも多く、これもラマダン~ラバランの「季節」の風景と言えます。
しかしインドネシアは小麦粉の輸入の約3割をウクライナからしているそうで、昨今の戦争の影響で価格高騰が話題になっています。
小麦粉と共に、食用油の価格高騰も問題になっています。インドネシアのあるウェブニュースでは、油の原料になるひまわりの多くはロシアとウクライナで生産される、と書かれています。
日常でも多く消費される食品が、ラマダンを迎えるこの時期に値上げとなっていることは、インドネシアの過程に打撃となっています。
断食月というとあまり食費がかからないように思いますが、この断食月こそ栄養価の高いものを食べたり、家族や仲間との食事が増えたりすることから、エンゲル係数が上がるのです。
断食をして食べない辛さを味わい、断食明けで食べる喜びも味わうのです。
様々な問題はありますが、誰が何といっても暦通りに始まってしまうラマダン。世界中のムスリムがピースフルなラマダンを迎えられるよう、願わずにはいられません。
Written by 杏子スパルディ(インドネシア)