パース市街地の街並み
今月は7月のコラム オーストラリア滞在記【前編】に続き、後編をお届けしたいと思います。
前回のコラムでは、18年ぶりに訪れたオーストラリアで、オーストラリア人達のコミュニケーション方法(英語の文章をきちんと話す。行間を読むのではなく、言葉を使って相手に自分の意思などをきちんと伝える)が私にとってはすごくカルチャーショックだったことについて書きましたが、他にも色々と衝撃を受けたことがありました。
皆さんがお住まいの国や地域では、信号のない横断歩道で人が待っていたら、車に乗っている人はどのような行動を取るでしょうか。
急いでいない限り「横断歩道で待っている人に先に道を渡ってもらう」と答える人が多いのではないでしょうか。
これがベトナムの場合だと、歩行者が車に対して道を譲らなければなりません。
なぜか「大きいものほど強い」理論で、「大型バス・トラック>自動車>バイク>歩行者」の順に立場が強く、自分よりも大きなものに対しては、道を譲ることになっています。
したがって、立場の一番弱い歩行者は、道を譲らなくてはならない場合が多くなります。
そして、クラクション。ベトナムで車やバイクがクラクションを鳴らす場合、それは相手に譲る合図というよりも、「今ここを私が通る」という自分の存在アピールのために鳴らしていることのほうが圧倒的に多いです。
そのため、特に混んでいる道などではとにかく誰もがクラクションを鳴らし、我先にと言わんばかりに突っ込んできます。
もうすぐベトナムに住み始めて4年が経とうとする私にとって、道の向こう側に渡るために車が行くのを待つことは当たり前になってしまっており、オーストラリアで車の方から何度も道を譲られた時には、驚きを隠せませんでした。
パース郊外の高級住宅街。湖畔には大きな邸宅が並びます
道端によくゴミが落ちていたり、なぜか汚れていることが多いベトナムとは反対に、パースでは道端にゴミなどがほぼ落ちておらず、街全体がとても綺麗だなと感じました。
他にも、トイレも公共のものであってもほとんどの場所が綺麗に保たれており、日本のトイレとあまり変わりないくらいの清潔度で、衛生面などにおいてもきちんと管理されているなと感じました。
そして、街がまったく騒がしくないことにもカルチャーショックを受けました。
ベトナムはとにかく街全体がガチャガチャしており、騒音も多くうるさいです。
この騒音に関しては、先にあげたクラクションの音もありますが、各々が外でマイクを持って大音量で自由に青空カラオケをしていることも一因のように思います。
この青空カラオケ、流す音楽が大音量なだけではなく、なぜかほとんどの人がと言っても過言ではないくらい音痴で、まるでジャイアンリサイタルのようです。
このジャイアンリサイタル、時にはたとえそれが住宅地だろうが深夜まで続きます。何ともいいご近所迷惑です。
ですが、オーストラリアではこれらの騒音を聴くことがなく、むしろアジアの喧噪に慣れてしまった私には「なんでこんなに静かなんだ?」と逆に落ち着かないくらいでした。
パース郊外の離島「ロットネスト島」に生息する、笑っているように見えることで有名な動物クウォッカ
普段生活しているとあまり感じないのですが、いったん外へ出てみると、ベトナムには良くも悪くも「カオス」という単語がよく当てはまると感じます。
今回オーストラリアで感じたカルチャーショックは、どちらが良い、悪いということではなく、アジアにはアジアの「当たり前」みたいなものがあります。
その一方で、アジアの外へ出てみると、そこにはまたアジアとは違う「当たり前」が存在していて、世界とはそれぞれ違った物差しを持った人や地域の集合体で成り立っている。
そのようなことを改めて感じさせられた旅となりました。
パースから少し足を伸ばして、フリーマントルという港町へ
Written by 平良弥生(ベトナム)