オーストラリアではさまざまな種類のお酒を楽しむことができる。
世界中にファンを持つオージービール、オージーワイン。オーストラリア国内で親しまれているPale aleや、アルコール度数が結構高い「サイダー」と呼ばれるフルーツのアルコール飲料も数えきれないほどの種類がある。
そんな「お酒大国オーストラリア」のお酒に関する法律や規則が、実は日本のものとはかなり異なっているのはあまり知られていないかもしれない。
今回は、そんなオーストラリアのお酒事情を紹介したい。
まず、お酒の自販機はオーストラリアには存在しないし、スーパーやコンビニではお酒の販売はまったくなしということをご存知だっただろうか?
酒屋で買ったお酒を包装せずに持ち歩くと罰金を課せられる場合があったり、テレビやラジオでのお酒のコマーシャルは一切禁止されている。
オーストラリアのパブやクラブ、お酒を提供するレストランやカフェでホールスタッフとして働くにも免許が必要である。
RSA(Responsible Service of Alcohol)というこの免許は、一日講習に参加して、講習の最後に行われるテストに合格すれば取得できる。
オーストラリアの法律で定められた、アルコール摂取量の目安となる「スタンダードドリンク」などの知識や、アルコール摂取や提供にまつわる法律や罰則を学ぶ。
オーストラリアでは、酔っ払っている客にアルコールを提供すると店が罰金を課せられる場合があるため、RSA講習では酔っている客がお酒を注文してきた時の対応の仕方なども教えてもらう。
また、オーストラリアのパブやクラブには、バウンサーが常駐している。
バウンサーとはいわゆる警備員。店の風紀と安全を守るために雇われているバウンサーは、店内を歩き回りながら、店の風紀を乱す客や泥酔している客を厳しく取り締まる。
お酒が回って椅子でうとうとしたり、大声で騒ぎたてたりすると、バウンサーから退店を求められたり、最悪はつまみ出されてしまう。
パブやクラブの入り口にもバウンサーを据えて、入店してくる客のIDチェックをしたり、入店してくる客が酔っ払っていないかどうかを厳しくチェックするのである。
お酒に厳しいオーストラリアで、飲酒に関してカルチャーショックを感じたことは多い。
職場の忘年会の貸し切り会場に、ちょっと酔っ払って現れた私の女性ボス。
二次会に行く頃にはすっかり出来上がり、「Fワード」を連発しながら上機嫌で「レッツゴー、ビッチーズ!」と、声高らかに私たちをパブへと連れて行った。
が、案の定パブの入り口でバウンサーに入店を断固拒否されたボス。私達スタッフは難なく入店したのだが、度重なる入店交渉の甲斐もなく、入店拒否されキレたボスがバウンサーにFワード。
この瞬間、ボスの入店の望みは完全に打ち砕かれた。Fワードを連発しながら、バウンサーに背を向け立ち去るボスの姿が今でも脳裏に焼き付いている。
そして、かくいう私も、パブで一度やらかしたことがある。
以前、職場の仲間とパブで飲んでいた時のこと。酔いが回ってしまった私は、「ほんの10秒くらいなら大丈夫だろ…」と、テーブルに突っ伏した。
その瞬間、仲間の1人が私に驚愕の声を上げた。「おい!!そんなところで寝るなよ!!オレ達全員追い出されるじゃないか!!」
そして気がつくと私は、同僚が捕まえたタクシーに放り込まれ、一人で家路に着いていた。
日本とはかなり違うオーストラリアのお酒事情。お酒は節度を持って楽しまないと痛い目に遭うかもしれないオーストラリアなのであります。
Written by 野林薫(オーストラリア)