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中流家庭にとっては教育費が大きな負担に。インドネシアの教育の現状と問題点

2023年3月6日
杏子スパルディ (インドネシア)

公立校と私立校の差が明らかに大きい

今回のコラムでは、インドネシア在住で二人の小学生の子供がいる私が見た、インドネシアの教育の現状についてシェアしてみようと思います。

インドネシアの教育システムは日本のそれと同じで、小学校六年間、中学三年間、高校三年間です。義務教育は小学校~中学までの9年間ですが、都市部ではほとんどの子供が少なくとも高校までの教育課程を修了しています。

インドネシアでは、公立校と私立校のファシリティや授業時間の差は明らかに大きく、都市部ではいわゆる富裕層ではない中流階級の家でも、積極的に子供たちを幼稚園・小学校から私立校に通わせています。

インドネシアと比べて、日本は無料の範囲で受けられる範囲の教育のレベルやファシリティがとても高いと感じます。

地域差などもほぼなく、建物や備品など日本は公立校でもキレイですし、無料の公立校だからと言って、カリキュラムに違いはあっても、一日の授業時間などに大きな差はないと記憶しています。

インドネシアでは中流階級の家庭が子供を私立校に通わせることは、とても大きな出費となります。

2022年後半に発表されている最低賃金は、首都ジャカルタで490万ルピア(約4万円)、首都圏と言われるジャカルタ周辺地域でも2万円~3万円ほど。

私立校へ入学する際の入学金は、制服や本を含め約5~10万円(学校によってはより高額)、月々の授業料も平均して5000円~1万円くらいかかります。これに加えて、学年が上がる度に5万円ほどかかったりします。

前述の最低賃金と比べても、私立の場合の教育費はとても高額なもので、そのため共働きで子供を私立校に行かせている家庭が我が家の周りでもほとんどです。

 

塾や習い事、家庭教師をつける家庭も多い

また、学校での授業の他に、塾に子供を入れている教育熱心な家庭がほとんどです。

インドネシアには日本の公文式(KUMON)が進出しており、各地に支店があって人気です。英語専門の塾に行っている子供も多いです。

世界一のムスリム人口を抱えるインドネシアでは、学校のカリキュラムには宗教のクラスが必須科目です。特に私が住むジャワ島は人口の大部分がムスリムです。

数学や英語などの勉強以外に、イスラムのコーラン詠みやアラビア語の勉強のため、プライベートで先生をつけている家庭もとても多いです。

これは学校教育のためでもあり、「宗教=人生」というこちらの人々の価値観も大きく影響しています。

もちろんこれらの塾や宗教のためのクラスにも月謝がかかるわけで、先ほどの最低賃金と比較しても、一家庭が収入から子供の教育費の割合はとても大きいと感じます。

人口も子供の数も多いインドネシアですから、一家庭につき子供が2,3人以上いるのは普通です。そのことからもインドネシアの家計における教育費の割合の高さがお分かりいただけるかと思います。

 

インドネシアの教育の地域格差

一方、インドネシアの教育には問題もあります。

今回教育についてコラムを書くにあたり調べていたら、いろいろな文献を読む中で最も多くの記事に取り上げられていたのは「地域格差」です。

インドネシアは東西に長い形をした1万以上の島からなる島国です。この38の州からなる島国で教育の質が最も高いのは、最も大きく長いジャワ島と言われており、高校以上の大学などの教育を受けるためにジャワ島に来る学生も多いです。

逆に、最も教育の質が悪いと言われているのがパプア州です。授業などの内容という話の前に、「学校」という建物・設備に問題があるようです。テントが校舎という学校もあるとか…。

また、コロナ禍の約2年のうちほとんどがオンライン授業でしたが、パプアはじめインドネシアの地方部ではインターネットの普及やコネクションが悪く、このコロナ禍で更に教育の質に差が開いたと言われています。

地方で格差があるのは設備やインターネットだけでなく教師にまでも及ぶようで、優秀な教師はジャワ島に集中しており、地方には教師はいるものの、その質はあまり良くないと言われています。

例えば、インドネシアの西部に位置するヌサトゥンガラ島では、「教師」として働いている半数以上が高校卒業程度の教育課程しか修了してなく、これは法律で定められている教職者が受けるべき大卒の資格を満たしていません。

こうして書いてみると、日本の教育がいかに全国で平準化されているか、また無料で受けられる義務教育の質の高さが分かります。

インドネシアではもっとベースの部分で、まだまだ国や政府に、子供たちが平等で質の良い教育を受けられるよう頑張ってほしいなと思いました。

それと同時に、私自身が受けてきた教育、そして今我が家の子供たちに受けさせてあげられる「普通以上」の教育に感謝しなくてはと感じます。

Written by 杏子スパルディ(インドネシア)

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