3月23日から始まったラマダン。現在は真っ最中で、4月21日まで続きます。
ラマダンとは、イスラム教信者の修行の一つで、日の出から日没まで、日の出ている間は一切の食べ物と飲み物を口にすることができません。
ムスリムにとっては断食を行うことにより、自分の欲望をコントロールすることが精神の鍛練になったり、貧しい人の環境を身に染みることができる貴重な期間とされています。
この約1カ月間、日中は一切食べ物や飲み物を口にしないムスリムですが、日の入り後にはいつもより盛大に食事をすることもしばしば。家族や友人と集まったり、会社のイベントとして、ホテルで豪華なビュッフェをいただくこともあります。
それにより、毎年ホテルは趣向を凝らしたラマダンビュッフェを開催します。ホテルレストランが1年のうち最も集客できる期間がこのラマダンなのです。
マレーシアのラマダンビュッフェでは、マレー料理を中心としたメニューラインナップを提供するホテルがほとんど。
断食後で血糖値が下がっているので、緩やかに血糖値を上げてくれる、お粥やデーツは必ずあります。お粥はビーフの出汁で味付けをしているものが多く見られます。
また、日本でお正月用の特別料理があるように、ラマダンならではのメニューが用意されます。
牛肉の角切りをココナツミルクでほろほろになるまで甘辛く煮た「ビーフレンダン」や、竹や編んだ笹に包んで蒸しあげられる餅米の「レマン」、網目状に焼いた黄色いクレープ生地にカレーをかけていただく「ロティジャラ」がラマダンならではの料理。
また、豪快なラムの丸焼きも、ほとんどのホテルでイチオシメニューとして提供されます。
いつでもビュッフェで大人気なのは、高額なメニューや普段食べられないメニュー。特に生牡蠣とドリアンが大人気です。
去年はコロナ後で数年ぶりにラマダンビュッフェが開催されたので、どのホテルも久々の集客に向けて、かなり力を入れていました。多くのホテルで、コストパフォーマンスも高いと感じました。そして実際、多くの方が訪れました。
そして、2023年。今年はどのホテルも価格を上げてきています。
数年前は大人のビュッフェ価格は2000円代が中心で、3000円を下回る価格設定が多かったのですが、今年は軒並み値上げ。4000円から6000円の価格設定をしているところが多いです。
去年はコロナによる補助金が配られていたので、一般家庭の方もどんどんビュッフェに押し寄せてきましたが、今年は補助金がないので、「一般人はホテルビュッフェを楽しめない!クレイジーな価格設定だ!」と言う方も見受けられます。
一般の方の月額給料は6万円から10万円が相場なので、家族みんなでホテルのラマダンビュッフェに行くのは辛いですよね。しかし相変わらずどのホテルも大盛況。お金があるところにはしっかりあります。
私は3月末の執筆時点で、プレビューも含めると、マレーシアの20ホテルのラマダンビュッフェに行きました。
これだけ多くのラマダンビュッフェを見ても、今年はコストパフォーマンスに見合わない値付けをしている場所が多いなという印象があります。
特に立地が良い、人々が多く集まる場所のホテルは、多少高くても多くの人が来るからでしょうか。強気です。
逆に、住宅が近くにあまりないリゾート地だと集客が大変なので、価格は高すぎず、クオリティが高いものを提供している印象を受けました。
例年、どのホテルでもマレーシア料理を中心に提供されていますが、今年は中東料理のグリルしたお肉を削って具にしたサンドウィッチ「シャワルマ(別名:ドネルケバブサンドウィッチ)」が多くのホテルで見られました。
お肉を削るパフォーマンスが目を引いて、人気のメニューの一つです。
お刺身やお寿司を提供するホテルも多く、すでに定番の人気メニュー。断食明けにすぐナマモノを大量にいただくのは危険なので要注意ですが。
1年で1ヶ月だけの特別なイベント、ラマダンビュッフェ。口コミなどを参考にしながらベストな場所を探すと、より満足感が高いと思います。
友人が運営しているホテルビュッフェのグループコミュニティは、口コミを求める人であっという間に14万人以上が入るコミュニティになりました。今は口コミの時代ですね。
この時期ならではの体験をぜひ。
Written by 土屋芳子(マレーシア)