問:もしあなたが、オーケストラの一員となって楽器を演奏するとしたらどの楽器を選びますか?
ヴァイオリンを選んだあなたは線が細くで理知的。少しだけ神経質な面をもっているかも。
トランペットを選んだあなたは、単純明快。やる気満々のエース的存在。
クラリネットを選んだあなたは、好奇心旺盛で適応力があるけどたまに気まぐれ。
チェロを選んだあなたは、包容力とバランス感覚が最高!
トロンボーンを選んだあなたは、あけっぴろげな酒豪ですね?
ハープを選んだあなたは、正真正銘のお嬢様です。
どうでしょう?当たらずとも遠からずという感じではないでしょうか?
今回紹介する本『オーケストラ楽器別人間学』は「楽器の性能と性格が奏者の性格を表している」逆に言うと「人は自分にぴったりあった運命の楽器を選んでいる」ということをユーモラスに語ったエッセイ。
著者はオーボエ奏者で指揮者としても活躍中の茂木大輔さん。漫画のだめカンタービレの監修をされた方でもあります。
オーケストラ楽器に詳しい方であれば「そうそう!あるある!」なんてことが頻出かもしれません。
私のように楽器に詳しくない方でも十分楽しめます。というのも、この茂木さんがサービス精神に富んでいて、いろんな角度から楽器と奏者の相似性を考察していくからなんです。
楽器を選ぶに至った家庭環境や、楽器奏者別のデートの誘い方など、著者が考えるシチュエーションには楽器別の個性がしっかり出ていて笑えます。
後半は相似性の対象がマニアック度を増していくので、ついていくのが大変になるのですが、著者のオーボエ奏者たる表現衝動過多な面が出ているのかもしれません。
特に面白かったのは「有名人による架空オーケストラ」の3章。選んだ有名人にいったいどんな楽器がふさわしいかをその人の容姿や人柄、仕事ぶりなどから考えるというものです。
例えば、タモリさん。知的で冷静。求められれば騒ぎもするが、孤独を愛し目立たないところで重要な責任を淡々とこなして行く仕事人というポジションがよく似合うと考察。
その結果、絶対の信頼を得ている第2ヴァイオリンの首席奏者が最適との答えが導き出されます。
例えば、フーテンの寅さんこと、車寅次郎さん。定住を持たないそのライフスタイルは、実は全国津々浦々公演を行っているオーケストラ稼業には向いているそう。
集団になじまない気楽な性格は、ヴァイオリンではなく、また競争心やアピール欲も少ないので木管楽器も違う。度胸はなさそうなので打楽器、金管楽器でもなし。そうなると、泰然自若・唯我独尊のコントラバスがぴったり!となるらしいです。
戦国武将のあの3人はというと、、「鳴くまで待とう」の家康は、忍耐、冷静、執念のホルン。「鳴かせてみせよう」の秀吉は実行力、闘志、人望のトランペット。そして「殺してしまえ」の信長は指揮者に決まってる!だそう(笑)
それぞれの楽器の個性だけではなく、奏者に必要とされる技能まで知ることができて思わず感心してしまいます。
そして、その個性豊かな高技能エキスパート集団が一つの音楽を共に作り上げるオーケストラってめちゃくちゃ凄いものじゃない!?と改めて気づくのでした。
次回からのオーケストラ鑑賞は音色だけではなく、それぞれの奏者にも注目してしまいそうです。より楽しめること間違いなし!
文庫本の特別付録には、楽器別適正判別クイズもついているので自分にピッタリ合う楽器を見つけてみるのも面白いですよ。
楽器の知識と人間観察の醍醐味が味わえる1冊です。
Written by 周さと子(マカオ)