第1回ラテンアメリカビジネスフォーラム 2014年6月5日撮影 Photo by ruperto miller
持続的な開発目標(SDGs)のゴールの中に「ジェンダーの平等」が掲げられてから、女性の能力や可能性を広げるための取り組みがますます活発になっている。
私がエクアドルに渡る少し前から、日本では胸元に「SDGs」のピンバッジを着けているビジネスパーソンをよく見かけるようになった。
ピンバッジをつける意味は「SDGへの取り組みや認知拡大に貢献するため」と聞いているが、残念ながら世界経済フォーラムが発表した「2022世界男女格差(ジェンダーギャップ)報告書」によると、日本は146か国中、最下位の116位。
先進国の中で最下位で、特に政治と経済の分野で遅れているという。ちなみに1位はアイスランド、最下位はアフガニスタンだった。
そんな中で、エクアドルの順位は41位。日本の116位を大きく引き離している。これには私も驚いた。
日本では先を行くヨーロッパの国々をお手本にすることが多いと思うが、南米エクアドルの状況を知る機会はあまりないのではないか?
エクアドル在住わずか2年ちょっとの私だが、日常生活で感じたり、インタビューしたことを元に、この国の「ジェンダーの平等」についてお伝えしたい!
現グアヤキル市長の壁画。来年の市長選に備え、候補者の壁画が街に現れ始めた
私がエクアドルのジェンダー平等に興味を持ったのは、姉御系のシンシア・ビテリ(Cynthia Viteri)グアヤキル市長をインスタグラムで発見した時だった。
芸能人のような華やかなルックス。体には数か所タトゥーをいれている。
最近はあまり見かけないけれど、私がグアヤキル市のインスタをフォローし始めた頃は、部下を引き連れてピックアップトラックの荷台に乗り、黒シャツとパイロットサングラス姿で市内を視察している姿が度々アップされていた。
彼女を知らない人が写真だけ見ると、「地元で人気の金持ちヤンキー」と勘違いするであろうワイルドな出で立ち。日本のスーツを着た真面目な外見の女性政治家とはタイプが違う。
弁護士、ジャーナリストという経歴を経て現職と聞いたが、タトゥーをした女性弁護士も政治家も日本にはいないと思う。
ちなみに、グアヤキル市のあるグアヤス県のスザーナ・ゴンザレス・ロサド(Susana González Rosado)知事も女性だ。国連のレポートによると、エクアドル議会の41%は女性議員で占められており、南米の中でも割合が高い。
地元の人は「エクアドルの政治は腐敗していて力がない」とか「選挙のたびに不正が取り沙汰される」など不満が多いようだが、経済都市であると同時に犯罪都市でもあるグアヤキル。
これを執筆している今も治安悪化のため、45日間の緊急事態宣言が出されているところだ。
そこで市長を務めるのは大変なことだし、そのグアヤキルを有する県知事も大きな責任を伴うと思う。
政治家は遠い存在かもしれないが、行動範囲の狭い私の生活の中でも数多くの働く女性と出会う機会がある。
身近な例を挙げると、家政婦、タクシー運転手、トレーナー、警備員、医者、弁護士、教師、美容室、警察官など男性と肩を並べて働く姿が日常的だ。
法律で男女の給料差をつけることは禁止されていて、医者や弁護士といった高収入の職種や、トラックのドライバーや精密機械のエンジニア、自動車修理工でも女性を見かけることが多くなった。
日中、街を歩けば、銀行やホテルのあるエリアではビジネスウーマンも見かける。さまざまなところで男性と肩を並べて働いている光景があたりまえにある。
また、エクアドルではお手伝いさんやベビーシッターを雇うことも一般的なので、働く女性が思い切り仕事に専念できる環境が整いやすいのかもしれない。
多忙な日本のワーキングウーマンにとっては、とても羨ましいことではないだろうか。
ただし、順調に見えるエクアドルのジェンダー平等だが、実は裏側に横たわる問題もある。
次回の【後編】では、スペイン語でマチスモ(Machismo)と呼ばれる男尊女卑の考えや貧困なども問題にも触れながら、エクアドルのジェンダー平等について深掘りしていきたい。次回もお楽しみに。
Written by マットン美貴子(エクアドル)