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大統領になった天才エンジニア、ユスフ・ハビビと愛妻の感動ストーリー

2022年12月5日
杏子スパルディ (インドネシア)

インドネシアのハビビ第三代大統領をご存知ですか?

インドネシアは、1945年に独立を果たした、まだまだ若い国です。大統領は、建国の父である初代のスカルノから、現職のジョコウィ大統領まで合計7人います。

インドネシアならではといって良いのか、初代から現職までそれぞれキャラクターが濃くユニークで、11月には私の運営するオンラインコミュニティ「メラプティ交流会」で、そんな大統領達のストーリーを、インドネシア人のメンバーにプレゼンをしてもらったほどです。

書店や文房具店に行くと、一番多く本が売られているのは、根強い人気の初代スカルノ大統領。本はもちろんですが、映画化もされています。

現大統領の名前は、ジョコ・ウィドドですが、国民からは親しみを込めて「ジョコウィ」と呼ばれています。

7人の歴代大統領たちの中で、初代スカルノを除き、ものすごい人気があり、その人生ストーリーが映画化された大統領がもう一人います。

第三代、ハビビ大統領がその人です。

このハビビ第三代大統領の人生の、何がそんなにインドネシア国民を魅了するのか、不思議に思いませんか?私も映画を観て、ノンフィクションの彼のストーリーに魅了されてしまったうちの一人です。

 

どんな人物だったのか?

書籍「ハビビとアイヌン」より

インドネシア共和国第三代大統領、B.J.ハビビは、初代と二代目の大統領とは全く異なる技術者出身であることが大きな特徴の一つです。

お父さんを子供の頃に亡くし、お母さんが女手一つで学費を工面した、というエピソードもしっかり映画の中で語られています。

国費留学というオプションもあったにも関わらず、お母さんの「お父さんへの約束」から、奨学金はもらわず、自費でドイツに留学しました。ドイツのエンジニアの学校に留学したハビビ大統領は、根っからの技術畑出身です。

飛行機の設計が夢であり、後にインドネシア初の国産飛行機の設計者として国に貢献します。二代目のスハルト大統領の時代にです。

映画の中でも、この飛行機設計の夢の部分は大きなテーマであり、パート1から描かれています。映画はなんと3部作、パート1からパート3まで製作・公開されました。

その映画のタイトルは、Habibie & Ainunです。Habibieはハビビ大統領のことですが、Ainunとは?

ハビビ大統領が今も国民に愛されている背景、そして映画化までされた理由は、このAinunさんにあります。最愛の奥様アヌヌさんのお名前です。

 

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学生時代から友人だったAinunと、ドイツ留学からインドネシアに戻ってきていた時に再会し、よく口喧嘩をする友人関係だった二人はお付き合いを始めました。

実はこのAinunは学生時代から優秀で、医学部に進み、医者になりました。その彼女がハビビ大統領に付いてドイツに渡り、彼のエンジニアとしての多忙の日々を専業主婦として、子供たちの母として支えます。

ハビビ大統領ご本人が執筆した本にも、金銭的にも苦しかったドイツ時代にどれだけ妻のAinunに多方面で支えられたか、ということがたくさん書いてあります。

ドイツで技術者としての仕事ぶりや結果が認められ、どんどん出世していき、最終的にはドイツ国内の大手企業や、あの有名なボーイング社での仕事の話もオファーされますが、ハビビ大統領は「インドネシア」という国に貢献することを信念としていて、結局インドネシアに帰国します。

余談ですが、この本の中に奥様のAinunの言葉があり、とても印象的だったのが、医学部に行き医者にまでなった自分の人生やキャリアについて考えていたことが書かれていたことです。

結局彼女は、医者としてのキャリアは中断し、夫を支えることに専念すると決めたのですが、時代は違えど同じ女性として、夫について外国に行き、家族やキャリアのことで悩み考えたというエピソードを読み、なんだか共感できました。

 

美しくて聡明な最愛の妻が病に

Author: Fiqhi Rizky

帰国後、技術者として認められ、スハルト大統領時代に大臣も務めています。そしてついにインドネシア初の国産飛行機の夢を実現させるのです。

その成果にも、人生全体にも、奥さんのAinunの支えがあったからこそだということは間違いありません。

医者としてのキャリアを中断したAinunも、帰国後精力的に医療関係のボランティアや財団など、活動の幅を広げ、多くの人を救いインスパイアしました。

そんな美しくて聡明な最愛の妻Ainunが病に冒されます。癌を患ったのです。治療・手術のため再びドイツに渡りますが、ハビビ大統領を残し他界してしまいます。

この最愛の奥さんの死にものすごいショックを受けて精神的に落ち込んでいた中、セラピーとして「書くこと」を進められ、涙を流しながらひたすら奥さんへの気持ちや思いでについて綴ったのです。そしてそれが書籍化され、映画にまでなりました。

留学中に一時帰国し、再会したその日を何十年も覚えていて、その記念日にはお墓参りに訪れたハビビ大統領。映画化の時も自ら主演の俳優さんたちと交流したりしていました。

そして映画のパート3で奥さん役を演じた女優さんとのツーショット写真も残っていますが、このパート3が公開された2019年に亡くなりました。最愛の奥様と並んで、英雄墓地に眠っています。

ドラマチックなこの実話をもとにしたストーリーに引き込まれてしまい、私の主宰するインドネシア語レッスンの題材として度々使わせてもらっています。

そしてある日日系の書店で偶然ハビビ大統領が執筆した本の日本語訳を見つけました。それも棚にたった一冊だけ残って置かれていました。「これは運命かも」と思い、もちろん購入しました。

この素敵なストーリーをたくさんの人に知ってもらいたいなと思い、今回このお話をコラムに書かせていただきました。

Written by 杏子スパルディ(インドネシア)

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