Bonjour(ボンジュール). フランス在住・世界を飛ぶパラレルキャリア乗務員のYACHIです。これまで、私が30代に入って経験したフランス・パリでの就職について書いてきました。
日本と海外の働き方の違い、上司・同僚とのコミュニケ―チョンの取り方の違いなど、ネットなどで目に触れる機会があると思います。
私も聞いていて何となく分かったつもりになっていましたが、フランス人の上司、同僚と働きながら洗礼を受けることになりました。
まず、それぞれ職種・担当で仕事の内容、境界線がはっきりしているということを感じました。
日本では、自分の仕事が終わったら同僚の仕事を手伝いますし、自分だけ仕事が終わって先に帰るということは抵抗がありました。部署が違っても忙しい時やハプニングがあった時などは皆で助けあう、サポートし合う、そんな形で仕事をしていました。
今は日本も変わってきてるのかもしれませんが、私が20代の時に東京で日系の会社で勤務していた時に感じていたこと、小さい会社で働いていたというのも理由の一つかもしれません。
私がパリのホテルで採用された時、レセプショニスト(フロント)として契約をしました。
レセプションの仕事内容は、お客様のチェックイン、チェックアウト、会計業務、お部屋までご案内、クレーム対応、ベルボーイさんに荷物の引継ぎなど色々仕事内容があります。
ところが、レセプショニストですが、日本人ということで、日本人のお客様にはフロント業務以外のことも聞いたり、頼まれたりしてくることがあります。
「おススメのレストランを教えて下さい。」
「お店を予約したいのですが・・・」
「お財布を盗まれたのですが・・・」
通常、レストランやミュージカルの予約などはコンシェルジュの業務です。日本人のお客様の対応に時間を取られ過ぎると、その間にフロントに凄い列ができ、上司から怒られるわけです。
もちろん日本人ということで採用された部分もありますが、他のお客様の対応もあります。
「予約などはコンシェルジュに行くように言いなさい」そう言われても、「言葉の問題があるから私にお願いされているのに」と思うこともしばしばです。
忙しくない時間帯だと対応できますが、朝のチェックアウト、午後のチェックインの時間にはフロント前には列ができています。
500部屋ほどもある五つ星ホテル。毎日、200~300のチェックイン、チェックアウト業務がある日もあります。イベントなどがあるとグループの対応もあります。
また、中東のお金持ちの一行様が全フロア貸し切りで滞在という時は、ホテルの金庫に沢山のお金を預けるためにフロントから別のカウンターでの業務も増えます。トイレ休憩に行く暇もないくらい忙しい時もあるわけです。
そんな時に日本人のお客様限定で、日本の「おもてなし」のサービスを提供するのは正直難しいです。
自分のフロントの仕事を優先しなければいけませんし、上司が私に求めることと、お客様が私に求めることとの狭間に悩むこともありました。
お客様に伝えるメッセージもイタリア語、スペイン語など他のアルファベット言語だと、システム内のメッセージシステムを使用することができます。
ですが、日本語だとお伝えしたいことは、手書きでお客さまにお手紙を書くことになります。お部屋のドアの下にお手紙をそっといれておくわけです。お客様にメッセージを伝えるという、ちょっとした仕事に時間がかかります。
また、お客様が英語やフランス語ができないと分かっていると、「お客様にコンセェルジュで直接頼んで下さい」と言うこともできず、一旦こちらでメモをしておいて仕事が一段落してから私がやって差し上げました。
そうするとどうしても仕事がシフト内に終わらず、残業をしなければいけません。フロントに立っていれば、次々とお客様がいらして仕事を頼まれます。
上司は残業時間が増えないように管理をしています。会社にとっては残業代はなるべく支払いたくないのは当たり前です。「YACHI、まだ仕事してるの?早く帰りなさい!」といつも急かされていました。
日本では丁寧にする仕事も、同じような感覚で仕事をしていては、仕事ができない人になってしまいます。その感覚になかなか慣れずに困惑しながら仕事をしていました。
シフトが終わる頃に、日本人のお客様がフロントに来られて頼みごとをされると、他の人に対応をお願いするわけにもいかず、時間が終わっても対応したい。上司に怒られないよう(笑)
オフィシャルにはシフト時間をチェックアウト、終わったことにしてサービス残業で仕事をしていることもありました。
「海外旅行中に言葉が分からなくて困っているお客様のお手伝いをしたい」その一心で仕事をしていたというのが正直な気持ちです。お客様のためでもありますが、と同時に自分の価値を肯定する感覚もあったかもしれません。
私はなかなか日本人の感覚が抜けず、日本の仕事のやり方を引きずって仕事をしていました。30代で渡仏したということも、働き方の違いに慣れるのに時間がかかった理由かもしれません。
それでも段々慣れてくると、お客さまのことも気になりながらも割りきることを覚えていきました。
仕事とプライベートの線引きを意識すること、休憩時間はちゃんと休むことだったり、サービス残業をしない、お客様も大切にしながらもフランス式に働くことも覚えていくことになりました。
海外で仕事をする時には、国や業界などにより働き方、進め方の違いなどを受け入れること、また、日本と比べないことを頭にいれておくことをお薦めします。
「郷に入っては郷に従え」と割り切っていくことも大切だと学びました。そして、何よりワークライフバランスを意識する、大切にすることを学びました。
その後の子育てしながらキャリアを続ける上で、またフランスで働き続けるためには、この洗礼を受けることがマストであったと振り返って思います。
Written by YACHI(フランス)