昨今、日本国内でも様々な商品の値上げが家計を打撃しているというニュースを見聞きします。
値上げの対象となっている商品の一つが牛乳だといいますが、その値段を聞いて驚いてしまいます。「まだ安いではないか!」と。
世間を騒がすような値上げがどれくらいかと思い、日本在住の友人に聞いたり、インターネットの情報を元に調べてみると、1リットル入りの一般的な牛乳パック一本が、値上げ後で250円前後とのこと。
当地インドネシアでは、900ミリリットル入りの牛乳パックが一般的で、そのお値段は安いもので250円ほど。高いものでは400~500円ほどするものも普通にあります。
最近では物価が安定してきて200円台のものが多くなりましたが、一時期戦争などの世界情勢によるさまざまな商品の値上げがあった時期は、牛乳も最安値でも300円ほどでした。
一見日本とあまり変わらないように見えるかもしれませんが、インドネシアの2022年度の平均月収307万ルピア(日本円で約29,000円)を考慮すると、牛乳がいかに高いかということがお分かりいただけると思います。
写真上:UHT処理されたパック入りミルク、おしゃれなフレーバーがそろう。写真下:Teen用
インドネシアをはじめ、東南アジアの国々では共通して乳製品が高価です。なぜ牛乳(フレッシュミルク)が高いのか、その理由は乳牛の体質に理由があるようです。
大きな理由として考えられることは、乳牛は暑さに弱い動物だということ。暑さによるストレスで餌を食べる量が減ったり、乳量も減り、生殖機能の低下まで影響があるそうです。(参照:乳牛を暑熱ストレスから守るには )
乳牛の飼育に適した気温は、最高でも24-25度ほどということなので、常夏で気温が高いインドネシアでは、乳牛は貴重なのです。
では、フレッシュミルクの代わりとなる商品はどんなものがあるのかというと、一つはUHT (Ultra high temperature processing) ミルクです。
高熱で殺菌処理をしてパックに詰めた牛乳で、腐りにくく、日持ちもします。
インドネシア国内では多くのカフェやドリンクスタンドで、フレッシュミルクの代わりにこのUHTミルクが使われています。そんなUHTミルクでも、1リットル入りのパックが200円ほどします。
そんな「高級牛乳」ばかりの中、庶民の救世主的なカルシウム源となる人気商品が粉ミルクなのです!
日本では粉ミルクというと赤ちゃんが飲むものというイメージだと思いますが、ここインドネシアでは違います。
幼児用、小学生用、中学生~高校生のティーン用、大人用、そしてシニア用まで、数多くの種類が製造・販売されています。
幼児期からミルクへの関心は高く、これまでも幼稚園や学校でママたちの会話で「どのブランドのミルクを飲んでいるか」は定番の話題の一つでした。
テレビコマーシャルでも、子供の成長のため、脳の働きを活発にするため、など様々なキャッチフレーズをつけて、各ブランドがミルクの宣伝をしています。
子供が小さい頃にありがちな「ごはんをあまり食べてくれない」という時も、「ミルクで栄養を補えば大丈夫」という親の安心感を支える保険的役割もミルクがしていると思います。
粉ミルクは、インドネシアの人々の「健康への意識」の表れであると言えるでしょう。
個人的に心配なのは、それらの粉ミルクに含まれる糖分です。ノンシュガーのものがないのです。
ここ数年のインドネシアを見ていると、健康への意識も年々高まっているので、「栄養を摂る」だけが目的のミルクから、近い将来には糖分を控えたものなど、さらにアップデートされた商品が開発されるのではと思います。
Written by 杏子スパルディ(インドネシア)