2023年5月6日、イギリスらしい雨の中、イギリスの新国王チャールズ3世の戴冠式がロンドンのウェストミンスター寺院で執り行われました。
世界中で生中継された式典の様子を、テレビで見た人も多いのではないでしょうか。
昨年エリザベス女王が亡くなり、国王に即位したチャールズ3世。
イギリス史上最も長い70年間の皇太子時代を過ごし、イギリス史上最年長の君主になりました。現在、御年74歳の王様です。
イギリス在住歴が15年にもなるとはいえ、この国にアイデンティティとかいう類の感情を持たない私ですが、イギリス史上に残る歴史的瞬間と煌びやかな式典をライブで見るのは、とてもワクワクする経験でした。
しかし、大変おめでたいはずのこのお祝い、なんとなく盛り上がりに欠けていたような……。
オックスフォードのクライスト・チャーチカレッジのギフトコーナーで見つけた記念品
絶大な人気を誇ったエリザベス女王に比べると、どうも支持率がふるわないチャールズ新国王。実際に今回の戴冠式は準備期間からあまり盛り上がっていない印象でした。
ハイストリートの街灯にはユニオンジャック(イギリス国旗)が掲げられ、日本でも人気の老舗紅茶店Fortnam & Maisonや、陶器ブランドのEmma Bridgewaterなどでも戴冠式の記念品が販売されているものの、街のお祝いムードはどことなく控えめ。
昨年のエリザベス女王の即位70周年を祝うプラチナム・ジュビリーの時の方が、よほど盛り上がっていた記憶があります。
英世論調査会社YouGovのアンケートによると、国民の約25%が「伝統的な王政を支持せず、選挙で国家元首を選ぶべきだ」と回答しているイギリス。
近年の王室スキャンダルの影響も受け、特に若者の王室離れが顕著なようです。
今回の戴冠式では、新国王の門出を祝うたくさんの国民がバッキンガム宮殿周辺に集まりましたが、「Not My King」と君主制廃止を訴える集団が式典中に逮捕される不穏な場面も見られました。
国歌は「God Save The Queen」から「God Save The King」に変更
バッキンガム宮殿側もそんな時代の流れを感じ取っているのでしょう。
戴冠式は国家元首の威厳を示す儀式でもありますが、今回の式典は、国民感情や時代の変化に配慮して、前回のエリザベス女王の時よりもかなり規模が縮小されました。
また、キリスト教色の強い式典にも関わらず、他宗教の指導者を招いたり女性聖職者が出席したりと、多様性を前面に出した式でもありました。
イギリス史上初のインド系首相となったスナク首相が、式典中に聖書の一節を読む場面も印象的でした。スナク首相はヒンドゥー教徒です。
賛否両論はありますが、イギリスの伝統は守りつつも、時代の流れを考慮した、革新的な式典だったのではないかと思います。
今でも故エリザベス女王の面影があちこちに残るイギリスですが、今後徐々に新国王のイメージが定着していくことでしょう。来年からは、紙幣も国王の肖像をあしらったものが流通しだすそうです。
イギリスは「女帝の時代に国が栄える」と言われるものの、今後3世代は男性君主が続く予定です。
皇太子時代は、環境問題やチャリティ活動に積極的だった新国王。中立の立場を求められる国王になったことで、活動が制限される可能性はあるものの、国民にとって希望が持てるような新時代を築いてくれることを期待しています。
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Written by ハリガン敬子(イギリス)